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須藤 絢乃

「 幻影 –Gespenster– 」

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2014グランプリ

ARTIST STATEMENT

幻影 -Gespenster-

行方知らずの少女達は、昔ならば「神隠し」とよばれ、忽然と姿を消すその現象を「神の世界」に行ってしまったと人々は信じた。現代の行方不明の少女達のリストには年齢、容貌、服装、失踪した日時などが記される。それらを読み進めるうちに得体の知れない世界に行ってしまった少女達の身の上に、えも言われぬ恐怖感を感じるとともに、あるもうひとつの思案が浮かぶ。現実の彼女達は、今では知らない土地で生活しているかもしれない。しかし、リストの中の少女達は、失踪したその時からこの世の時間軸から離脱し、老いる事も無く、永遠に少女のままの存在となる。刻々と少女から離れて行く私の肉体と精神は「少女である事」に対する憧れと強い意識をもち、そんな彼女達にある種独特の「神聖さ」を感じた。そして、私自ら彼女達に扮する作品を作ることにした。「永遠の少女」達の気持ちはどのようなものだろう。手の届かない世界に行ってしまった少女達の、永遠に色あせない押し花の様なポートレートたち。

応募作品形態:ブック(270mm×360mm)/画材用紙にデジタルアーカイバルピグメントプリント/1冊、点数21点

審査評 選:椹木 野衣

単なるセルフポートレートではなく、実在したものの現在は行方不明となっている少女達の残されたデータ(髪型、服装、年頃、場所)をもとに作者自身がそれを克明に再現し、失われたその少女達になり替わって撮られた作品です。そこには色々な意味が含まれています。消えた少女達は老いることのない永遠の存在になったのに対し、作者自身は刻々と老いて容貌も変化していく。その埋まらないギャップを、消えていった少女達に扮することによってあらわにし、現在の日本の若い世代が持っている儚さ、危うさを実にうまく表現しています。写真史の流れでいうとシンディ・シャーマンという先駆者がいますが、それを日本の状況の中で消化しこの作者ならではの作品に仕上げています。冊子のデザイン、製本の仕方、紙の手触り等も非常によく練られている作品だと思います。

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PROFILE

須藤 絢乃Ayano Sudo

1986年、大阪生まれ。2011年京都市立芸術大学大学院修士課程修了。在学中にフランス国立高等美術学校留学。2014年キヤノン写真新世紀グランプリ受賞。主な作品に、性別にとらわれない理想の姿に変装した自身や友人を写した「Metamorphose」、実在する行方不明の少女に扮したセルフ・ポートレイト「幻影 Gespenster」など。「写真都市―ウィリアム・クラインと22世紀を生きる写真家たち」(21_21 design sight、東京、2018年)、「愛について アジアン・コンテンポラリー」(東京都写真美術館、東京、2018年)他、国内外の展覧会、アートフェアに出展。2020年ZINE「薄荷 The peppermint magazine」を創刊。

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2014グランプリ

須藤 絢乃

幻影 -Gespenster-

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