8K動画、最先端AF、8.0段手ブレ補正。かつてない映像表現を可能に
第二世代 EOS Rシステム
進化を続けるキヤノンのフルサイズミラーレスカメラ。2020年発売の「EOS R5」は、さらなる撮影領域の拡大を実現し、プロやハイアマチュアを中心に高い評価を得ています。大きなスペックアップには長い時間を要するカメラ開発。時代を先取りするカメラが誕生するまでには、ブレークスルーの積み上げがありました。
2020/12/10
数年前から、現在・未来の映像ニーズの変化を予測し誕生した「EOS R5」
風景写真なら高解像モデル、スポーツ撮影なら高速連写モデル、映像制作ならシネマカメラ。これまでは被写体や用途によってカメラを選ぶことが、プロやハイアマチュアの常識となっていました。一台で風景もスポーツも映像制作もすべてこなせるカメラはいわば撮影者の悲願の1つでした。
2020年7月にキヤノンが発売したフルサイズミラーレスの第二世代にあたる「EOS R5」は、その想いを現実にしたオールラウンダーなカメラです。約4500万画素※1の高画素、8K動画撮影にも対応し、高速で高精度なオートフォーカス(AF)、最大8.0段※2のボディ内手ブレ補正、高速連写を実現しました。カメラ開発には、光学、電子、メカの高度な技術融合が要求され、大きなスペックアップには長い時間がかかります。数年前から、現在そして未来の映像ニーズがどのように変化しているかを予測し、それを実現するための技術とブレークスルーを積み上げ、「EOS R5」は誕生しました。
「EOS R5」
(左はバッテリーグリップ「BG-R10」装着時)
「動画」の最先端を提供する。
「5」の開発精神を継承して8K動画を実現
レンズ交換式カメラとして世界初の8K動画撮影機能を搭載した「EOS R5」。8Kの視聴環境が一般にはまだ整っていない状況の中、「なぜ今、8Kなのか?」。その背景には、キヤノンの技術者の強い想いがありました。
キヤノンは2008年発売の「EOS 5D Mark II」に一眼レフカメラとして世界で初めてフルHD動画撮影機能を搭載しました。当時は、フルHD対応ディスプレイが普及しておらず、「オーバースペック」という意見が一般的でした。しかし発売後、シネマカメラで使用されているセンサーよりも大きい35mmフルサイズCMOSセンサーならではの浅い被写界深度を生かした映像表現や優れた高感度画質がハリウッドの映像クリエイターの目に留まり、それを機に一眼動画ブームともいえるトレンドが生まれました。
「まずは撮れるという可能性を持ったカメラ。そこからイメージングの未来は生まれる」。この開発精神は、同じ「5」の名を刻む「EOS R5」にも受け継がれています。8K動画が撮れるのか、撮れないかではイメージングの進化の可能性は大きく異なります。「『EOS R5』は、キヤノンが持てる最先端の技術を使い撮影者の表現の可能性を大きく高めるカメラにしたかった」。「EOS R5」にはこのような技術者の想いが込められています。
8K動画撮影を支える10年以上の経験
キヤノンでは8K動画カメラの開発を10年以上続けてきており、すでにキヤノンの8Kカメラは、映像制作の現場や学術研究、貴重な文化財や自然遺産の映像記録など、さまざまな分野で活用されています。 8K動画は、フルHD動画の16倍もの情報量を持つ超高精細な映像です。「EOS R5」が対応する8K DCI 30pという撮影は、約3500万画素の写真を1秒間に30コマ処理するのと同等の非常に重いデータ処理が必要となります。高精細かつ高速読み出しが可能な約4500万画素の新型CMOSセンサーや新世代エンジンDIGIC Xの開発と相まって、CFexpressカードへの書き込みスピードなど8K撮影ならではの課題に対しても、再生環境を含めて映像制作の現場で培ってきた経験を生かし、8K動画記録が実現しました。
EOS R5に搭載されている映像エンジン「DIGIC X」
約4500万画素の新型CMOSセンサー
鳥の眼も認識。ディープラーニングで進化した最新AF
