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2021年度[第44回公募]グランプリ選出公開審査会報告 2021年度[第44回公募]グランプリ選出公開審査会報告
2021年度[第44回公募]グランプリ選出公開審査会報告 2021年度[第44回公募]グランプリ選出公開審査会報告

2021年度グランプリは、賀来庭辰氏に決定!

2021年11月12日(金)、東京都写真美術館にて写真新世紀2021年度[第44回公募]グランプリ選出公開審査会を開催しました。今年度は写真新世紀の最後の公募となります。

審査員として、ライアン・マッギンレー氏(写真家)、オノデラユキ氏(写真家)、清水穣氏(写真評論家)、グウェン・リー氏(シンガポール国際写真フェスティバルディレクター)、椹木野衣氏(美術評論家)、安村崇氏(写真家)、横田大輔氏(写真家)の7名をお迎えし、過去最多となる2,191名(組)の応募者の中から優秀賞7名、佳作14名(組)が選出されました。

グランプリ選出公開審査会では、優秀賞受賞者7名(宛超凡氏、テンビンコシ・ラチュワヨ氏、光岡幸一氏、賀来庭辰氏、ロバート・ザオ・レンフィ氏、千賀健史氏、中野泰輔氏)がそれぞれプレゼンテーションを行い(テンビンコシ・ラチュワヨ氏とロバート・ザオ・レンフィ氏は映像)、審査員との質疑応答が交わされました。そして、審査員の合議の下、本年度のグランプリは賀来庭辰氏に決定しました。

開会

2020年11月12日(金)、午後2時30分。期待と緊張感が高まる独特の静けさのなか開会し、グランプリ候補者である優秀賞5名が緊張した面持ちで登壇。続いて審査員5名が着席しました(ライアン・マッギンレー氏、グウェン・リー氏は欠席)。

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プレゼンテーションと質疑応答

優秀賞受賞者は、それぞれ持ち時間7分の中でプレゼンテーションを行い、自らの言葉で作品の背景や制作意図、作品への思いを語りました。審査員からは、作品に対する賛辞や鋭い批評、質問などが寄せられ、受賞者は真剣な表情で応答しました。

  • PRESENTATION

    宛 超凡WAN CHAOFAN

    「河はすべて知っている——荒川」

  • PRESENTATION

    テンビンコシ・ラチュワヨTHEMBINKOSI HLATSHWAYO

    「Slaghuis Ⅱ」

  • PRESENTATION

    光岡 幸一KOICHI MITSUOKA

    「もしもといつも」

  • PRESENTATION

    賀来 庭辰NAOTATSU KAKU

    「THE LAKE」

  • PRESENTATION

    ロバート・ザオ・レンフィROBERT ZHAO RENHUI

    「Watching A Tree Disappear」

  • PRESENTATION

    千賀 健史KENJI CHIGA

    「OS」

  • PRESENTATION

    中野 泰輔TAISUKE NAKANO

    「やさしい沼」

グランプリ選出公開審査会の様子を映像でご覧いただけます。

表彰式

プレゼンテーション終了後、別室にて約1時間の審議が行われ、グランプリが決定しました。

表彰式で2021年度のグランプリが発表され、受賞者の賀来庭辰氏には、奨励金100万円ならびに副賞としてミラーレスカメラ「EOS R5」が贈呈されました。

賀来氏は、「本当に嬉しく思っています。この作品を創るために支えてきてくれた大切な人たちに少しでも恩返しができたのかなと思います。私は2017年に佳作をいただき、今回も優秀賞に選んでいただいてすごく救われました。写真新世紀が終わると聞きとても悲しい気持ちになりましたが、写真新世紀が忘れられないように、作家の私たちが頑張っていかなければ思っています」と受賞後の気持ちを語りました。

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総評

清水 穣氏

アナログ写真のコンクールとして始まった写真新世紀が、映像で終わるというのは非常に象徴的で、写真というものの概念や写真を巡る技術がここまできたんだという思いがあります。

賀来さんの作品は、一見非常に素朴で地味ですが、例えるなら私小説作家が傷を癒やしに湖に来るといった、よく作り込まれたフィクションとしての面があり、今後の可能性を感じてグランプリに選ばせていただきました。

今回の優秀賞受賞作品を通じて私たち審査員が面白いと思ったのは、時代なのでしょうか、人間と自然の関係において自然がかつてないほど脅威に感じられ、私たちが生きている文明がいかに脆いものであるか、私たちがいかに表層的な所に立っているか、壁一枚、床一枚を隔てて水が迫っているかもしれないという状況、自然と人間をはっきり分けていたテクノロジーがそんなに当てにならないといった危機意識のようなものが、「水」を象徴としてほとんどの作家に共通していると考えられることでした。賀来さんの湖をはじめ荒川、沼、渋谷の暗渠、森の中の水桶、そして酒場の壁や床に残された水の痕跡もありました。水というもの、それに対する危機意識というものが大きな共通項であり、今、私たちの現代はそこに来ているのだという思いがあります。

何か根源的な条件について考えを巡らせるという点も今回の共通項でした。時間、空間、世界と自己といったシンプルだけれど深い問題に写真で立ち向かうという点が共通していたことも最後にふさわしいものだったと思っています。

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