2006優秀賞
ARTIST STATEMENT
TWO SIGHTS PAST
(喜多村 みか)
初めて彼女の写真を撮ったのは憧れや嫉妬からだったように思う。
まだ仲良くなかったとき、ほとんど盗撮のようにして彼女を撮ったのを思い出す。そこに愛情とか所有欲が混じり出したのは、偶然にも彼女との距離が縮まってからだ。
4年という長いようでいて短い時間の中、私たちは少なからず変わり、お互いの写真の接し方も変わり続けている。
例えば私が絵を描いていたとしても彼女を描かなかっただろうし、彫刻家だったとしても彼女の像は彫らなかった。常にある一定の距離から彼女を眺めることで、ひとりの人の写真を撮り続けることのできる喜びと困難を教えてくれる。それは写真だから感じることだと今は思う。
これからも私は愛情を持って嫉妬し、優越感と劣等感と愛しさの混ざった眼差しを向けながら、その風景を残そうとする。そうして一枚の写真になる。
それでいいのだと思った。
(渡邊 有紀)
彼女とまともに話すようになったのは20歳の時で、いつのまにか4年の月日が経っていた。共に過ごす時間がふえ、かけがえのない存在になる一方でそれとは相反するような感情を抱えながら撮り続けてきたように思う。今も尚、その感情がかたちを変えて見え隠れする。そしてその温度差を覆い隠すのも、今こうして目の前にいる彼女の存在だった。続けることで見えることがあると、今はそう信じている。
月日はあたりまえに環境や関係、感情を変えていく。
一人の人と向き合うことの尊さと難しさ、出会えたことの喜び。
これからもその時間をかたちに変えていければと思う。
そう思わせてくれた彼女に、ありがとうを言いたい。
応募作品形態:ブック形式(リング製本) インクジェットプリント(カラー・モノクロ)・77点(表紙別)
審査評 選:飯沢 耕太郎
女性が二人で組んで作り上げた作品。お互いを撮り合っていて、ページをめくっていくごとに、二人が少しずつ成長していくのが分かる。時間の経過というものを、見事に表現していると思います。
同じパターンの作品としては、デイヴィッド・アームストロングとナン・ゴールディンの撮っているものがあって、特別に目新しいというわけではありません。でも、どの写真も見ていて気持ちが良いです。二人の関係は、どこか姉妹のようなところがあって、たくさんのものを共有している感じが伝わってきます。写真のレベルも同じくらいで、ちょうどバランスがとれていますね。
二人とも若いし、お互いを撮り合ってきた期間もまだまだ短いようです。これをあと20年くらい続けてみたら、とてつもなく凄みのある作品になると思います。
PROFILE
喜多村 みか+渡邊 有紀Mika Kitamura + Yuki Watanabe
喜多村 みか
1982年 福岡県生まれ。 | |
2004年 | 東京工芸大学芸術学部写真学科卒業。 |
2005年 | 個展「Einmal ist Keinmal」(新宿・大阪ニコンサロン)。 |
2006年 | 東京工芸大学院芸術学研究科メディアアート専攻写真領域入学。 |
渡邊 有紀
1982年 岡山県生まれ。 | |
2004年 | 東京工芸大学芸術学部写真学科卒業。 |