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千賀 健史

「 OS 」

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ARTIST STATEMENT

OS

別名”見えない犯罪”と呼ばれる特殊詐欺。
首謀者は捕まらず、証拠は溶かされ、“息子”は消え、“母”は隠し、“悪人”は隔離される。
なぜこのような犯罪に若者が関わるのかは自己責任と努力不足という言葉で覆い隠し、被害者にも自己責任と注意不足を理由に”騙された”責任はあなたにもあると黙らせてしまう。一体誰が?
この犯罪を見えなくしているのは詐欺師たちだけではない。物語として消費し、恐れ、怒り、擁護し、見過ごし、この犯罪劇の舞台は社会全体に広がっているのだ。

応募作品形態:ブック(192x260x50mm、523ページ)

審査評 選: オノデラユキ

主題は凡庸とも言える詐欺犯罪の「オレオレ詐欺」。ところがこの作者はこの主題で一本の大作映画張りの本を作ってしまった。作られた世界は奥行きを持ち、複雑でもあり、独特の世界は見る側の想像力を大いに掻立てる。いやむしろ見る者の想像力に委ねるという、アート作品の基本をしっかりと確実に形にしているのだ。
事件はノンフィクションであっても、そこに様々なレイアー(次元)の写真を多角的に利用することで、ノンフィクションとフィクションが錯綜し、写真本来の特性、まさに写真はそれが置かれたコンテクストによって意味が与えられるということがわかる。写真の本質でもある真実そしてその裏面でもある虚構を、遊び心豊かに大胆に構成している。さらに主題となった日本社会の陰湿で病的な犯罪のドキュメントとしても、その本質を浮かび上がらせている。ページをめくる手を疲れさせるほどの大部の本のボリューム感も、作品制作というに相応しい大きな説得力を持つ。
このBook作品の内容をひとつの壁に展示しきるというのは、簡単ではないだろう。
この作品のインパクトを保ちながらその内容を鑑賞者に明快に訴えかける展示方法を、自由に様々な可能性を試しながら考えなければならない。

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PROFILE

千賀 健史Kenji Chiga

1982年滋賀県生まれ、大阪大学卒業。
2016年 清里ヤングポートフォリオ 作品収蔵
2017年 16th 写真1_WALLグランプリ
2018年 Breda Photo Festival 招待作家
2019年 Luma Rencontres Dummy Book Award Arles ショートリスト
2019年 第8回大理国際写真展 最優秀新人写真家賞
2021年 British Journal of Photography 今年注目の写真家20人に選出
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2021優秀賞

千賀 健史

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