子どもの運動会、草むらで走り回る犬、おもちゃにじゃれつく猫……きれいに撮れたと思ったのに、写真を見てみたらピンボケだった。そうした経験はありませんか?
そして、どうしてうまく撮れないんだろう、もっと練習が必要なのかな、と肩を落としたことはないでしょうか。
ところが最近では、こうしたシチュエーションでも間違いのない、ベストな一枚を撮ることは、そう難しいことではありません。今のデジタルカメラには撮影したい相手に自動的にピントを合わせるだけでなく、すばやく動く相手でもピントが合い続ける機能が搭載されるようになってきているからです。
最高難度の被写体…「鳥」のオートフォーカスに挑む
キヤノンのカメラはこれまでも人を検出し、ピントを合わせるオートフォーカス機能を搭載してきました。
“もっと機能を進化させて、もっとイメージ通りの写真を撮ってもらいたい”
そんな想いを込めて決めた次のターゲットは、犬、猫、そして、鳥でした。しかも、鳥の姿をとらえるだけでなく、その小さな目にピントを合わせ続けるオートフォーカスをめざしました。
目にピントを合わせ続ける、そのためにはまず、相手が犬、猫、鳥とカメラが認識する必要があります。
その中でも、鳥は人や犬、猫と比べてはるかに検出が難しい被写体です。まず、圧倒的に種類が多いこと。そして、その姿かたちの変化が大きいからです。
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例えば、白鳥のように首の長い大きな鳥もいれば、フラミンゴのように足も長い鳥もいますし、極端に尾が長い、クチバシが大きい鳥もいます。そして、木に止まっている姿、飛び立とうとしている姿、羽ばたいている姿、翼を広げた姿では、そのフォルムはまったく違います。
そうした難しい相手を検出するためには、さまざまなデータと検証が求められました。
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あらゆる鳥の、あらゆる姿を収集
鳥を鳥として認識させる、しかも高い精度で検出する第一歩として行なったのは、あらゆる鳥の写真を集めることでした。
鳥の図鑑に載っているさまざまな種類の鳥を調べ、静止している姿だけでなく、飛ぶ姿、翼を広げた姿など、あらゆる鳥の姿を集めました。そうした膨大なデータをAIに学習(ディープラーニング)させ、一方で「これは鳥ではない」という写真も覚えさせ、いま撮影しようとしている相手が鳥である、ということを認識させるのです。
どこまでを鳥と認識し、どこからは鳥ではないと認識させるのか。そのさじ加減も難題です。
認識範囲をあまりに厳しくすると鳥に近い姿であっても鳥と認識せず、逆にあいまいにすると人が手のひらを広げただけでも鳥と認識してしまいます。
開発中は、花を鳥と認識する、看板の文字を鳥と認識する、水面に写りこむ水鳥まで鳥として認識したといったことも日常茶飯事。この調整はもっとも頭を悩ませました。
ときには猛禽類(タカ、ワシ、フクロウなど)のリアルなぬいぐるみや剥製を台車やレールに載せて走らせ検証することもありました。
人間の認識とAIの認識によって生じる、こうした誤認識をひとつずつ修正していくことで、シャッターチャンスを逃さない、確かな品質に磨き上げていきました。
しかし、開発はこれで終わりではありません。オートフォーカスの品質をより確かなものにするための検証は、むしろそれからが本番でした。
オートフォーカスの品質をより高めるために
鳥を鳥と認識し、その目にフォーカスを合わせ続ける。その精度と品質を確かなものとするために品質評価部門が行ったのは、ただひたすらにリアルな鳥を撮影することでした。あらゆる場所の、あらゆる鳥の動き、そしてその目を正確にとらえることができるのか。
メインのテスト撮影場所として選んだのは、静岡県の「掛川花鳥園」でした。ツルや白鳥、ペンギン、クジャクといった多種多様な姿かたちの鳥類に加えて、掛川花鳥園のスタッフが自由自在に飛ばす雄々しいタカやフクロウ。それは野鳥撮影の検証にはもってこいの環境でした。
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しかし、鳥が相手の検証は一筋縄では行きませんでした。
まず、フレームにとらえ続けること自体が難しく、カメラを扱い慣れた品質評価部門のメンバーでも野鳥撮影技術の習熟に時間を要しました。
鳥も常に撮影しやすい位置にいてくれるとは限りません。カラスに気を取られて森に遊びに行ってしまった……逆におなかがいっぱいでタカが飛んでくれないことも……。一日わずか15分しか撮影ができなくて帰る、そんな日もありました。
数台のカメラに望遠レンズという重い機材を担いで掛川花鳥園に通うこと数ヵ月。あらゆる鳥の、あらゆる姿を、あらゆる角度でとらえた写真は数万もの数になりました。
その多様な鳥たちの姿は、ときに開発メンバーが頭を抱えるほど検出が難しいものもありましたが、難易度の高い写真が多く得られたことで、オートフォーカスの品質、そして写真の質はより一層高まることになりました。
この高度なオートフォーカス機能は、もちろん動画撮影でもその高性能ぶりを発揮します。撮影者は安心してフレームの中に鳥をとらえ続けることだけに集中できます。
リアルでシビアな環境で何度も検証を繰り返し、お客さまに納得いただける品質に磨き上げる。
そこには“難しい撮影相手でも、最高の一枚、最高の映像を届けたい”という、キヤノンの想いが込められています。
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