ニュースリリース

2021年6月21日
特定非営利活動法人 京都文化協会
キヤノン株式会社

国宝「孔雀明王像」(掛け軸)の高精細複製品を国立文化財機構へ寄贈
寄贈作品を東京国立博物館「日本美術のとびら」にて展示

特定非営利活動法人 京都文化協会(以下「京都文化協会」)とキヤノン株式会社(以下「キヤノン」)が共同で取り組んでいる「綴(つづり)プロジェクト」(正式名称:文化財未来継承プロジェクト)の第14期作品として、東京国立博物館所蔵の国宝「孔雀明王像(くじゃくみょうおうぞう)」(掛け軸)の高精細複製品を制作し、独立行政法人国立文化財機構(以下「国立文化財機構」)へ寄贈しました。この作品は、東京国立博物館(上野公園)にて6月22日より開設される常設展「日本美術のとびら」で展示されます。

孔雀明王像(掛け軸)

孔雀明王像(掛け軸)

優美な彩色と精緻な截金(きりかね)部分

優美な彩色と精緻な截金(きりかね)部分

国宝「孔雀明王像」(掛け軸)の高精細複製品を制作・寄贈

国宝「孔雀明王像」は、大型の絹本(約150×100cm)に穏やかな表情の孔雀明王が描かれ、柔らかく繊細な彩色と着衣や装飾品に施された截金(きりかね)が特徴的です。平安時代に描かれた孔雀明王像で唯一の現存とされる本作品は、院政期に栄えた優美で洗練された彩色と技法を今に伝える大変貴重なもので、「綴プロジェクト」で手掛けた中でもっとも古い時代の作品です。高精細複製品の制作にあたっては、文化財への負担を極小化しながら、キヤノンの最新デジタルイメージング技術と京都伝統工芸の匠(たくみ)の技を融合することで、わずか0.2mmほどの細さにもなる精緻を極めた截金部分や彩色の繊細なニュアンスまでも忠実に再現しました。これにより、鑑賞の機会が限られるオリジナル文化財をより良い環境で保存しながら、高精細複製品を広く公開することで多くの方々に日本の文化財に触れる機会を創出します。

寄贈作品を東京国立博物館「日本美術のとびら」にて展示

寄贈作品は、2021年6月22日より東京国立博物館本館特別3室に新しく開設される常設の体験展示スペース「日本美術のとびら」に展示されます。「日本美術のとびら」は、見て、体験することで、人から人へ受け継がれてきた文化財のすばらしさを体感できます。展示ケース越しではない複製品を間近で見て、そこから広がる景色や空間、音や季節などを想像しながら鑑賞することで、初心者から美術に精通された方まで幅広い来館者が日本美術を楽しむことができます。

  • 仏画や仏像の装飾に使う技法で、細長く切った金や銀の箔を用いて、繊細で華麗な文様を描き出す。
  • 東京国立博物館への入館にはオンラインによる事前予約が必要です。
    詳細は東京国立博物館ホームページをご確認ください。

「綴プロジェクト」とは

「綴プロジェクト」は、オリジナル文化財の保存と高精細複製品の活用を目的として、京都文化協会が主催し、キヤノンが共催して推進している社会貢献活動です。キヤノンの入力、画像処理、出力に至る先進のデジタル技術と、京都伝統工芸の匠(たくみ)の技との融合により、屏風や襖絵、絵巻物など古くから日本に伝わる貴重な文化財の高精細な複製品を制作して寄贈しています。2018年の第11期作品より、複製品の制作過程で使用するカメラやレンズなどの撮影システムを刷新し、これまで以上に高精細な複製品の制作が可能となりました。
2007年からスタートした本プロジェクトは、海外に渡る以前の所有者などに寄贈する「海外に渡った日本の文化財」と、小・中学校の教科書に掲載の多い文化財などを対象に、教育現場で生きた教材として活用する「歴史をひもとく文化財」の2つのテーマのもと、毎年文化財を選定しています。葛飾北斎や俵屋宗達、尾形光琳の作品など、現在までに全57点の高精細複製品を制作、寄贈しました。

  • 第11期作品より、制作で使用するカメラは「EOS 5D Mark IV」、レンズは「EF400mm F2.8L IS II USM」、第12期作品より、大判プリンターは「imagePROGRAF PRO-4000」に変更。

