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2016年度グランプリは、金 サジ氏に決定!
2016年11月11日(金)、東京都写真美術館にて写真新世紀2016年度(第39回公募)グランプリ選出公開審査会を開催しました。 写真新世紀は、昨年、創設25周年を迎え、撮影機器の進化に合わせて静止画・動画を含むデジタル作品の募集も開始しました。ジャンルを問わない新しい視点による作品、作家の創作活動を支援できるよう応募システムを整え、グローバルに公募を行っています。
今回は海外から新たに3名の審査員、アンナ・ダネマン氏(ロンドンフォトグラファーズギャラリーキュレーター)、エリン・オトゥール氏(サンフランシスコMOMAキュレーター)、オサム・ジェームス・中川氏(写真家)をお迎えするほか、さわ ひらき氏(美術家)、澤田 知子氏(アーティスト)、柴田 敏雄氏(写真家)、清水 穣氏(写真評論家)の全7名の審査員により審査が行われ、応募者1,723名の中から優秀賞7名、佳作14名が選出されました。
グランプリ選出公開審査会では、優秀賞受賞者7名(河井 菜摘氏、金 サジ氏、金 玄錫氏、櫻胃 園子氏、高島 空太氏、松井 祐生氏、松浦 拓也氏)がそれぞれプレゼンテーションを行い、審査員との質疑応答が交わされました。そして、審査員の合議の下、本年度のグランプリは金 サジ氏に決定しました。
開会
2016年11月11日(金)、午後3時00分。期待と緊張感が高まる独特の雰囲気のなか、グランプリ選出公開審査会が開会しました。まずグランプリ候補者である優秀賞7名が緊張した面持ちで着席、続いて審査員6名が登壇しました(エリン・オトゥール氏は欠席)。
続いてキヤノン株式会社 執行役員 野口 一彦より開会の挨拶を行いました。
プレゼンテーション
優秀賞7名は、それぞれ持ち時間10分の中でプレゼンテーションを行い、自らの言葉で作品の背景や制作意図、作品への思いを語りました。審査員からは、作品に対する賛辞や鋭い批評、質問などが寄せられ、それぞれの受賞者が真剣な表情で応答しました。
表彰式
プレゼンテーション終了後、別室にて約40分間のグランプリ審議が行われ、グランプリが決定しました。
表彰式で2016年度のグランプリが発表され、受賞者の金 サジ氏に表彰状と奨励金の目録、副賞としてキヤノンデジタル一眼レフカメラ「EOS 5D MarkⅣ」が贈られました。
続いて、昨年のグランプリ受賞者である迫 鉄平氏より花束が贈呈され、「一緒にがんばっていきましょう」とお祝いの言葉が述べられました。
金 サジ氏は、「今回出展した作品は、10年くらい前から構想し、ゆっくり作っていたものです。自分自身に嘘をつかず素直に向き合って作ったものが、こうして人に届いたということがすごくうれしいです」と受賞の言葉を述べました。
総評
オサム・ジェームス・中川氏
今回は満場一致で金 サジさんに決まりました。あなたの作品の芯である「in between」からの眼差しがすごく伝わってきます。これからも精力的に作品を撮り続けてほしいと思います。
清水 穣氏
今回、優秀賞の7名は、2つのタイプに分かれていました。それぞれ、現在、写真が置かれている状況に対する、よく見られる2通りのタイプです。1つは、写真とは光が像を作り出すものであり、そのシンプルでダイレクトな像に自分自身の根拠を見いだそうとしたものです。漆に感光剤を塗り10年かけて像を浮かび上がらせた河井氏の作品と、フォトグラムを使って音を像に結実させた松浦氏の作品です。
他の方々は、コラージュ、つまり世界にあふれている映像を組み合わせることが方法論になっていて、これも現代的な表現の1つといえますが、組み合わせることに他人を納得させる必然性があるかどうかという点では、金 サジさんの作品が群を抜いていました。他の方々も写真表現として面白いからこそ優秀賞になったわけですが、今ひとつ、自分のやっていることが自分の写真に追いついていないのではないか、あるいは、少し詰めが甘いのではないかということで、今回の結果となりました。
金 サジさんについては、今のシリーズが完璧であるがゆえに、例えば黒い背景に浮かび上がらせるという典型的な美しさ以外の表現ができるかどうか、ここから別の表現はどうなっていくのかが今後の課題であり、期待もしています。
全体としては、昨年あたりから気になっているのが、政治的な表現が減って私小説的な写真が目立つことです。これからの「生きにくい日本」というものに写真で向き合うような、骨太の表現も見たい気がします。