2021優秀賞
ARTIST STATEMENT
Watching A Tree Disappear
2018年に1本のアルビジアの巨木が嵐で倒れた。その倒木が朽ち果てていく様子を記録したいと思った。そこで、カメラを設置して毎日24時間、倒木を観察することにした。設置したカメラは「動き」を動画として記録できる。動画が撮影されると携帯電話の通信網を通じて撮影動画が送信されてくる仕組みである。カメラからの映像をウェブサイトでライブ配信できるようにもした。
何の変化も見られない日もあるだろう。撮影動画が2、3回送信されてくる日もあるだろう。ちょうど画面を見ているときに倒木を通り道にしている動物を目にする幸運な日もあるかもしれない。
これは芸術作品としてのライブ映像である。
倒木が完全に朽ちて土に還るまで、このプロジェクトは続く。
応募作品形態:動画13分35秒
審査評 選:グウェン・リー
自然にスポットを当て、写真を構成する3つの要素––時間、空間、光––をテーマにした作品です。
森林の中に設置したWebカメラからのライブ映像を見ていると、倒木はその他の自然や野生生物にとって共有空間となっているのがわかります。また、光と影が変化していく様子も見ることができ、時間の流れが見て取れます。倒木も時間の象徴となります。しかしそれは、人間の感覚の時間ではなく、自然の中に流れる時間です。自然に還って残った木々を育てる、再生と生育のメカニズムなのです。それは多大な時間を要するサイクルであることが、作者が世の中に伝えたかった真のメッセージなのかもしれません。
PROFILE
ロバート・ザオ・レンフイRobert Zhao Renhui
1983年シンガポール生まれ。多分野で活躍するアーティスト。
批判的動物学者協会 の創設者。人間と自然の関係をテーマにした芸術活動に従事。キャンバーウェル・カレッジ・オブ・アーツで写真学の学士号を、ロンドン・カレッジ・オブ・コミュニケーションで写真学の修士号を取得。
世界各地のグループ展での展示実績も多数あり、これまでに釜山ビエンナーレ2020、シンガポール・ビエンナーレ2019、アジア・パシフィック・トリエンナーレ2018 (オーストラリア・クイーンズランド州で開催)、JIWA:ジャカルタ・ビエンナーレ2017 (インドネシアで開催)、第7回モスクワ・ビエンナーレ (2017年にロシアで開催)、第20回シドニー・ビエンナーレ(2016年にオーストラリアで開催)、アルル国際写真フェスティバル(2015年にフランスで開催)で作品が展示されている。
シンガポール国内では個展も開催しており、最近では2017年にシンガポール国際アート・フェスティバル (SIFA)からの依頼による「ネイチャー・ミュージアム」と、オー!オープン・ハウスとのコラボレーションによって実現した「ザ・ビザー・オナー」などを開催した。ケ・ブランリ美術館(フランス・パリ)、カディスト・アート・ファウンデーション(アメリカ・サンフランシスコ)、福岡アジア美術館 でレジデンスに参加した経験もある。2010年、シンガポールのナショナル・アーツ・カウンシルのヤング・アーティスト賞を受賞。
2017年、ヒューゴ・ボス・アジア・アート賞の最終候補に選出。2019年、第12回ベネッセ賞の最終候補に選出。