「EOS R5」ではAF技術も大きな進化を遂げています。撮影者の心を読むかのように、狙いたい部分に正確にピント合わせをする。そのため「EOS R5」では、ディープラーニング技術をアルゴリズムに組み込んだ被写体認識に、より磨きをかけました。
最高約20コマ/秒の高速連写で被写体に追随するために、「EOS R5」に搭載された被写体認識機能「EOS iTR AF X(Intelligent tracking and recognition)」ではディープラーニングによって人の頭部、動物(犬、猫、鳥)の瞳、顔、全身を認識できるようにしました。ディープラーニングで精度の高い被写体認識を実現するためには、膨大な数の学習用教師画像が必要です。人の頭部検出では、複雑な動きをするスポーツ選手を確実に追尾できるよう、多くのスポーツシーンを教師画像に用いています。また、鳥は種類が多く、同じ種でも羽を閉じた状態、広げた状態で形状が大きく変化するため犬や猫にくらべて認識の難易度が飛躍的に高まります。技術者自ら教師用の画像収集や、実際に野鳥を撮影して認識性能の検証を行うなど地道な改善を続け、高い被写体認識精度を実現しています。
もしこれらの被写体認識を、開発者がルールを抽出してアルゴリズム化する従来の開発手法で行えば、何倍もの開発期間がかかり、「EOS R5」への搭載は間に合わなかったことでしょう。「EOS R5」では最新のディープラーニング技術を活用し、開発効率の向上とAF精度の大幅な向上を実現しています。
認識の難易度が高い「鳥」の眼まで高精度に検出
人物の瞳・顔・頭部検出に対応。さらに犬、猫、鳥の瞳・顔・全身検出に対応
手持ちで夜景や滝の撮影を実現。
手持ち撮影の常識を覆す、最大8.0段ボディ内手ブレ補正
手ブレ補正技術は今やスマートフォンのカメラにも搭載され、写真撮影に欠かせない機能の1つです。
キヤノンではこれまで、強みである光学技術を活かしレンズに補正光学系を入れることでブレを抑制していました。「EOS R5」から始まった第二世代EOS RシステムではEOSとして初めて撮像センサーをシフトさせることでブレを抑制するボディ内手ブレ補正機構を搭載。世界最高※3スペック、シャッタースピード最大8.0段の手ブレ補正を実現しました。8.0段の補正というのは、露光時間を256倍長くしてもブレを抑制できることを意味します。夜景の撮影をはじめ、滝や川の流れをスローシャッターでぶらす表現なども三脚なしで撮影することを可能にしました。
手ブレ補正(IS)機能ON(右上)とOFF(右下)の比較
この最大8.0段補正を実現するためにキヤノンでは、高精度なジャイロセンサーを搭載したほか、フルサイズセンサーを正確に動かすセンサーシフトユニット、ボディ/レンズからのセンサー情報をリアルタイムに演算するためのエンジンやアルゴリズムなど、すべてを刷新しました。
最大8.0段の補正効果を活かした撮影条件においては、地球の自転によるわずかな動きであっても、“地球のブレ”として画像に現れてしまいます。高精度ならではの課題に対して、キヤノンはセンサーが検知した“地球のブレ”をアルゴリズムで適切に補正。地球上のどこにいても、自転による影響を検知・排除して、超高精度の手ブレ補正を行えます。
8.0段という精度は、ただ高性能なデバイスを組み込めばできるというものではありません。開発部門だけでなく、品質評価・量産工程においても、長年カメラづくりで培ってきたノウハウを生かすことで品質を高め、製品レベルでの高精度を実現しています。
第二世代 EOS Rシステムの進化は、
映像表現をさらに進化させる
「EOS R5」には、最高約20コマ/秒の高速連写や横最大約100%×縦最大約100%の領域でAFを実現するデュアルピクセルCMOS AF IIなど多くの先進技術が盛り込まれ、どのようなシーンにおいても快適な撮影体験を提供します。これまで撮れなかったものが撮れるカメラをつくる。撮れることでイメージングの未来は広がっていきます。キヤノンではこれからもEOS Rシステムの技術向上を図り、撮影者の表現領域拡大をサポートし続けます。