2011グランプリ
ARTIST STATEMENT
風を食べる
私には辿り着きたい心がある。頭の中のイメージそのままを信じることはないし、必ず疑う心が離れない。
繰り返しの作業で知ったこと。そうあるべきだと思うこと。
イメージの向こう側を想像する、ただの予感でしか無いけれどそれを気持ちよいと感じるか。
それとも心に何か 引っかかったり、不安に感じるのかどうか。私はいつもそこに敏感でありたい。
清々しい気持ちで、いいな、やってみよう、と思えたら、その時は頭の中で想像す ることなんかよりずっと楽しいこと、興奮することが待ってる。
辿り着きたい心は いつもそこにある。
私は目には見えない、手では掴めないような事を、食べて、写真に戻して、その繰 り返しの中で自分自身の事や周りの世界の事を少しずつ理解しようとしている。
何よりも自分が知らないものを見てみたい。それが一番わくわくする。
応募作品形態:ブック/B1/36点/インクジェットプリント
審査評 選:椹木 野衣
写真としての“大きさ”を感じます。それは言葉に集約できない、一枚一枚からも細部からも、そして写真の総体からも発散されている、一種の「気」のようなもの、と言っていいかもしれません。だから、どの写真も「見極められない」。そこに惹かれます。写真を見るときには、たいてい「何が写っているのか」を見てしまいがちですが、この写真には、見るほどに対象が別の物に変化していくような運動があります。写真が絶えず形を変え、謎解きも止まらなくなる。けれども、その正体は結局わからなくてよいのです。目まぐるしいイメージの撹乱があればよいのです。“大きさ”と言ったのはそういうことです。優秀賞にふさわしい未知の力量と、更なる飛躍を感じさせます。
PROFILE
赤鹿 麻耶Maya Akashika
1985年、大阪府生まれ。11年、作品《風を食べる》で第34回写真新世紀グランプリ受賞。
大阪を拠点に海外を含む各地で個展、グループ展を開催。
夢について語られた言葉、写真、絵や音など多様なイメージを共感覚的に行き来しながら、現実とファンタジーが混交する独自の物語世界を紡ぐ。
主な展覧会に「あしたのひかり日本の新進作家vol.17」(東京都写真美術館、東京、2020年)、「赤鹿麻耶写真展『ときめきのテレパシー』」(キヤノンギャラリー、東京、2021年)などがある。