野鳥の撮りかた25

動物優先の瞳AFを活用する

野鳥撮影で一番難しいのは、小さい鳥にピントを合わせることです。最近では、事前に必要な設定をすれば、レンズを向けただけで鳥の目に自動的にピントを合わせて、追い続けてくれる機能がでてきています。

ハチクマ

AF-ONボタンを押すと「瞳AF」でピントを合わせてくれるが、鳥が飛翔している場合にはコツがいる。障害物のない空でピントを合わせるといい。

絞り : F11
シャッタースピード : 1/4000秒
ISO感度 : 2500
焦点距離:800mm
一眼レフカメラ(フルサイズ)
動物優先

「動物優先」「瞳AF」で熟練の技

野鳥撮影はどのジャンルより難しいと言っていいでしょう。理由は、被写体が小さくてよく動く上に、近づけない場合が多いため、被写界深度が浅くなる超望遠レンズではピント合わせが難しいからです。しかし近年、カメラのAF(オートフォーカス)機能の進化には目を見張るものがあり、最新のミラーレスカメラは、事前に必要な設定をすることにより、技術的に熟練が必要な部分をカメラが担ってくれるようになってきました。
※ファインダー内イメージはわかりやすくするため、モノトーンで表現しています。


「動物優先」+「顔+追従優先AF」=「瞳AF」で鳥の目を追い続ける

キヤノンの代表的なミラーレスカメラを例にとって説明すると、AF動作を「SERVO AF」、AF方式を「顔+追尾優先AF」、検出する被写体を「動物優先」、瞳検出を「する」に、そしてコンティニュアスAFを「しない」に設定します。
鳥の大きさやシチュエーションにもよりますが、シャッターボタンを半押し、もしくはAF-ONボタンを親指で押すことで鳥の目にピントを合わせ、カメラが目を認識すると、カメラを動かしてもフレーム内で目を捉え続けてくれます。

AF動作設定は「SERVO」を選択
AF方式は「顔+追尾優先AF」を選択
検出する被写体を「動物優先」に設定
瞳検出を「する」に設定

構図を優先した撮影がしやすくなる

これまでの構図を優先した撮影では、AFの測距点を1点もしくはその周囲でピントを合わせる設定にして、測距点をフレーム内で移動させるか、中央でピント合わせをしたのち、AFロックをさせて構図を作ることで対応してきました。「瞳AF」機能のあるミラーレスカメラでは、SERVO AFを組み合わせることにより、動く鳥の目にピントを合わせ続けてくれます。そのため、撮影者は「構図優先の撮影」が格段にしやすくなります。つまり、鳥の目にちゃんとピントを合わせなければ!という心配から解放され、構図の決定に集中することができます。

目にピントが合ったことを確認して、構図を決める

秋になると、渡り途中の小鳥たちが近所の公園にやってくる。この時は桜の木がお気に入りだったようで、よくとまってはフライングキャッチで虫を捕えていた。色づいた葉のある場所にとまった時にAF-ONボタンを押すと、カメラがコサメビタキの目に素早くピントを合わせてくれた。そのままカメラを動かしてもピントは目に合ったままなので、構図を優先した撮影ができた。

絞り : F8
シャッタースピード : 1/1600秒
ISO感度 : 500
焦点距離 : 500mm
ミラーレスカメラ(フルサイズ)
動物優先

ファインダー内
コサメビタキ

ルリビタキがお気に入りの枝がある。しばらく待っていると、とまってくれた。「瞳AF」は、フレームの中で測距点をピコピコさせながらルリビタキの身体を捉え、素早く目にピントを合わせた。ピントはルリビタキの目に食いついて離さない。そっとカメラを振って構図を決めて撮影。

絞り : F7.1
シャッタースピード : 1/1000秒
ISO感度 : 1600
焦点距離 : 500mm
ミラーレスカメラ(フルサイズ)
動物優先

ファインダー内
ルリビタキ

シチュエーション次第で注意も必要

「動物優先」「瞳AF」は、被写体がある程度近く、周りに障害物がなく、鳥の目が認識できる場合はとても有効です。しかし、野鳥は天敵から身を守るため、草や木の枝の中にかくれている場合もあります。被写体がとまっている、または動きの少ない場合は、フレームの中で1点もしくはその周囲でピントを合わせて撮影するといいでしょう。

木の間にいる鳥はスポットAFで狙う

木の枝にとまり、まったりと羽繕いをするカンムリワシ。「瞳AF」では周囲の花や葉にピントが合ってしまう可能性があったので、カンムリワシの顔から測距点が外れにくいスポット1点AFで狙ってみた。

絞り : F10
シャッタースピード : 1/1000秒
ISO感度 : 2500
焦点距離 : 700mm
ミラーレスカメラ(フルサイズ)
動物優先 スポット1点AF

ファインダー内
カンムリワシ

飛翔の場合は面で捉えて、予測不能な状態に対応

ノスリが町並みをバックに飛ぶ。従来このようなシーンでは背景のものにピントを持っていかれたが、一気に改善された。はじめに障害物のない空で鳥にピントを合わせれば、高確率でピントを外すことなく被写体を追い続ける。小さければ身体、大きければ動いていても目にピントを合わせ続けてくれる。あとはフレームから鳥を外さなければ、ほぼピントを合わせ続けられるため、理想的な背景で撮影することができた。

絞り : F11
シャッタースピード : 1/2000秒
ISO感度 : 500
焦点距離 : 600mm
ミラーレスカメラ(フルサイズ)
動物優先

ファインダー内
ノスリ

戸塚先生コラム

露出のシミュレーションで失敗なし

一眼レフカメラとミラーレスカメラの大きな違いはミラーがないことです。ミラーレスカメラは、ファインダーや背面モニターに反映される画像を実際の露出に近い明るさで確認できる機能があり、ほとんどのミラーレスカメラはこの機能がデフォルトでONになっています。一眼レフカメラの場合、写真の明るさは撮影後に確認して露出の調整をしてきました。そのため、失敗がないようにあらかじめテストをするなど、ある程度の熟練度と準備が必要でした。ミラーレスカメラの露出のシミュレーション機能はファインダーで見えた明るさがそのまま結果に反映されるため、撮影時にファインダーを見ながら適正露出を決めることができます。

ファインダー内イメージ
この写真では背景の暗さに反応して、セイタカシギは白トビしがちですが、ファインダーを見ながら自分の目で確認して調整することで、思い通りの撮影ができた。
セイタカシギ

絞り : F14
シャッタースピード : 1/800秒
ISO感度 : 400
焦点距離 : 1000mm
ミラーレスカメラ(フルサイズ)
動物優先 スポット1点AF

野鳥の撮りかた