2005優秀賞
ARTIST STATEMENT
to the past
僕にとって写真は生きてきた証です。写真がなければほとんどのことは忘れられる。それが楽しい思い出、悲しい思い出であろうと……。残酷なことかもしれないけど、写真を撮る以上、覚悟しなければならない。写真本来の“記録”するという行為が僕にとっは何事にも変えられない幸せであると同時に生きていく上で重要なのです。
今回の作品は僕が高校生の時から2005年4月までに撮った半生の記録です。フィルムで撮ったものはスキャニングしてパソコンで写真に蘇らせる。写真をデーター化し、パソコンという脳細胞がデーターを写真に戻す。記憶の糸をたどって行けば、脳がその時の映像を蘇らせるのに似ている。“デジタル”こそが僕が求めている記録という行為により近い感じがする。デジタルが持つリアリティーさや、スピーディさが適している。できるだけ多くの僕の記録を残したい。アナログでは追いつかない。時間がない。人生はそう長いものではないかも知れない。
応募作品形態:インクジェトプリント(B4サイズ)1,064枚組写真
審査評 選:森山 大道
写真は質よりも量であるというような言い方を常にしていますが、しかし量があればいいのかということを今回は考えながら選考しました。しかし量が撮れるというのはそれだけ欲望が深いということで、欲望と質というのは比例する。この作者の作品には、モノクロもカラーもあって、1点1点がちゃんと自分の生理というか体質みたいなものを撮っている。だからこの量は、単に量というわけではなく量を支えて、その人の気持ち、見方、そういう生理的なものを含めたモノが入っている。 ちっともセンチメンタルにならないし、情緒的にもなっていない。なんでも撮ってやるという欲の深さが全体の力になっている。ただ1つ残念なのが、量にこだわっているだけじゃなく色へのこだわりも欲しい。ひとまずこの量には敬意を表しましょう。
PROFILE
梶岡 禄仙Yoshihisa Kajioka
1964年 | 奈良県生まれ。 |
2003年 | 第4回新風舎 平間至賞(優秀賞受賞)写真集『デジタリアン』出版。 |
2004年 | エプソンカラーイメージングコンテスト 佐内正史賞受賞。 |
2004年度(第27回公募)写真新世紀 佳作受賞。現在、フリーランス・フォトグラファーとして活動中。 |