ニュースリリース

2014年11月13日
キヤノン株式会社

キヤノンの技術が「超大型望遠鏡 TMT※1」の主鏡製作に貢献

キヤノン株式会社(以下、キヤノン)は、「超大型望遠鏡 TMT」(以下、TMT)の主鏡として搭載される分割鏡の加工を担います。

  • ※130メートル望遠鏡(Thirty Meter Telescope)の略称。
「超大型望遠鏡 TMT」の完成予想図(国立天文台提供)

「超大型望遠鏡 TMT」の完成予想図(国立天文台提供)

2014年に建設を開始したTMTにおいて主鏡分割鏡の加工を担当

TMTは、主鏡の直径が30mに及ぶ次世代の巨大望遠鏡です。日本を含めた5カ国の協力で計画され、ハワイ島マウナケア山の山頂付近で2014年より建設を開始し、2022年から観測を開始することを目指しています。TMTの主鏡として搭載される分割鏡492枚(交換用を含めると574枚)のうち、日本は約3割の加工を担当する予定です。日本が担当する加工のうち、キヤノンが26枚の研削をまずは担うことになり、すでに分割鏡の加工を開始しました。

分割鏡を曲げることによる効率的で高精度な加工を実現

TMTの30mの主鏡は、対角1.44m、厚さ45mmの六角形でできた合計492枚の分割鏡を2.5mm間隔で敷き詰めることで構成されます。分割鏡は、加工形状の異なる82種類の分割鏡を6枚ずつ(交換用を含めると7枚ずつ)製作する必要があります。
キヤノンが担当する分割鏡の加工は、表面の凹凸を2μm以下の精度で加工することが要求されます。これは、東京ドームのフィールドの凹凸を0.2mm以下にするのと同じくらいの精度になります。キヤノンは、レンズやミラー製作で培った研削・研磨技術、非球面加工技術、計測技術といった光学技術を駆使して分割鏡の製作を行っています。特に、非球面加工の工程においては、キヤノンが独自に開発した工具を用いて、分割鏡を曲げることで効率よく加工を行う予定です。

キヤノンは「すばる望遠鏡」の超広視野主焦点カメラ「Hyper Suprime-Cam」向けの補正光学系の開発・製造なども手掛けており、これからも技術を通して世界の科学技術や自然科学の発展に寄与していきます。

なお、11月19日から21日まで幕張メッセで開催される「Inter BEE 2014」(国際放送機器展)で、キヤノンが研削・研磨した主鏡分割鏡の試作品を、キヤノンブースにて展示する予定です。

主鏡分割鏡の製作について

主鏡の分割鏡の製作は、円状のガラス材料の表面や裏面を研削・研磨し、球面加工や非球面加工を行います。その後、六角形の形に切断したり穴を開けたりしたものを、SSA※2に搭載します。

  • ※2Segment Support Assembly(分割鏡保持機構)。この機構が動くことで、ミラーの面形状を精密に調整します。

TMTについて

TMTは、ハワイ島マウナケア山の山頂付近で2021年度の完成、2022年観測開始を目指して建設を開始しました。日本のほか、米国、中国、インド、カナダの合計5カ国が計画に参加しています。建設費は約1,500億円で、そのうち4分の1を日本が負担します。キヤノンが担う分割鏡の加工のほか、分割鏡の元となるガラス材の生産、望遠鏡本体の設計、製造などを日本が担当します。
TMTは、建設場所であるマウナケア山で観測を行っている「すばる望遠鏡」と比較すると、13倍の集光力と4倍の解像力を持ちます。より遠くの天体が細かいところまで観測することが可能になり、その解像力は東京から大阪にある1円玉を識別できるほどです。
また、TMTではほぼすべての観測においてAO(Adaptive Optics、補償光学系)が用いられるため、地球大気の揺らぎを補正して視認性の高い天体像を得ることができます。
TMTによる観測で、宇宙で最初に誕生した星や銀河の正体を解明したり、太陽系外惑星に生命の可能性を見つけたりといったことが期待されています。