2006優秀賞
ARTIST STATEMENT
On her skin
人は森羅万象と共にあり、生かされている。本来備わっているはずの謙虚な感覚、しかし、街中を蹴散らす騒音や覆うようにそびえるコンクリートが、私たちを容易に愚鈍化してゆきます。
「On her skin」の「her」は地球を意味します。空中に浮かぶように見える人影は合成ではありません。そこに自らを投影させ、立ち止まり「彼女」の呼吸に耳を傾けてもらえたら。あまりにも忙しなく、けたたましく動き回りながら「彼女」を独占する私たちが、今あえて静寂を経験すること。もう一度「彼女」の上に佇むこと。「彼女」に問いかけてみること。
この作品に現存する、しかし、非現実的な空間は、私にとって写真の可能性とは平面上に表現された無限の奥行きと、被写体から放出される、もしくは内在する「気」や「エネルギー」のようなモノが、撮影者である私を通過して印画紙の上に宿る、その期待とも重なるのです。
写真新世紀の受賞は、一枚のチケットをいただいたという感じです。さしずめ今は、チェックインカウンターに向かっているところでしょうか。私は求めるテーマが大き過ぎてまとまらず、長いこと表現スタイルやコンセプトの試行錯誤を繰り返しました。自分の伝えたいことが明確になった作品で、選出して頂けたことを大変嬉しく思っています。
このOne way ticket を手に、新たな作品を生みだし続けていこうと思います。
応募作品形態:カラーネガプリント・半切 10枚1組
審査評 選:南條 史生
なにしろ不思議な写真で、現実の世界をあっさり超えてしまったような表現になっています。蜃気楼でも撮影したのかと思えば、ボリビアにある湖の水面に写った人と空を撮っているんですね。雲を撮った写真というのも多いけれど、これは他とは違う。雲のなかに人が浮かんでいるといった絵柄は、あまり見たことがありません。色合いも薄い調子で出していて、非日常性をうまく作り出しています。この空気感は、作者独自のものがあります。
欲をいえば、もうちょっと大きなプリントでも良いんじゃないですか。今の2、3倍あるといいですよ。それから、マウントはもう少しうまくやれたらよかった。画面が波打ってしまっています。こういう繊細な写真の場合は、雑な処理だとより目立ってしまう。たとえばアルミに貼ってみるなど、平滑性を出す工夫をするべきでしょう。
PROFILE
清水 朝子Asako Shimizu
1969年 東京生まれ。 | |
1992年 | 日本大学芸術学部写真学科卒業。 |
2002年 | ギャラリー保加梨(北青山)にて初個展「忘却曲線」。 |
2004年 | アートスペースMOTER(八丁堀)にて個展「夢の中の体温」。 |
2005年 | 「東京コンペ」入選 「東ノフクロウ」。 |