2003優秀賞
ARTIST STATEMENT
Untitle
曖昧さのもつある種の強さ、を表現したいと常々考えています。社会的なルールから微かにはずれ、物質そのものの存在感がふと立ち現れる瞬間。そこに生まれる距離感や空気感は見る側と被写体との関係を曖昧にし、意味の世界とカタチの世界との狭間で永遠の往復運動を繰り返す。被写体のイメージは、その曖昧さゆえに何処にもカテゴライズされず、また何かを主張することもせず、ただそこに在り続けます。そんな存在に私は強く惹かれるのです。
既製のカツラを用いたり、デジタル処理を施すことにより写真の持つ重力を曖昧にし見る側と被写体の曖昧な距離感を作るようにしました。また構図にはかなり気を遣いました。モデルが少しでも動いてしまうと微妙なバランスで保たれている狭間の空間がどちらかに転んでしまい、曖昧な距離感が保てなくなるからです。カメラの前で動くなと言われ続けたモデルの人達はかなり大変だったと思います。
審査評 選:飯沢 耕太郎
二人の女性の後ろ姿、一人は長い髪、一人は短髪。一人はミッキーマウスのかぶりもの、一人は襟元から黒いラベルをはみ出させている。意味はわからない。わからないけれども彼が意図している「曖昧かつ確固とした存在」は確かにそこに現れているように感じる。このシリーズはもう少したくさんの数で見てみたい。だが、二枚でも形としては完結した印象を受ける。次の展開が楽しみだ。
PROFILE
ヤマダ シュウヘイShuhei Yamada
1974年 | 滋賀県生まれ。 |
1997年 | 京都産業大学経済学部卒業。 |
1998年 | 大阪国際写真センター研究生。 |
2000年 | 多摩美術大学造形表現学部 映像演劇学科中退。 |
現在、フリーランスで活動。(2003年当時) |