安森 信

女性讃歌

この作品に登場するのは60歳以上の働く女性達。
制作のキッカケは、パートとして昨年まで働いていた自分の母親が離職した時に抱いた「働く姿を撮っておけばよかった…」という後悔の念からです。それまでずっと作品のコンセプトを考えていた僕は、この時、母親と同じ60代以上でハツラツと働く女性達が身近なところにいるのに気づき、撮影を開始しました。
出会ったのは、僕の持っていた「60歳＝定年退職＝現役引退」という概念を打ち破るバイタリティーあふれる面々。勤続年数は、ほとんどが数十年以上。理由を聞くと、「生活のためよ」なんて言われました。しかし、彼女達は仕事を楽しんでいます。それがしっかりと伝わってきました。
母であり、職業人であり、そして、何よりも女性である。その“生きざま”が刻まれた表情に、一心にカメラを向けました。

応募作品形態：プリント／全紙／30点／カラー印画紙　ブック／A4／30ページ

審査評　選：荒木 経惟

いいじゃない、これ。頑張ってるよ。幸せなことを撮るとか、撮ることで幸せにするとか、そういう気持ちがあるでしょ。人生の楽しい時とか、いい時を撮るというのがいい。生に光をあててるでしょ、これは写真の基本なんだよ。この作品、写真としてはなんでもないんだ。うまくもない。だけど、写真を感じさせないというか、アートっぽく作ったり、表現しようとしたりしていないのがいい。被写体が表現しているのを素直に複写している。撮る人が被写体に嫌われてないでしょ。その関係がいいよね。