2020優秀賞
ARTIST STATEMENT
The Summer Grass, or My mother's eyes through her last 15 years
両親の写真は、月日の流れについていくという徒労に終わった試みの産物。
写真は「デッドスペース 」のようなもの。そして、私の記憶の中に存在する暗い森のようなものです。
私が撮影した膨大な数の写真の中に含まれた、両親の写真。それは、私の心の奥底を激しく揺さぶります。
その中から、「写真を撮影する私を見ている母」の写真を選びました。その目的は、母のアルツハイマー病発症の兆候と、私と母とのある種の関係性の証を見つけ出すことでした。そして、それぞれ違う年に撮影した母の写真を選び、顔の部分だけを残してトリミングしました。同じフォーマットで統一する以外は、写真には一切修正を加えていません。
たくさんの写真の中から、母が自分で気に入りそうな写真を、撮影したそれぞれの年で2~3枚選びました。
選んだ写真にざっと目を通すのは、まるで映画を観ているかのようでした。母が生き返り、若返っていき、語られなかった何かを伝えてくるかのような感覚を覚えました。
応募作品形態:静止画32点
審査評 選:ポール・グラハム
シンプルでありながら深遠でもある作品。永い歳月を重ねゆく中で経年の証が刻み込まれた母親の眼差しを、15年以上に渡り撮り続けて来たものです。幸せ、悲しみ、喜び、溌剌とした魂、壮年さや力強さ。全てを、真っ直ぐ1点から連綿と見据えています。誰しも母親が存在する、或いは誰にとっても母親が居たのですから、この端整で素朴な作品に皆普く心打たれる事でしょう。
PROFILE
セルゲイ・バカノフSergei P. Bakanov
1970年 | トムスク(旧ソ連シベリア)生まれ |
1993年 | トムスク大学 電波物理学と文化批評を専攻 |
2010年 | トムスク・インスティテュート・オブ・ビジネス(デザイン専攻) |
フリーランスのデザイナーおよびフォトグラファーとして長年にわたり活動。
現代アートとしての写真をはじめ、世界の探求や人々とのコミュニケーション、そして物事や価値観を伝達する手段としての写真に関心がある。 一風変わった写真を生み出すプロセスに興味があり、それが自分らしいスタイルであると認識している。 |
受賞歴
2007年 | 「ファインド・ユア・トムスク」受賞 |
2013年 | 「トムスク・マイルズ」(トムスク州)入賞 |
2013年 | 「チルドレン・アンド・ネイチャー」特別賞 |
2014年 | 「トムスク市インサイド・アウト。レタッチなしのポートレート」受賞
ロシア建築家組合 から記念賞を受賞 |
2015年 | 「私たちの隣に住む熟練者」観客賞 |
2015年 | 「スペース・シベリア」(トムスク、ノヴォシビルスク、バルナウルなど)参加賞 |
2015年 | 「A・エフレモフ追悼 XIV」(チュメニ)最終候補(特別賞) |
2016年 | 「マイ・マザーランド」受賞 |
2016年 | 「イン・ザ・レンズ・オブ・フレンドシップ - トムスク」3位 |
2017年 | 「科学と私」2位 |
2018年 | 「タタール人の民族学的モザイク」(ロシア連邦タタールスタン共和国文化省)奨励賞
約20の写真コンテストにおいて、特別賞や最終候補者に選ばれる。 |