テクノロジー

しくみと技術業務用ディスプレイ

映像制作のプロが求める忠実な色再現、輝度の均一性を実現

映像制作のプロフェッショナルを支える業務用ディスプレイ。映画や放送業界では、4Kおよび8K画質への移行が始まり、求められる表現力も高まっています。高解像度化だけでなく、HDRなどの新しい高輝度技術により臨場感を表現できるようになり、業務用ディスプレイも新しいステージに入っています。

2021/04/22

ディスプレイのしくみ

ディスプレイとは、コンピューターなどの入力機器から送られる静止画や動画の信号を映像として出力する装置を指します。ディスプレイにはいくつか種類があり、それぞれに特徴があります。


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業務用ディスプレイの技術

業務用ディスプレイは、一般的な民生用テレビやPCモニターとは異なり、画質や色、輝度の均一性において、高い精度が求められます。

キヤノンはデジタルシネマカメラや放送用レンズをはじめとした、業務用映像機器の高性能を余すことなく発揮させるディスプレイの高画質・高精度を実現する「高画質エンジン」、「バックライト」を独自に開発。
「High Dynamic Range (以下HDR:スタンダードダイナミックレンジより広い明るさの幅を表現できる技術)」技術などの最新技術にも対応しています。


高画質エンジン

キヤノンでは、独自技術で高精度の演算処理を可能にした画像処理エンジンにより、忠実な色再現、輝度の均一性を実現しています。



独自の画像処理エンジン

高画質・高精度を生み出す独自のエンジン

映画や放送の制作現場において最も重要な機材の一つが、制作コンテンツの画質を確認する基準器となる「リファレンスディスプレイ」です。映画や放送で定められた規格に沿った画質の基準器によって、世界中の制作現場において同じ品質で業務が行えるようになります。
高精度が求められる映像制作現場においては基準値からずれが生じないことが求められるため、忠実な色再現、正確な階調表現、高精度な均一化のフローをエンジンに組み込み、パネル、バックライトと連動し、最適な画面内補正、経年補正を高精度に実現する必要があります。
キヤノンは、リファレンスディスプレイに求められる表現力、品質、信頼性を満たした4Kおよび8K高画質ディスプレイ用の画像処理エンジンを独自に新開発し、高精度の演算処理を可能にしています。さらに、キヤノンが長年カメラで培った画作りのノウハウをアルゴリズムに組み込み、高レベルの画質を実現。品質にもこだわり、工場出荷時にも一台ずつ、高精度に調整を行うことで、「リファレンスディスプレイ」にふさわしい、忠実な色再現、高精度の均一化、長期安定性を実現しています。


バックライト技術


広色域・高輝度表示を可能としたバックライト

キヤノンの業務用ディスプレイでは、4Kおよび8K高精細・広視野角のIPS(In Plane Switching:液晶ディスプレイの一形式)液晶パネルユニットを用いて、シネマDCI規格や放送UHD規格のコンテンツの高精細・高画質表示を可能としています。
バックライトには、高純度LEDを採用して、より広い色域を実現。今までのディスプレイでは見ることのできなかった忠実で豊かな色彩を再現できるようになりました。
さらに、近年のHDRの進展にともない、キヤノンの業務用ディスプレイは、映像制作業界でいち早くHDR規格(HLG:Hybrid log gamma、PQ:ST2084)に対応。高輝度・高コントラストを実現するために、従来の標準ダイナミックレンジ(以下SDR)ディスプレイからバックライトのLED数を増やし、回路や基板などを最適化することで高輝度表示時にも輝度が安定するように設計しています。



HDR技術


HDRは、SDRより広い明るさの幅を表現できる技術のことです。キヤノン業務用ディスプレイは、独自設計のエンジン、バックライト技術による4Kおよび8K高精細、高輝度化、正確な階調表現により、従来のSDRではできなかった映像表現が可能になっています。
SDRでは白飛びしていた青空の雲のディテールが、HDRではしっかり見え、全体のコントラストも向上します。
また、HDRでは明るさ(輝度)だけでなく、表現できる色の領域(カラーボリューム)も拡大。より幅広く、自然な色を再現し、よりリアルに近い、立体感まで生み出しています。
さらにファームウェアの機能では、HDRモニタリングアシスト機能を搭載しており、HPA(※)AWARDS 2018において「ENGINEERING EXCELLENCE AWARD WINNERS」を受賞しています。輝度分布をグラフで表示するヒストグラムの表示機能や、明るさを疑似色で直感的に表示するフォルスカラー表示など、入力信号を定量的に把握できる機能を搭載していることなどがHDR制作に携わるユーザーから必須機能との高い評価を得ています。

(※)HPA:Hollywood Professional Association



カラーボリューム


キヤノンは、今後もHDR ワークフローの利便性・効率向上を積極的にサポートし、製品の高精細化・高輝度化対応をさらに推し進めていきます。

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