「綴プロジェクト」の制作プロセス

入力

高精細デジタルデータの取得

文化財の原寸大出力が可能な高画質データの取得には、デジタル一眼レフカメラを使用。専用に開発した旋回台を用いて多分割撮影を行い、合成して高精細デジタルデータに仕上げます。

色合わせ

高精度なカラーマッチング

取得された高精細デジタルデータを、キヤノン独自のカラーマッチングシステムを用い撮影環境の照明と合わせて画像処理し、その場で出力し色合わせを行います。色合わせの労力と文化財への負担を軽減しました。

出力

世界最高レベルのプリンティング技術

日本画の繊細な濃淡、陰影が生み出す立体感の表現を大判インクジェットプリンター「imagePROGRAF」が可能にしました。使用する和紙や絹本は独自に研究開発され、文化財の出力および金箔加工などに最適化されています。

金箔・金泥・雲母

古来より伝承される伝統工芸の技により再現

日本文化財の最大の特徴となっている「金箔(きんぱく)・金泥(きんでい)・雲母(きら)」は京都西陣の伝統工芸士が熟練の手技を振るいます。
箔の経年変化の再現には、独自の「古色」の技法が用いられます。

表装

京で鍛えられた確かな技術

作品は、京都の表具士により表装がなされます。日本独自の表具類を用い、屏風であれば金具の古色や裏面の切地まで、襖であれば建物への設えまでオリジナル文化財に近い姿で忠実に再現され、完成します。

「日本美術のとびら」について

概要
東京国立博物館本館に6月22日(火)にオープンする常設展示です。コンセプトは、『「とびら」をあけて、日本の美術と遊ぶ体験展示』です。「とびら」のむこうに広がる展示室で、より文化財に親しんでいただけるように
  1. みる <日本文化紹介映像>
  2. たのしむ <日本美術のデジタル年表>
  3. かんじる <高精細複製品> (季節に合わせて展示替えを行います)
の3つのコーナーが登場します。どのコーナーでも、見て、体験することで、人から人へ受け継がれてきた文化財のすばらしさを体感できます。
開館時間
9:30~17:00
休館日
月曜日(ただし月曜日が祝日または休日の場合は開館し、翌平日に休館)、2021年12月14日(火)、年末年始(2021年12月26日(日)~2022年1月1日(土・祝))、2022年1月4日(火)。その他臨時休館※1あり。
会場
東京国立博物館 本館 特別3室
観覧料
東京国立博物館 総合文化展観覧料(事前予約制※1
一般1,000円、大学生500円、高校生以下無料

本展の「かんじる」コーナーでは、キヤノンと文化財活用センターとの共同研究プロジェクト※2で制作した屏風と掛け軸の高精細複製品が展示されます。展示される高精細複製品は、今回寄贈する「孔雀明王像」(掛け軸)の高精細複製品※3と、「風神雷神図屏風・夏秋草図屏風」の高精細複製品※4です。なお、「風神雷神図屏風」(尾形光琳筆)および「夏秋草図屏風」(酒井抱一筆)は、元々二曲一双の屏風の表裏に描かれた作品ですが、現在は作品の保存の観点から表裏を分けて保存されています。高精細複製品では表裏を一体とした形で制作し、本来の姿を復元しています。

重要文化財「風神雷神図屏風」(尾形光琳筆) 原本所蔵:東京国立博物館

重要文化財「風神雷神図屏風」(尾形光琳筆)
原本所蔵:東京国立博物館

重要文化財「夏秋草図屏風」(酒井抱一筆) 原本所蔵:東京国立博物館

重要文化財「夏秋草図屏風」(酒井抱一筆)
原本所蔵:東京国立博物館

  • ※1詳細は東京国立博物館ホームページをご確認ください。
    また、東京国立博物館への入館にはオンラインによる事前予約が必要です。
  • ※2キヤノンは文化財活用センターと、高精細複製品を用いた日本の文化財活用のための共同研究プロジェクトを2018年から実施しています。本プロジェクトは、日本美術の名品について、「綴プロジェクト」の技術を用いて高精細複製品を制作するとともに、新しい活用方法の開発についての共同研究と実証実験を行っています。
  • ※3高精細複製品「孔雀明王像」(掛け軸)は、2022年3月末までの展示予定です。
  • ※4高精細複製品「風神雷神図・夏秋草図屏風」は、2021年8月29日(日)まで展示予定です。

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