見たこともない風景や情景を切り取りたい、旅先で出会った多くの発見や感動をそのまま記録に残したい...。フォトグラファーは、魅力的な被写体を最高の写真や映像にするために、あわせればかなりの重さとなるいくつもの交換レンズを準備し、背負って歩き回ります。
ミラーレスカメラの登場によって、カメラボディーは一眼レフカメラとくらべて小さく、軽くできるようになりました。では、交換レンズはどうなのでしょうか。フォトグラファーが最も大切にする画質には妥協することなく、ミラーレスカメラだからこそ実現できる、より小さく、より軽い交換レンズが、いま続々と誕生しています。
画質を犠牲にすることなく、小型化を実現
一眼レフカメラは、ミラーを配置する必要があるため、交換レンズとイメージセンサーの間の距離(バックフォーカス)を長くとらなければなりません。そうなると設計上、イメージセンサー側のレンズを大きくできず、その分、被写体側のレンズを大きくする必要があります。
ミラーレスカメラ専用の交換レンズでは、ミラーのないショートバックフォーカスの構造上の特長により、一眼レフカメラの交換レンズでは被写体側に置いていたレンズ群をイメージセンサー側に配置することができます。さらに、キヤノンのRFレンズは、一眼レフカメラ並みの54mmの大口径レンズマウントを採用しているため、たとえば35mmの単焦点レンズでは、一眼レフ用のEFレンズでは被写体側にあった3枚の大型レンズを反転して、イメージセンサー側への配置が可能に。その結果、被写体側のレンズの大型化が回避され、交換レンズ自体をコンパクトに設計できるようになりました。EF35mm F1.4 L II USMとRF35mm F1.4 L VCMとの比較では、体積で約15%減の小型化を実現しています。

徹底的なシミュレーションで、高品質のまま小型・軽量化を実現
寸分の狂いもなく光をセンサーに集める必要がある交換レンズは、設計や材料を少し変えるだけですぐに性能に影響がでるほど繊細な精密機器です。
画質、強度、カメラとの組み合わせによる重量バランスなど...。旧来の製品開発では、これら複雑に絡み合う要素の検証のために、いくつもの「試作機」を実際につくって、くり返し実験や確認を行っていました。しかし、キヤノンでは、自社開発の光学設計ツールによるレンズ設計で画質の向上を追求しながら、バーチャル環境で品質や性能を精緻に予測できるシミュレーション技術も独自に確立。試作機では何度も実験できない条件でも評価・検証を納得いくまでできるようになり、より安心して使える高い品質でつくり込むことを可能にしました。
軽量化のために部品一つひとつの素材を見直す取り組みでも、シミュレーションを駆使して高い性能を維持したままで部品の置き換えを実現。RF35mm F1.4L VCMでは、小型化とのシナジーでEF35mm F1.4L II USMと比べて約27%の軽量化を達成しています。


また、交換レンズの生産では、自動組立を積極的に取り入れ、安定した高品質を達成。高精度の組立を正確に、素早く行う生産技術の進化も品質向上に大きく貢献しています。
蓄積されてきた技術により弱点を解消
RFレンズが採用するショートバックフォーカスは良いことづくめに見えますが、構造的にイメージセンサーとレンズが近い位置にあるため、「ゴースト※1」という悪影響の現象が出やすいという弱点がありました。

- ※1 レンズ内に強い光が入るとレンズ内の光が反射し、円形の光が映り込む現象

この問題を解決したのが、一眼レフカメラの時代からキヤノンが育んできた品質の高いレンズコーティング技術です。キヤノンでは、SWC※2やASC※3と呼ぶ独自の技術を長い年月をかけ、熟成させてきました。ナノサイズのくさび状の構造物をレンズ表面に無数に形成する生産方法を確立するなど、地道な努力の蓄積によって、光の反射の精密な制御を実現。RFレンズでは、これらを必要に応じて使い分けて、ゴーストを解消し、ショートバックフォーカスの長所を十二分に味わえる高画質の交換レンズとして進化をもたらしています。
フォトグラファーが快適で、より魅力的な写真撮影ができるように、高画質でありながら、より小さく、より軽いレンズをキヤノンは追求し続けていきます。

優れた効果を発揮

空気とレンズの屈折率差を小さくし、反射を抑制
- ※2 SWC:Subwavelength Structure Coating。レンズの表面に可視光の波長よりも小さいくさび状の構造物を無数に並べることで、光を制御する反射防止技術
- ※3 ASC:Air Sphere Coating。空気を一定の割合で含ませるコーティングにより、特に垂直に近い角度で入射する光に対してフレアやゴーストの発生を抑制する反射防止技術
本記事の公開日:2025年3月26日
RFレンズの高画質化については、こちらのコンテンツをご覧ください
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