野鳥の撮りかた13

ピントをどこに合わせるか01(AFフレーム・点で捉える)

AF(オートフォーカス)でピントを合わせるためのAFフレームや測距エリア。初期設定は一番正確な「中央1点」に設定されています。しかし、AFフレームや測距エリアは、点や領域、その中間など色々なパターンから選択することができ、それらの違いを知ることで、狙い通りの撮影に近づけることができます。

ウミネコ

「中央1点AF」で、ウミネコの目にピントを合わせて、顔のアップを狙った。買ったばかりの設定では、こういう写真になる(ワンショットAFモード)。

絞り : F10
シャッタースピード : 1/1600秒
ISO感度 : 400
露出補正 : 0
焦点距離 : 400mm
一眼レフカメラ(APS-Cサイズ)

AFフレームと測距エリア

AFを行うためには、カメラはピントを合わせる「AFフレーム(測距点)」を備えています。その数はカメラによって異なります。
また、測距エリアとは、ピントを合わせるために実際に使用するAFフレームの範囲のことで、1つのAFフレームのみを使用するものから、全てのAFフレームを使用するものまで、様々なモードがあります。

測距エリア選択モードを選ぶ

測距エリア選択モードは、大きくわけて、被写体を「点」で捉えるタイプと、「領域」で捉えるタイプがあります。「点」でピントを合わせるのはベーシックなタイプで、被写体に正確にピントを合わせるのに向いています。それに比べて「領域」でピントを合わせるタイプは、被写体の動きが速いとき、また、動きが予測できないときなどに有効です。

今回は、測距エリア選択モードのうち、特に点で捉えるタイプを中心に説明します。購入時には「1点AF」に設定されていますが、撮影シーンによって「スポット1点AF」「領域拡大AF(任意選択 上下左右)」「領域拡大AF(任意選択 周囲)」を使い分けると便利です。

測距エリア選択モード一覧

測距エリア選択モード 点/領域 説明
スポット1点AF AFフレームよりもさらに狭い範囲の任意の1点でピントを合わせます。檻や柵の中の被写体や、枝の奥にいる被写体など、周囲に被写体を邪魔するものがある場合に有効です。
1点AF 任意に選択したAFフレーム1点を使ってピントを合わせます。檻や柵の中の被写体や、枝の奥にいる被写体など、周囲に被写体を邪魔するものがある場合に有効です。
領域拡大AF 任意に選択した1点を中心に、隣接する上下左右4点のAFフレームがサポートしてピントを合わせます。小さく、激しく動く被写体に有効です。
領域拡大AF 任意に選択した1点と、周囲8点のAFフレームがサポートしてピントを合わせます。激しく動く被写体に有効です。
ゾーンAF 領域 AF領域を9つの測距ゾーンに分け、その中の任意のゾーンの範囲でピントを合わせます。構図を意識しつつ、動きの速い鳥を撮るときに有効です。
ラージゾーンAF 領域 AF領域を左・中・右の3つに分け、その中の任意のゾーンの範囲でピントを合わせるタイプです。ゾーンAFでもうまく追えない、動きの激しい鳥を撮るのに有効です。
自動選択AF 領域全体 すべてのAFフレーム(AF領域全体)でピントを合わせるタイプです。鳥の動きがとても激しいとき、また、予測が難しいときに有効です。機種によってフレーム(点)の数は異なります。

