2008優秀賞
ARTIST STATEMENT
Gift
写真を撮ることと、私と外の世界との関係についてずっと考えていた。何ら自分との繋がりもなけば、その経過すら知らない外の世界。よそ者である私がその写真を撮ったところで、視点の定まらないただの写真群にしかならず、愛着も湧かず、私はそこに価値を見出せずにいた。それは私が目的を持てず、そこに何も求めていないからなのかもしれない。そう思ってから、今回の作品にたどり着いたように思う。自分の考えていることをもっと表現できるようになりたい。その最初の試みである。
自分についての作品、自分の世界観や内面を表現する作品は山ほど作られてきたと思う。でも自分自身や自分の考えもよくわからずに、外の世界とは繋がれない。だから、まず日頃考えていることを表現しようと思った。
私は無意識を不思議に感じている。
なぜ選び抜かれたのかわからない幼い頃の断片的な記憶。鮮明におぼえている脈絡のない夢。
私すら知らないかもしれない私のこと。
いつの頃からかたぶん自分がそうだと感じていること。
その無意識を意識してみようと思った。それを画面構成や、軽やかさ、子供がいたずらするような感覚を大切にし、具現化していくことで出来上がったイメージが今回の作品である。
応募作品形態:インクジェットプリント 額装 14点
審査評 選:荒木 経惟
彼女の作品は、ちょっとエスプリというか、従来の写真にはないユーモアがあるでしょ。笑い、とまではいかないけれど。そうだな……江戸時代の言葉で「をかし」ってあるでしょ。いとをかしという感じかな。おもしろいじゃない、足だけ写っている写真とか。できたら、靴下に穴が開いていたり、足が虫に食われていたりするといいな。丸い写真があるでしょ。そういう見せ方は、絶対ないの。それを、ちょっと思いついてやった、みたいないい加減な感じがいいね。ただ、エロティックじゃない。本当はもっとエロティックじゃないといけない。この人は、未熟だけど、その未熟なところに可能性を感じる。もしかするとズドーンと伸びるかもしれないね。
PROFILE
保谷 綾乃Ayano Hoya
1985年4月19日 | 東京都生まれ |
2008年3月 | 武蔵野美術大学造形学部映像学科卒業 |