2016優秀賞
ARTIST STATEMENT
2016
これは10年前の夏至の日の光の記録であり、その後10年間の時の標本である。
2006年の夏、黒い漆のパネルの上に写真の感光剤を塗りピンホールカメラに入れて撮影した。作品上に写っているのはネガの光像であるが、写真の黒よりも漆の黒のほうが強いためポジの明暗に見える。漆黒ということばがあるように漆より黒いものはない。
そして写った画像は10年の時を経てあぶりだされて きた。漆は経年変化によって「透けて」いく。
応募作品形態:パネル/A2/3点
審査評 選:柴田 敏雄
この作品の表面には漆がコーティングされており、画像はハッキリとは見えていません。良く見るとほのかに像が浮かびあがってくるのですが、その表面には傷やムラもあり、工芸作品としては完璧とはいえないでしょう。しかし、それらマイナスの部分も含めたいくつかの要素が微妙に絡み合い、アート作品として大変気になるものでした。作品がユニークピースであること、現時点においてすでに10年の歳月を経ていて、今なお変化し続けているという点にも魅かれました。物質として写真は経年劣化していきますが、漆は年月を経てより透明度を増し、結果としてよりクリアなイメージを浮かび上がらせるという不思議な作品です。