※選択できるモードはカメラによって違いがあります。また、使用するレンズによりAFフレームの数などが異なります。

スポット1点AF

点/領域:点

AFフレームよりもさらに狭い範囲の任意の1点でピントを合わせます。檻や柵の中の被写体や、枝の奥にいる被写体など、周囲に被写体を邪魔するものがある場合に有効です。

1点AF

点/領域:点

任意に選択したAFフレーム1点を使ってピントを合わせます。檻や柵の中の被写体や、枝の奥にいる被写体など、周囲に被写体を邪魔するものがある場合に有効です。

領域拡大AF

点/領域:点

任意に選択した1点を中心に、隣接する上下左右4点のAFフレームがサポートしてピントを合わせます。小さく、激しく動く被写体に有効です。

領域拡大AF

点/領域:点

任意に選択した1点と、周囲8点のAFフレームがサポートしてピントを合わせます。激しく動く被写体に有効です。

ゾーンAF

点/領域:領域

AF領域を9つの測距ゾーンに分け、その中の任意のゾーンの範囲でピントを合わせます。構図を意識しつつ、動きの速い鳥を撮るときに有効です。

ラージゾーンAF

点/領域:領域

AF領域を左・中・右の3つに分け、その中の任意のゾーンの範囲でピントを合わせるタイプです。ゾーンAFでもうまく追えない、動きの激しい鳥を撮るのに有効です。

自動選択AF

点/領域:領域全体

すべてのAFフレーム(AF領域全体)でピントを合わせるタイプです。鳥の動きがとても激しいとき、また、予測が難しいときに有効です。機種によってフレーム(点)の数は異なります。

※選択できるモードはカメラによって違いがあります。また、使用するレンズによりAFフレームの数などが異なります。

設定方法

1

背面のAFフレーム選択ボタンまたは測距エリア選択モード切替ボタンを押します。上面の測距エリア選択モード切替ボタンを繰り返し押すことで、測距エリアを切り替えられます。

ファインダー内
2

AFフレームや測距エリアは上面と背面のダイヤルで選択します。

ファインダー内
3

シャッターボタンを半押しして決定します。


スポット1点AF (任意選択)

エゾフクロウをアップではなく、こぶしの花を画面に入れた風景的な構図にしたかった。しかしそうするとエゾフクロウが小さくなり周りの枝が邪魔になるため、スポット1点でピントを合わせた(ワンショットAFモード)。

絞り : F5
シャッタースピード : 1/2500秒
ISO感度 : 200
露出補正:-0.3焦点距離 : 100mm
一眼レフカメラ(APS-Cサイズ)

森の中のエゾフクロウ

領域拡大AF上下左右(任意選択)

茂みの中を出たり入ったりするクイナ(AIサーボAFモード)。採餌しながらの移動は速度もまちまち。1点ではピントが外れやすくなるが、「領域拡大AF(任意選択上下左右)」にすることで周囲のAFフレームがアシストをしてくれるため、ピントが外れにくくなった。逆に、領域で捉えるAFエリアだと周囲の枝が邪魔になり、ピントを合わせにくくなる。

絞り : F5.6
シャッタースピード : 1/800秒
ISO感度 : 400
露出補正:-0.7
焦点距離 : 500mm
一眼レフカメラ(APS-Cサイズ)

茂みの中のクイナ

領域拡大AF周囲(任意選択)

採餌しながら走ったり止まったりをくり返すムナグロ(AIサーボAFモード)。「領域拡大AF(任意選択 上下左右)」でもフレームに収めるのがむずかしい。こういう場合には、アシストポイントがより広くなる「領域拡大AF(任意選択 周囲)」が向いている。

絞り : F5.6
シャッタースピード : 1/2000秒
ISO感度 : 400
露出補正:0
焦点距離 : 700mm相当(500mmにx1.4テレコンバータを使用)
一眼レフカメラ(APS-Cサイズ)

採餌するムナグロ

実際に撮ってみました

奥のほうにいるコサギを撮影しようとしたところ、手前の草しか映っていませんでした。戸塚先生に教えてもらい、測距エリアを「1点AF」に変更して再挑戦。邪魔なものに囲まれた対象にピントを合わすのは大変なことだと思っていましたが、「1点AF」に設定するだけで、目標のコサギがきちんと捉えられていて驚きました。

撮影時の設定

AF動作:ワンショットAF
測距エリア:自動選択AF

コサギ(生徒撮影)(失敗)

絞り : F6.3
シャッタースピード : 1/320秒
ISO感度 : 160
露出補正:0
焦点距離 : 350mm
一眼レフカメラ(APS-Cサイズ)

撮影時の設定

AF動作:ワンショットAF
測距エリア:自動選択AF

コサギ(生徒撮影)

絞り : F5.6
シャッタースピード : 1/250秒
ISO感度 : 160
露出補正:0
焦点距離 : 350mm
一眼レフカメラ(APS-Cサイズ)

戸塚先生のコメント

最初の写真では、測距エリアが「自動選択」になっているため、手前の葦にピントが来てしまいコサギにピントが来てないのが残念。測距エリアを「1点AF」にすると、手前の草にピントをとられず、奥の葦にもピントが抜けることなく、コサギにしっかりとピントが来ていますね。

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