2021優秀賞
ARTIST STATEMENT
Slaghuis II
アフリカーンス語で「屠殺場」を意味する「Slaghuis」。一部の地域では「暴力が蔓延する場所」の意味でも使われる。そんな言葉で表現されるようになった酒場のひとつで私は育った。救いが欲しい。強い意志を持ちたい。そうした必死の思いから、トラウマの元凶であるその酒場を自分のスタジオとして使用している。そのスタジオで、私は怒りと不安をさらけ出す。そして、写真に対して物理的に手を加えて自分の感情を表現するプロセスを通じて、カタルシスを得る。
応募作品形態:静止画 約27点
審査評 選:清水 穣
「屠殺場」は、南アフリカの言葉では暴力の場所をも意味し、暴力沙汰が珍しくないような居酒屋をも表すようになったという。93年生まれの作者にとって、それは自分の実家の環境であるとともに、91年に法的に廃止され94年に完全撤廃されたアパルトヘイト以後の、南アフリカの激動と混乱の時代を反映し、世界で最も犯罪率が高かった地域の「屠殺場」であったろう。若い作者が、自らのトラウマ的な過去や怒りを改めて呼び起こし、蘇らせるとともに、写真として昇華させた作品群。
PROFILE
テンビンコシ・ラチュワヨThembinkosi Hlatshwayo
1993年生まれ 南アフリカのヨハネスブルグを拠点に活動する写真家。
両親が運営している酒場をスタジオとして利用し、直接的なトラウマ、世代間のトラウマ、暴力、記憶などのテーマを研究している。
写真家のジャブラニ・ダラミニ氏、写真のキュレーター兼教育者のジョン・フリートウッド氏に師事。