2019優秀賞
ARTIST STATEMENT
Formerly Known As Photography
監視カメラ、スマートフォン、SNS、また、これら技術革新と相性の良い社会統制から、写真、特にストリートスナップは、二重の困難に直面している。まず、肖像権の問題。個人領域が瞬間的に拡散する恐れは増長し、街中での恣意的なカメラ操作は排斥すべき悪と見なされるようになった。次に、決定的瞬間についての疑問符。日常の全てを高精細に記録できるようになった現在、写真家、カメラ(秒間60コマの4k動画であれば1/60秒という機能的制約)によって限定、選択された任意の一点は未だ価値を持つのか。それでも、写真にしかできないことはあると思っている。これはその希望的検証だ。
応募作品形態:ブック/大四切/インクジェットプリント/38点、映像 1分47秒
審査評 選:安村 崇
スナップショットの瞬間とその瞬間に至る前後を動画として並置したときに、両者はどのように響きあうのか?この愚直とも言える検証の態度に惹かれました。静止画をトランスペアレンシーと透過光によって再現することで、動画との表面上の見かけを整える配慮もされています。作者は未だ知らない何かに出会う可能性を、動画に表れる身体性に賭けているようです。静止画と動画、それぞれの輪郭を強引に削り出すような仕掛けは鑑賞者にどんな体験をもたらすでしょうか。ストリートスナップの困難さに対する考察からはじまるこの作品は、図らずも静止画と動画はシームレスな関係か?という興味深い問いを含んでいるようにも思います。
PROFILE
遠藤 祐輔Yusuke Endo
1985年 | 宮城県仙台市生まれ |
2007年 | 東京芸術大学美術学部先端芸術表現科卒業 |
個展
2018年 | 「目に置いていかれないように」(ニコンサロン/銀座・大阪) |
グループ展
2011年 | 「floating view郊外からうまれるアート」(トーキョーアーツアンドスペース本郷/東京) |
2016年 | 「第15回写真 1_WALL」展(ガーディアン・ガーデン/東京) |
2017年 | 「あなたと海のあいま、通り過ぎてゆくすべて」(塩竈市杉村惇美術館/宮城)など |