「美の分身」をお届けするために
撮影現場より
キヤノンのイメージング技術と京都伝統工芸の匠の技により制作される本物そっくりの高精細複製品。綴プロジェクトでは、数百年の時を経た文化財の今ある姿をありのままに撮影し、「美の分身」として皆様にお届けしています。今回は、皆様によく聞かれることを中心に、文化財への負担を極力減らしながら高精細画像を取得する撮影現場の様子をお伝えします。
EOS R5とRF400mmの望遠レンズで撮影
まず一番に聞かれるのは、「どんな機材を使ってスキャニングしているの?」という質問。大型のスキャナーをイメージされている方や、特別に開発された機材を使って、と想像していらっしゃる方もいるようですが、綴の撮影では、市販のキヤノン製品を使用しています。現在のシステムでは、カメラはEOS R5、レンズはRF400mmの望遠レンズ、お天気カメラ用の旋回台を使用。万が一を考慮して文化財からは3.5m距離をとって機材を設置します。原本の前ではマスクを着用したり、文化財に万が一は厳禁ですので、とても緊張する時間です。
海外の美術館やお寺でも撮影しています
次によく聞かれるのは、「どこで撮影しているの?」という質問。撮影場所は、機材を運んでどこへでも。海外の美術館であったり、お寺の中であったり、可搬性に優れた機材でシステムを組んでいるため、移動が難しい文化財や美術品のところに出張して撮影しています。過去にお寺の中で撮影した時は、畳がやわらかく沈み込んでしまい水平がとりづらかったり、照明環境もそれぞれの場所で異なるため難しさがありますが、苦労と工夫を重ねて制作をしてきました。
文化財への負担が少ないことも大切なポイント
「綴以外にも複製を作っている会社はあるのですか?」という質問もよく聞かれます。いわゆる複製品(レプリカ)を制作する方法は世の中にあまたありますが、綴プロジェクトが専門家から評価されていることの一つに、文化財への負担を極力減らしたスキームにあります。プロジェクトスタート当時は、原本との色合わせに苦労をしていましたが、キヤノン独自のカラーマッチングシステムにより、現在ではよりスムーズな色合わせが可能になりました。さらに、撮影現場にプリンターを持ち込み、その場で原本との色合わせができるので、何度も文化財を出し入れする必要がありません。大切に守り受け継がれてきた文化財を1000年後にも残していくために、少しでも負担を減らして撮影することも大切なポイントです。