ニュースリリース

2010年3月26日
特定非営利活動法人 京都文化協会
キヤノン株式会社

つづりプロジェクト」 第三期5作品が完成
海外へ流出した「松島図屏風」(俵屋宗達筆)や国宝「神護寺三像」(伝 藤原隆信筆)など

特定非営利活動法人 京都文化協会(以下 京都文化協会)ならびにキヤノン株式会社(以下 キヤノン)が取り組んでいる「綴プロジェクト」(正式名称「文化財未来継承プロジェクト」)の第三期5作品が、このほど完成しました。 これらの作品は、オリジナルの文化財を所有している所蔵元などへ寄贈されます。

「松島図屏風」 六曲一双 江戸時代 俵屋宗達筆
原本: フリーア美術館/Freer Gallery of Art, Smithsonian Institution (米国・ワシントンD.C.)
Facsimiles of works in the collection of the Freer Gallery of Art, Smithsonian Institution, Washington, DC:Gift of Charles Lang Freer, F1906.231, F1906.232.

「綴プロジェクト」概要/第三期では国宝を含む5作品が完成

「綴プロジェクト」は、京都文化協会が主体となって推進する文化財保存活動の一環として発足したもので、キヤノンがその趣旨に賛同して2007年3月から開始したプロジェクトです。 キヤノンの入力から出力に至る最新のデジタルイメージング技術と京都伝統工芸の匠の技との融合により、屏風や襖絵、絵巻物など古くから日本に伝わる貴重な文化財をデジタル化して記録し、そのデータをもとに高精細な複製品を制作します。
2009年3月より開始した第三期では、「海外へ流出した作品の里帰り」、「歴史をひもとく文化財」、「日本を代表する水墨画作品」の3つのテーマのもと、米国フリーア美術館所蔵の 「松島図屏風まつしまずびょうぶ」(俵屋宗達たわらやそうたつ筆)や、高雄山 神護寺所蔵(京都国立博物館寄託)の国宝「神護寺三像じんごじさんぞう」 (伝藤原隆信でん ふじわらのたかの筆)、高台寺 塔頭 圓徳院所蔵の重要文化財「山水図襖さんすいずふすま」(長谷川等伯はせがわとうはく筆)など計5作品 が完成しました。 これら5作品は、それぞれのオリジナルの文化財の現所蔵元あるいは海外へ流出する以前に保有していた社寺や博物館、美術館のほか、文化財にゆかりのある地方自治体などへ寄贈されます。

「松島図屏風」が米国フリーア美術館から日本へ里帰り

第三期の対象文化財の1つである「松島図屏風」は、江戸時代に制作された俵屋宗達の作品です。 同作品は明治時代初期までは大阪府堺市の祥雲寺にあったとされていますが、その後アメリカへ流出し、現在はフリーア美術館に保管されています。 日本国内に残っている宗達筆の国宝「風神雷神図屏風」などとならぶ、大変貴重な作品です。
「綴プロジェクト」では、現在国内にある文化財だけでなく、「松島図屏風」のように過去に海外へ流出してしまった文化財の複製品を制作し元の所有者へ寄贈することで、作品を日本の地へ里帰りさせる取り組みも継続して行っています。

【 第三期対象文化財 】
作品名 員数 作者名 時代 テーマ* 寄贈先
神護寺三像じんごじさんぞう(国宝)
伝 源頼朝像でん みなもとのよりともぞう
伝 平重盛像でん たいらのしげもりぞう
二幅 伝 藤原隆信でん ふじわらたかのぶ 鎌倉時代 3 高野山真言宗遺迹本山
高雄山 神護寺
(京都府京都市)
竜虎図屏風りゅうこずびょうぶ 六曲一双 雪村周継せっそんしゅうけい 室町時代 1 臨済宗大徳寺派 早雲寺
(神奈川県足柄下郡)
山水図襖さんすいずふすま(重要文化財) 四面 長谷川等伯はせがわとうはく 安土桃山時代 2 高台寺 塔頭 圓徳院
(京都府京都市)
松島図屏風まつしまずびょうぶ 六曲一双 俵屋宗達たわらやそうたつ 江戸時代 1 臨済宗大徳寺派 祥雲寺
(大阪府堺市)
樹花鳥獣図屏風じゅかちょうじゅうずびょうぶ 六曲一双 伊藤若冲いとうじゃくちゅう 江戸時代 3 静岡県立美術館
(静岡県静岡市)
  • テーマ:1.「海外へ流出した作品の里帰り」、2.「日本を代表する水墨画作品」、3. 「歴史をひもとく文化財」

「綴プロジェクト」とは

屏風や襖絵、絵巻物など日本古来の貴重な文化財のなかには、過去に海外へ流出してしまった作品や、国内にあっても、劣化防止や文化財保護のための国の定めにより、限られた場所や期間内でしか私たちが目にすることができない作品が数多く存在します。 京都文化協会とキヤノンは、2007年3月に「綴プロジェクト」を立ち上げ、キヤノンの入力から出力に至るデジタルイメージング技術と京都伝統工芸の匠の技との融合により、それらの文化財の高精細な複製品を制作する取り組みを始めました。 複製品を活用することで、より多くの人にその価値を身近に感じてもらう機会が提供できるとともに、オリジナルの文化財は保存に適した良い環境のもとで劣化を防ぎながら保管することが可能となるため、貴重な文化財の未来への継承がより確実に行えるようになります。
なお、これまでに制作された作品は、初年度である第一期(2007年3月~2008年2月)の5作品と、第二期(2008年3月~2009年2月)の5作品、そして今回の第三期(2009年3月~2010年2月)に新たに完成した5作品の、計15作品になります。

【 参考資料 】

「綴プロジェクト」 制作プロセス

入力

高精細デジタルデータの取得

文化財の原寸大出力が可能な高画質データの取得には、デジタル一眼レフカメラを使用。専用に開発した旋回台を用いて多分割撮影を行い、合成して高精細デジタルデータに仕上げます。

色合わせ

高精度なカラーマッチング

取得された高精細デジタルデータを、キヤノン独自のカラーマッチングシステムを用い撮影環境の照明と合わせて画像処理し、その場で出力し色合わせを行います。色合わせの労力と文化財への負担を軽減しました。

出力

世界最高レベルのプリンティング技術

日本画の繊細な濃淡、陰影が生み出す立体感の表現を大判インクジェットプリンター「imagePROGRAF」が可能にしました。使用する和紙や絹本は独自に研究開発され、文化財の出力および金箔加工などに最適化されています。

金箔・金泥・雲母

古来より伝承される伝統工芸の技により再現

日本文化財の最大の特徴となっている「金箔(きんぱく)・金泥(きんでい)・雲母(きら)」は京都西陣の伝統工芸士が熟練の手技を振るいます。
箔の経年変化の再現には、独自の「古色」の技法が用いられます。

表装

京で鍛えられた確かな技術

作品は、京都の表具士により表装がなされます。日本独自の表具類を用い、屏風であれば金具の古色や裏面の切地まで、襖であれば建物への設えまでオリジナル文化財に近い姿で忠実に再現され、完成します。