日常生活になくてはならない半導体をつくり出す装置
半導体露光装置
自動車やスマートフォン、家電など、私たちの生活になくてはならない機器にはたくさんの半導体が使われています。生成AI向けや自動運転向けの半導体を中心に、需要はますます増加しています。その製造に欠かせない半導体露光装置には、世界最先端の光学技術、制御技術が必要です。
目次
半導体露光装置のしくみ
半導体とは
「半導体」とは、金属など電気を良く通す「導体」とゴムやプラスチックなど電気をほとんど通さない「絶縁体」との中間の性質を持つシリコンなどに代表される物質のことです。このような半導体を材料に用いたトランジスタ※1 や集積回路※2 を「半導体」と総称しています。
- ※1 電気信号を増幅またはスイッチングする電子部品
- ※2 多数のトランジスタなどを作りこみ配線接続した回路
半導体の製造工程
半導体の製造工程は、大きく3つの工程に分けられます。
- 配線回路を設計する設計工程
- トランジスタや配線などの電子回路パターンをウエハーと呼ばれる半導体基板上に描き半導体チップを製造する前工程
- 電子回路が描かれたウエハーから1つ1つのチップに切り出して精密機器に実装するために組み立てを行う後工程
従来、半導体露光装置は前工程で使用されることが一般的でしたが、前工程の回路パターンの微細化による半導体の性能向上に限界が見えてきました。そこで、後工程でも半導体露光装置を使い、3次元集積技術と呼ばれる半導体チップを高密度に配線で接合する技術を活用し1つの大きな半導体にすることで、性能を上げる取り組みが進んでいます。
半導体露光装置のしくみ
半導体露光装置は、ウエハーに微細な回路パターンを露光する装置です。
装置の中は、露光に適した明るく均一な光を作る照明系、レチクル(原版)を置くレチクルステージ、何枚ものレンズ群からなる投影光学系、露光されるウエハーを置くウエハーステージ、ウエハーの搭載位置を計測するアライメントスコープに分けられます。
半導体露光装置でのウエハーへの露光のしくみは、まずウエハーをウエハーステージに置き、アライメントスコープでウエハーの位置を計測します。次に、回路パターンが描かれたレチクルがレチクルステージに置かれ、上から紫外(UV)光を照射すると、レチクルを通ったUV光は投影光学系を通過して、ウエハーステージの上に置かれたウエハーに、レチクルの回路パターンを焼き付けます。ウエハーにはUV光が当たると性質が変わるレジスト(樹脂)が塗ってあり、光が当たった部分には、レチクルに描かれた電子回路パターンが転写されます。
半導体露光装置の種類
一般的に半導体露光装置の種類は、使用する紫外線の種類(光源)で分けられています。光源は、i線、KrF、ArF、EUVの4種類です。加えて、ArFは、空気よりも屈折率の高い純水をレンズとウエハーの間に満たすことで線幅を細くすることのできるArF液浸があります。
一方で、キヤノンが手掛けているナノインプリント半導体製造装置※1は、従来の半導体露光装置と構造が全く違うため光源による分類はできませんが、形成できる線幅は最先端の半導体製造への適応もめざせる装置です。
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※1 回路パターンを刻み込んだマスク(型)をウエハー上に塗布されたレジストに押し当てるという
シンプルな原理で回路を形成する装置。
詳しくは ナノインプリントリソグラフィをご覧ください。 - ※2 nm ナノメートル、10億分の1メートル
- ※3 X線の中でも波長が長い光
半導体露光装置の3大性能
半導体露光装置は、次の3つの性能が重要視されます。
1.解像力
どれだけ微細な回路パターンをウエハー上に転写(露光)できるかを示す性能です。一般的に回路パターンが微細なほど、半導体チップを小型化・高性能化でき、半導体チップが搭載される製品の高性能化につながります。
2.オーバーレイ精度
1枚のウエハー上に回路パターンを何回も繰り返し露光するため、どれだけ高精度にウエハーとレチクルの回路パターンを重ね合わせられるかを示す性能です。重ね合わせ精度とも呼ばれ、半導体チップの良品率に直結します。
3.スループット
どれだけ高速にウエハーを処理できるかという生産効率を示す性能です。時間内により多くの半導体チップを生産するために量産時に重視される指標です。
キヤノンの半導体露光装置
解像力を高める投影レンズ設計・製造・制御技術
理論限界の解像力を実現する究極の収差制御
半導体は、レチクルに描かれた回路パターンを、ウエハー上に縮小して露光するので、投影レンズの解像力を高くして回路を微細化することができます。
キヤノンではカメラで培った高度な光学設計・組立・調整技術と、数nm精度のレンズ研磨技術を駆使して投影レンズを製造しています。加えて、露光するときに気圧、温度などのわずかな環境変化による収差が発生することがあります。収差を補正するために、精密なレンズの駆動する部分が収差を補正できるような構造にして、解像力を高めています。
また、24時間365日稼働を続ける露光装置は、露光する際の熱や経年変化により、レンズを通した回路パターンにボケやゆがみが発生します。キヤノンでは、レンズの材料から見直すことで、投影される回路パターンのゆがみを低減するレンズを開発、nm単位まで正確な回路パターンを投影することができ、高品位な半導体チップをつくることができます。
ビッグデータ解析技術により安定稼働を支援
露光装置を稼働し続けるサポートシステムが不可欠
半導体露光装置は、お客さまの工場に納品して終わりではありません。工場で24時間365日稼働する際に、装置の性能を最大限に引き出し、高い生産性と露光精度を実現するサポート技術が重要です。
キヤノンではサポートのノウハウと、露光工程を含む半導体製造に関する膨大なデータを活用できるソリューションプラットフォームを開発しました。
蓄積された膨大なデータに対して、分析・解析技術を駆使し、製造中にトラブルが生じた際には、異常を検知して自動復帰することで、安定稼働を支援します。