磁場と電波で撮像する、X線被ばくのない画像診断装置
MRI装置
大きな磁石による強い「磁場」と、ラジオに使われているような「電波」 によって人体の断層画像を撮影するMRI装置。X線被ばくがなく、小児でも安心して検査を受けることができます。ドーナツ型の形状に隠された、キヤノンの画像診断技術が、疾病の早期発見に貢献しています。
目次
MRI装置のしくみ
MRI装置は、大きく分けて、強力な磁場を発生させる超電導磁石、電波を送信する高周波コイル、磁場に変化を与える傾斜磁場コイル、体内からの電波を受信する受信コイル、患者さんをドーナツ型の装置の中に運ぶ寝台の5つから構成されています。磁場と電波、そして人の体の約7割を占める水分にも含まれる「水素原子核」という物質の性質を利用して、体の縦、横、斜めなど自由に断面画像を撮像できます。
「超電導磁石」
大きな磁場を常に発生させています。この磁場を「静磁場」と呼び、発する磁場の大きさによって1.5テスラや3テスラなどにMRI装置は分類され、性能を示す指標の一つとなっています。
「高周波コイル」
体内にある水素原子核の向きを変える電波を照射しています。水素原子核の向きを変えるためには、水素原子核と同じ、高い周波数の電波を与えて、水素原子核と電波を「共鳴」させることが重要です。
「傾斜磁場コイル」
「超電導磁石」が常に発する強力な磁場に対し、撮影中にのみ磁場を発し、磁場に変化を与える役割を担います。一定の強力な磁場のもとでは、水素原子核の戻る性質の抽出がしづらいのですが、縦・横・斜めから磁場を発する「傾斜磁場コイル」によって、水素原子核の戻りの違いを発生させ、明確な位置情報をとらえることができます。
「受信コイル」
頭部用や腹部用など、撮影箇所を適切に感度よく画像化するために患者さんに装着して使う。受信コイルから得られたデータはデータ処理装置へ転送され、画像化される。
体内にある水素原子核は、普段は、それぞれさまざまな方向を向いていますが、強い磁場(静磁場)空間に入ると決まった周波数で回転しながら同じ方向を向く性質があります。そこに、水素原子核と同じ周波数の電波(ラジオの電波のようなもの)を当てると、一斉に向きを変えます(これを磁気共鳴現象といいます)。ここで電波の照射を止めると、再びバラバラに戻る性質があるため、この元に戻る時に発生するごくわずかなエネルギー量の違いをMRI装置が収集、処理し、画像化します。電波の照射を止めても、なかなか元に戻らない(動きが悪い)部分(病変)と正常に戻る部分を画像の濃淡で表すことができるため、一般的には、水分が多い脳やせき髄、胴体などの画像化が得意で、血管も簡単に撮影することができます。一方で、一般的には骨や肺など、水分が少なく、空気が多い部分の画像化には、CTなどX線を使う画像診断装置が適するとされています。
MRI装置に搭載するキヤノンの技術
静音化技術 Pianissimo™
X線被ばくがないという利点がある一方で、検査時間が長い、造影剤の投与が必要、騒音が出る、といった課題があるMRI装置。患者さんや医療従事者の負担を軽減するために、キヤノンは、より早く、確実、快適なMRI検査を行えるようにMRI装置を技術で進化させています。通常のMRI検査では、大きな騒音が生じ、患者さんに不快な思いや恐怖を感じさせることもありました。騒音は、大きな磁石の内側にある傾斜磁場コイルに電流が流れる時、フレミングの左手の法則に従って生じた力が傾斜磁場コイルを振動させ、磁石本体などにその振動が伝播することによって装置全体から発生していました。キヤノンメディカルの静音化技術「Pianissimo機構」は、音を発生させる傾斜磁場コイルを真空に封入することで当社比で音の伝播を90%カット。静かな検査により、患者さんの負担を軽減しています。
造影剤を使わずに血管撮像を可能にする技術「非造影MRA」
MRI装置を使用した造影剤を使わずに血管撮像(MR Angiography)を可能にする技術が「非造影MRA」です。血管を観察するために造影剤を用いると、得られる画像が明瞭になりますが、造影剤は吐気・気分不良、頭痛などの副作用をもたらす場合もあります。キヤノンは世界に先駆けて1990年代から非造影MRAアプリケーションを開発。2006年からは、Time−SLIP(Time−Spatial Labeling Inversion Pulse)法と呼ばれる非造影検査のしくみをMRI装置全機種に搭載して、観察したい血管だけを抽出できるようになりました。造影剤を使わない検査が可能となったことで、より多くの患者さんの画像診断が可能となりました。