2004準グランプリ
ARTIST STATEMENT
1.1
複数化された「わたし」が主題となる。
主な被写体は子供、女性(妹)である。様々な風景の中で、彼女たちが写し出されている。
加えて、撮影者である私を含んだ関係性が存在している。写っているのは二人だが、存在しているのは撮影者である私を含む三人である。撮る側、撮られる側の境界が曖昧となり、気づけば撮影者である私も画面の中に取り込まれている。さらにもう一人の「わたし」がその様子を眺めている。
最小単位の「個」を掘ることに始まり、「家」という小さな社会を介し、その「外側」の世界に意識を向けた三部作品に展開。その一作目にあたるのが本作《1.1》である。
※『1.1シリーズ』-《1.1》(2004)/《③》(2005)/ untitled (2010)
審査評 選:ケビン・ウエステンバーグ
今回の公募の中で一番好きな作品です。縦横のライン、人物等の配置、構図は、非常によく考えられている。普段私が撮っている写真とは違って非常にコンセプチュアルでそれが非常によく表現されている。写真家の意志の下に作品が構成され完成度が高く、見る側の興味としてそそられるものがある。
審査評 選:やなぎ みわ
プレゼンテーションにパネルとブックの両方があるというのはとてもいいですね。テーマがはっきりしていて、力強い。テーマをぼかしぎみで自分の欲求をクリアーに見せない作品が多い中で、とても明快で目を引きました。内省的なテーマなのに主観に溺れてないのは作者が考え抜いた結果だと思います。
PROFILE
椎名 素代Motoyo Shiina
東京藝術大学大学院美術研究科グローバルアートプラクティス(GAP)専攻 修了
大阪芸術大学芸術学部写真学科 卒業
日常で生じた体験をもとに、写真、ドローイング、映像、パフォーマンスなどを用いて制作。「仮設」「即興」 をキーワードに、近年ではマスキングテープや養生資材を使用したインスタレーションを行う。光と影、平面と立体の狭間、ドローイングによる身体性に関心を持つ。
大学卒業後10年程の社会人経験を経てNYに留学。その後、写真以外の形式を模索し大学院入学し、表現の幅を広げ、現在に至る。
個展「SkatingLines」(soco1010/2021)、「青と白」(藝大食堂 SHOWCASE/2021)、グループ展「金継ぎmoment」(旧平櫛田中邸/2020)、ワークショップ『JohnCage Musicircus』(CND Paris/2019)、「green planet」(取手アートパス/2019)、「意識の区間」(代々木アートギャラリー/2017) 、「写真新世紀展」 (東京都写真美術館/2004,2005)