2021優秀賞
ARTIST STATEMENT
河はすべて知っている——荒川
ある都市を捉える方法はいくつもある。私はそこを流れる河を辿り、その都市に目を向けてみようと思った。これがこのシリーズのコンセプトだ。水はあらゆる生命の源である。また、治水は、都市が成り立つためにいつの時代も大きな問題だった。河川は人類文明を育て、一方で、人類は河川の有り様を度々構築してきた。
今回展示する作品は、奥秩父にある上流から河口の葛西臨海公園まで、荒川の両岸の風景を写真に収めたものだ。
荒川は「暴れ川」の意味があり、過去に何度も氾濫を起こし、人々の生活に大きな影響を及ぼしてきた。東京の縁をなぞるように流れ、東京湾に注ぐ荒川を下っていくことで、東京の側面の1つを垣間見ることができると考えた。
応募作品形態:インクジェットプリント 600x1600mm、34点
審査評 選:安村 崇
大きく引き伸ばされた34枚の写真は「河はすべてを知っているー荒川」という大げさに思えるタイトルが、少しも大げさではないと感じさせてくれます。4年の歳月をかけ、荒川の上流である奥秩父から下流の葛西までの両岸を撮影した作品には、河川敷やその周辺における人々のさまざまな営みが丹念に記録されています。これらの写真が、他のどこでもない特別な場所のように立ち上がってくるのは、氾濫など予想もさせないような川沿いに流れるあのどこか弛緩した時間と、横長の画面を見回すように眺めることから生じるパノラマ写真特有の時間とが、うまく調和しているからではないでしょうか。川という存在が綴じ紐のように働いて、それぞれの写真を緩やかにつなぎとめている、その構造も魅力的です。極めてオーソドックスな写真の使用法から生まれる荒川に沿った光景は、観察とその記録に徹しようとする作者の姿勢によって貫かれています。
PROFILE
宛 超凡Wan Chaofan
名前は、字がすべて左右対称になる様にと祖父がつけてくれて、読みは母が考えてくれた。
(ゆきかずになる可能性もあった。) 宇多田ヒカルのPVを作りたいという、ただその一心で美大を目指し、
唯一受かった建築科に入学し、いろいろあって今は美術家を名乗っている。矢野顕子が歌うみたいに、
ランジャタイが漫才をするみたいに、自分も何かをつくっていきたい。
一番最初に縄文土器をつくった人はどんな人だったんだろうか?
1991年 | 中国河北省固安県で生まれ |
2013年 | 西南大学 卒業 |
2017年 | 明治大学 政治経済学研究科修士課程 修了 |
2021年 | 東京藝術大学 美術研究科博士課程 修了 |
STAIRS PRESS共同創設者 Place M「夜の写真学校」26期生 TOTEM POLE PHOTO GALLERYメンバー |
受賞
2016年 | KAWABA NEW-NATURE PHOTO AWARD・川場村賞 |
2016年 | 第5回キヤノンフォトグラファーズセッション・キヤノン賞 |
出版
2020年 | 『BURNING IN THE STONE』 Wan Publishing |
2018年 | 『観物』 Wan Publishing |
2016年 | 『水辺にて』 STAIRS PRESS |
コレクション
清里フォトアートミュージアム |