2004優秀賞
ARTIST STATEMENT
チョコレート・ドリームス
コントロールできる部分とできない部分とが混ざり合ってできている。互いの境界はどろどろに溶解し、判別することはできない。チョコレート・ドリームス。今、ここ、私の生きている世界。私はこの世界をリアルに表現するためにチョコレートを使う。まず、物体を選びその上から大胆に慎重に、乱暴にそして丁寧にチョコレートをかける。チョコレートが無くなったら、また溶かし、時々、ジャクソン・ポロックを想像しながらチョコレートをかける。世界はどろどろに溶解したチョコレートに覆われることで本当の姿を現す。私はこの作品をチョコレート表現主義絵画と呼んでいる。
自分の作品を自分で解読する作業は難しい。ただ、確かなことは、ここにあるのはチョコレートであるということ。そしてそれが私が見た、身体で感じたこの世界の姿を表現しているということ。そのためにはどうしてもチョコレートが必要なのだ。甘く、ほろ苦く、口の中で溶けて消えてゆくこと。どこか華やかな気分があること。溶けたり、固まったり、温度によってその性質を変えること。耐久性に乏しく、時間の経過と共に朽ち果てることなど。チョコレートが持っているすべての性質やイメージが重要なのだ。この作品はこの世界の中で、私自身の現在位置を確認するための地図のようなものではないかと考えている。
審査評 選:南條 史生
インパクトがある。チョコレートというファンシーな素材が、汚らしい泥だらけの状況にも見える。コンセプトが明快。大きさもコンセプトの一部。小さかったら受賞していなかっただろう。ディテールが大きくなって、意味が拡大する。戦争の道具が主題となっている点もいい。皮肉が感じられるし、こういう作品でもジャーナリスティックでありうるという証明だ。背景の色と潔さも正しい。うすきみ悪くてファンシーという威厳も時代とあっている。質が高い。充分アート。
PROFILE
おおば英ゆきHideyuki Oba
1961年 北海道生まれ。 | |
1985年 | 千葉大学工学部画像工学科卒業、株式会社電通入社。 |
2004年 | 京都造形芸術大学通信教育部情報デザイン卒業、現在電通勤務。 |
個展&グループ展
「チョコレート・ドリームス」(2004年、プリンツ 2Fギャラリー、京都) |
「京都造形芸術大学卒業制作展」(2004年、D's gallery、京都) |
「混沌から躍り出る星たち 2004」(2004年、スパイラルガーデン、東京)(2004年3月当時) |