2005優秀賞
ARTIST STATEMENT
TSURU
祖母、ツルの人生は波瀾万丈でした。
自由奔放な性格のツルは少し変わっていたと思います。
そんなツルを、私は大好きでした。
ある日、ツルにカメラを向けると、ファインダーに映し出された満面の笑みが、まるで何かに取り憑かれているような圧倒的な迫力であることに驚きました。
それから私はツルといろんな場所へ出かけました。
とにかくただツルを撮りたかったのです。ツルも撮られることに楽しさを感じているようで、お互いすごく楽しくて、とても夢中でした。
ツルは、ただ素直に美しく生きている。
写真を撮ることによって、ツルの事がわかったような気がします。
応募作品形態:写真集 A3サイズ 43点
審査評 選:蜷川 実花
コンセプチュアルな作品もいいけれど、目で見て楽しい作品がステキですね。この写真は、おばあちゃんの女性としての生き様、人間としての風格がとってもチャーミングに表現されていてストレートに訴えかけてくるものがあります。
写真家としての力量がないとこのおばあちゃんに対峙できないんじゃないかなぁ。あなたの私生活を見せられてもこちらは困ってしまいます、というような応募作品が多い中、被写体の私生活をもっと見てみたい、女性としてこんな風に生きられたらいいなぁという、そういう気分にさせる写真であると私は思います。
PROFILE
新垣 尚香Shoka Arakaki
1983年沖縄県那覇市生まれ。幼い頃から絵を描くのが好きで、描きたいものを絵ではなく写真で表現することに興味を持ち始める。高校では染色や織物などの伝統工芸を学んでいたが、写真好きだった祖父の影響もあり、上京し、写真を本格的に学ぶ。2005年に祖母ツルを撮影した写真シリーズがキヤノン写真新世紀優秀賞を受賞したことをきっかけに、魅力的な時空間を求めて東北や北海道などを巡る一方、故郷である沖縄の魅力を再認識し、沖縄の写真も撮り続ける。2012年から3年間、世界のアートシーンに興味を持ち、ニューヨークに単身渡米。帰国後、東京と沖縄を行き来し、現在は生まれ育った沖縄(恩納村)を拠点とし創作活動を続ける。