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骨の変化を可視化。早期発見による患者さんの生活の質向上に貢献

がんの骨転移を見える化

患者さんの生活の質に大きくかかわるがんの骨転移。早期に発見することが難しいがんの骨転移の?見える化″に、キヤノンは貢献しています。

2020/5/28

#ヘルスケア#イメージング技術#社会貢献#情報工学

医療現場の悩み

がんは、さまざまな臓器に転移する病気です。骨への転移は、痛みなどを自覚しないとなかなか発見に至らないことが多く、脊椎など特に重要な場所への転移の発見や治療が遅れてしまうと、運動機能にも障害が起き、患者さんの生活の質の低下を招く要因になってしまう恐れがあります。

がんの骨転移を調べるには、骨シンチグラフィなどの特殊な検査を行うのが一般的です。この検査は、放射性薬剤を静脈投与し、特殊なカメラで撮影するのですが、時間、そして手間やコストなど患者さんと医師の双方に負担がかかることが課題でした。

キヤノンは、京都大学とすすめる共同研究の一つとして、がんの骨転移を早期に発見するための診断支援ソフトの開発に取り組んできました。そのきっかけは、医療現場において頻繁にコミュニケーションをとるうちに明らかになった、医師たちの悩みごとでした。そもそも骨転移の兆候を見つけるためには、現在と過去のComputed Tomography(以下、CT)の診断画像を見比べて、変化を確認する必要があります。しかし、CTは、装置の進化により描出力が向上して撮影枚数も増え、しかも撮影範囲のほとんどに骨が写っています。限られた時間内で、まず臓器などの主要部位を確認するため、どうしても骨は最後に確認することになり、なかなか確認の目がおよばないという悩みがありました。

そんな悩みを解決するために、キヤノンが注目したのは、骨の変化を可視化すること。現在のCT画像から過去のCT画像をコンピューター上で引き算してその差をとることにより、変化の見落としを防止するだけでなく、手間や時間も省くことができます。そして、なによりも骨転移を早期発見し、早期治療へとつなげることで、患者さんの生活の質を向上させることができます。

単なる位置合わせでは成しえない成果

しかし、現在と過去の画像の差分は、単純に画像同士の引き算をすればいい訳ではありません。同じ人の同じ部位を撮影したとしても、その時々で体の状態は異なり、描出される組織の形状も変わってしまいます。がん患者さんの場合は、痩せたり、呼吸がしづらくなったりするなどの体形の変化があり、また、画像は三次元のため、精緻な位置合わせの技術が必要になります。

単に位置を合わせただけでは、差分画像には、骨転移だけではなく、さまざまな変化があらわれてしまいます。例えば、撮影時の息の吸い方ひとつで差分は大きく変わってしまうのです。そこで、キヤノンは、撮影条件が異なる画像でも、骨の経時変化に特化した差分画像を生成するために、独自の工夫をこらしました。

まず、位置合わせの前に骨の領域を認識する処理を実施し、骨の変化をとらえやすくしました。最初から細かな位置を合わせようとすると安定せず、処理も遅くなります。そのため、始めに体を剛体(変形しない物体)とみなして大まかに位置合わせを行い、その後、粗く変形させてから、だんだん細かく変形させていくという画像処理を行いました。そして最後に、残りのノイズを除去する処理を組み込み、撮影条件が異なる画像間でも骨の変化だけが明確にわかる差分画像の生成を実現しました。

ONE CANONで製品化

キヤノンは、京都大学がもつ1,000例以上にもおよぶ症例を用いて、医師たちとともに検証をくり返し、がんの骨転移検索を支援する技術を完成させました。そして、2016年にグループに加わったキヤノンメディカルシステムズ(以下、キヤノンメディカル)の医用画像処理ワークステーション「Vitrea」に、アプリケーションソフトとして搭載しました。

「Vitrea」は、検査画像に対して診断に有効な解析を行うコンピューターシステムで、世界では5,000台以上が稼働中です。搭載されるソフトウエアには処理速度や精度、操作性など、さまざまな面から「質」の高さが求められます。製品化にあたり、キヤノンとキヤノンメディカルは共同でチーム体制を整え、ユーザー本位のブラッシュアップに取り組みました。骨の差分画像だけでなく体の部位を重ねて表示させることで、転移位置の認識を容易にできるように工夫。最初は首から腰の範囲で数時間かかっていた処理速度も、今では10倍以上に高速化して結果を表示できるようになりました。

オープンイノベーションでさらなる進化へ

医療の世界では、技術だけで現場の問題を解決することはできません。このがんの骨転移検索を支援する技術も、京都大学とのオープンイノベーションがなければ、実現はあり得ませんでした。現在もさらなるバージョンアップをめざし、京都大学とともに研究開発を続けています。

今後、他の臓器にもこの技術を適用できれば、患者さんと医師双方の負荷を大幅に低減させられるはずです。

キヤノンは、グループをあげてこれからも医療の進歩への貢献をめざしていきます。

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