2007準グランプリ
ARTIST STATEMENT
まばたき
かつて見た景色は、すでにもう記憶になく、静かな枠の中に消えていく
まばたきしてきたさまざまな景色もない
流しみている全てが、時間の流れを表している
一本の線が、続いているのか
あの時から、まばたいている景色は変わっていない
旅でもなく、夢でもなく、変わらず
まばたきをする
時には、閉じたままのこともあるが
その時に、ふと瞼の裏に景色が蘇る
そして 流れていく景色を前にまばたきをする
応募作品形態:ブック立体物(蛇腹式折本、六切変形)モノクロ55点(表紙別) バライタ紙
審査評 選:森山 大道
妙に気がかりになった作品でした。ほんの一瞬、目の端をちらとかすめたような、残像に近いような感覚の写真ですけれど、これがなぜかこちらの気持ちにしっかりと残るんです。
それぞれの写真は、シチュエーションとして特につながりもないのに、なんだか同じ乗り物からずっと外界を見ているような感覚になってきます。一瞬が積み重なっていって、残像としてつながっていく。写真が本質的に持っている力みたいなものも、強く感じさせますね。
このブックの形式による効果も大きいでしょう。小さいプリントをまったく同質に並べていて、写っている世界だけが変化していくという面白さがある。大きくプリントしていたら、こうはならなかったかもしれない。ひそやかでささやかな作りだけれど、実はそうじゃない。記憶というものを見る側に喚起させるところもあって、圧倒的に心に残りました。
PROFILE
詫間 のり子Noriko Takuma
1985年大阪府生まれ。京都造形芸術大学大学院卒業。2007年キヤノン写真新世紀 準グランプリ、2011年ラ・プリマヴェーラ賞受賞。主な個展・展覧会グループ展に、「キヤノン写真新世紀 2007」東京都写真美術館、東京、2008-2009 巡回展/「THE EXPOSED #3,5 - #4 - #5」湾岸通りギャラリーCASO、大阪/「愛についての100の物語」金沢21世紀美術館,金沢/「SEOUL PHOTO」COEX,韓国/「cheap chic」florist gallery N,愛知/「MITAMAMA派」the bloom gallery,大阪/東川町アーティストインレジデンス作品展/赤煉瓦倉庫、北海道東川/対馬アートファンタジア、福岡対馬など。