テクノロジー

X線アンギオグラフィ X線アンギオグラフィ

リアルタイムで血管を透視し、カテーテル治療をサポート

X線アンギオグラフィ

心臓や脳をはじめとした、全身の血管の疾患治療を、カテーテルという細い管を血管内に挿入して行う「カテーテル治療」。この治療に不可欠なのが、血管をリアルタイムで透視する「X線アンギオグラフィ」です。キヤノンは、これまでにない高精細画質と操作性で、患者さんの負担を大幅に削減しました。

2020/10/29

#メディカル#オープンイノベーション

血管内をリアルタイムで透視。
カテーテル治療をサポートするX線アンギオグラフィ

生活習慣の変化や高齢化によって、心筋梗塞や脳動脈瘤など血管の病気がますます増えている中で、患者さんにとって大きな負担となる開胸や開頭といった大掛かりな外科手術が必要なく、入院日数も大幅に短縮化できる治療法として、カテーテル治療の普及が進んでいます。

このカテーテル治療に欠かせないのが、X線アンギオグラフィです。患者さんの血管内に造影剤を入れると、血管の状況をリアルタイムに、モノクロの濃淡で映し出すことができます。もともと診断のための検査を目的に開発されましたが、いまや治療を支える装置として重要な役割を果たしています。さらに、一刻を争う救急現場では、診断から治療までを一貫して迅速に行えるX線アンギオグラフィが、ますます活躍の場を広げています。

また、カテーテル治療では、心筋梗塞や脳動脈瘤のほか、足の静脈瘤や動脈硬化の治療、腫瘍に栄養が届かないように血管を閉塞する治療なども行われています。

X線アンギオグラフィのしくみ

① X線管から、X線が発せられる
② 照射するX線を適切な範囲に絞る
③ 患者さんを透過したX線を検出器でとらえる
④ 検出データを演算処理やノイズ低減処理して映像化
⑤ モニターにリアルタイムで映し出す

X線アンギオグラフィのしくみ

高画質の追求で多様な治療ニーズに応える

X線アンギオグラフィには、医師の眼として、撮影した映像を、リアルタイムに、そして高画質でモニターに表示することが求められています。キヤノンの最新のシステムでは、X線検出器のダイナミックレンジ(最も明るい部分と最も暗い部分の、明るさの幅)が従来のシステムに比べて16倍拡張しています。これまで12ビットで行っていた画像処理を16ビットにすることにより、さらに深い濃度分解能をもつ画像提供が可能に。モノクロの濃淡の階調がより精密に表現できるようになり、今までは映し出すことができなかった微細な血管や組織まで描出できるようになりました。

一般に、処理する情報量が増えると、ノイズも多く発生するというトレードオフの関係があります。キヤノンは、X線の発生からモニター表示までの一連の流れを一新。独自の新ノイズ低減処理、強調処理、高速演算処理などにより、画像の最適化を実現して、トレードオフの関係を解消しました。

また、診療科によって求められる画質は全く違うため、キヤノンでは、臨床検査技師の資格などをもつアプリケーションスペシャリストが、世界中の医療現場から現場の声を開発現場に持ち帰り、治療に最適な画質の実現に努めています。

脳の中の繊細な血管にも対応する、世界初の高精細検出器を開発

X線アンギオグラフィは、脳から足までと対応範囲が幅広く、治療法や治療部位によって求められる画質は異なります。

特に脳は、細かな血管が神経の隙間をぬって複雑に入り組んでいるため、治療現場では、より高解像度のX線検出器を求める声が多くありました。キヤノンは、脳外科の権威であるニューヨーク州立大学バッファロー校の医師らとの共同研究を推進。従来の標準的な検出器と比べ半分以下の画素サイズ76μmを実現する高精細X線検出器「Hi-Def Detector」の開発に成功しました。X線アンギオグラフィの検出器としては、世界最小(2020年9月現在)の画素サイズです。

高精細な検出器が威力を発揮する一例として、脳動脈瘤コイル塞栓術治療が挙げられます。これは、脳動脈瘤の中にコイルをつめることで、瘤内の血液を固めて破裂を防ぐという治療法です。この治療法は、外科治療に比べて体の負担が少ない一方、コイルの充填が不十分だった場合は、再発するリスクもありますが、キヤノンの高精細X線検出器を使用することで、コイルが充填される様子を黒つぶれすることなく映し出すことができ、「コイルの動きが過去経験したことがないほど良く観察できる」と医療現場から高い評価を得ています。

従来検出器(左、デジタルズーム)と高精細検出器(右、高精細モード)の比較

安全・安定・低振動、高速動作で治療時間を短縮

X線アンギオグラフィは、手術室や救命救急の現場で使用されるため、人や他の検査機器とぶつからない安全性と、命を救うために一刻も早く正確な位置にX線検出器を移動させる高速性が求められます。

安全性という面では、X線アンギオグラフィのアームは先端に重量のあるX線管やX線検出器がついているためバランスが悪く、もし患者さんに接触すれば、重大な事故につながりかねません。さらに、周囲に検査機器や医療機器が設置されているので、それらに接触すれば治療が中断してしまいます。

キヤノンでは、物体接触を防止する安全機構や、限られたスペースで駆動できるコンパクトな装置設計など、さまざまな技術をバランスよく組み合わせて、優れた操作性を実現しています。

高速性という面では、撮影したい位置や角度にアームが素早く移動し、瞬時に停止することも、治療時間の短縮には欠かせません。アームを回転させながら撮影する3D撮影では、回転スピードが撮影時間に影響しますが、高速に動かせば振動が大きくなり、良質な3D画像を得ることができません。振動を抑えながら高速化を実現するためには、難易度の高いロボット技術が要求されます。キヤノンでは、振動の抑制や駆動ソフトウェアの独自開発などにより、高速化と安定性の両立に成功しました。

3D撮影では、アームを回転させながら撮影したデータを活用し、血管の3Dデータを構築します

3D撮影では、アームを回転させながら撮影したデータを活用し、血管の3Dデータを構築します

被ばく線量を可視化し、患者さんと医療従事者の安全を追求

X線アンギオグラフィにおいて、キヤノンが追求し続けているのが被ばく低減のための技術です。カテーテル治療が長時間になれば、患者さんの被ばく量は必然的に増えてしまいます。

キヤノンは、目に見えないX線を可視化することで被ばく低減を図る独自ツールの「Dose Tracking System」を開発。これは、患者さんのモデル画像にX線が照射されている場所と皮膚入射線量をリアルタイムでカラー表示することで、被ばく量を常に意識しながらカテーテル治療ができる技術です。また、X線を必要な範囲にだけ照射する独自の技術も開発し、患者さんと医療従事者双方の被ばく低減を実現しています。

線量マッピング機能 Dose Tracking System (DTS)

線量マッピング機能
Dose Tracking System (DTS)

カテーテル治療は、これまで大掛かりな外科手術が必要だった病気の治療負担を大幅に軽減し、これからもさらなる進化が予想されます。多様化するニーズに応え、健康と尊い命を守り、「Made for Life」を実現する技術を、キヤノンはこれからも磨き続けていきます。

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