しくみと技術ネットワークカメラ

光学・通信・映像解析技術を駆使し、
最適なソリューションを提供

街の防犯カメラとしてはもちろん、交通状況の確認や河川の監視など社会インフラの一部として活躍するネットワークカメラ。工場の生産現場の自動化などにも貢献しています。AIを使った映像解析技術と組み合わせ、混雑の解消やマーケティングへの活用など新しいソリューションも続々と生まれています。

2021/4/22

ネットワークカメラのしくみ

ネットワークカメラはインターネットなどのネットワークに接続し、遠隔地からの操作や、リアルタイムでの映像確認ができるカメラです。本体の構造は、デジタルカメラと同じように、レンズ、イメージセンサー、映像エンジン、そしてネットワークに映像を配信するネットワークエンジンで構成されています。

ネットワークカメラのしくみ図

ネットワークカメラは、通常、ビデオ管理システム(VMS)とあわせて運用します。ビデオ管理システム(VMS)は、複数のネットワークカメラを一元管理し、またネットワーク経由で送られてきたさまざまなカメラからの映像を表示・録画・再生できます。
さらにネットワークカメラの映像を映像解析技術と組み合わせることで、付加価値の高いネットワークカメラシステムを実現します。工場の生産ラインの監視やビル・オフィスのセキュリティ対策などで効率的な運用を実現します。

映像を一括管理するマイルストーンのソフトウエア「XProtect」

映像解析技術は、たとえば、混雑した状況下での群衆人数カウント、確認したい対象をシルエット化して、プライバシーに配慮しながらのモニタリング、確認したい対象をさまざまな条件(大きさ、速度、方向、色など)で検索するなど、多種多様なソリューションに活用されています。


ネットワークカメラの技術

人数カウント技術





  • キヤノンの人数カウント技術は、ネットワークカメラ映像を活用して、少人数から約1,500 人まで人数カウントできる映像解析ソフトウエア「People Counter」に搭載されています。映像解析技術である「人検出技術」と「実時間追跡技術」を開発し、高速で精度の高い人数カウントを実現しています。POSシステム*1 と連携しマーケティングに活用したり、大型施設の来場者人数を把握することを可能にしています。

  • *1Point Of Sales system の略で、店舗で商品を販売するごとに商品の販売情報を記録し、集計結果を在庫管理やマーケティング材料として用いるシステムのこと。


人検出技術

混雑した状況でも正確な人数カウントができるように、顔だけでなく、全身や一部が隠れた人体など複数の人モデルを用いて入力映像から人を検出できるようにしました。さらに、体の輪郭をとらえるエッジ特徴や人の形状と似た物体と区別する色特徴を用いることで、高精度な人検出を実現しています。

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実時間追跡技術

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検出した人物の動きを予測し、後続のフレームでは予測した位置の付近でのみ人の識別処理を行います。全画面を探索する人検出処理と、予測位置付近のみを局所探索する追跡処理を並行して行うことで、処理の高速化と精度の保持を両立し、解像度の高い映像や多人数が映っている映像などでもリアルタイム処理を実現しています。



群衆カウント技術





  • 群衆人数の推移をリアルタイムの把握

    群衆人数カウントは、人数カウントにAI技術であるディープラーニングを導入して、人が密集している状況でもリアルタイムに人数を推定できる映像解析技術です。
    公共施設や都市監視において警備員の効率的な配置・警備計画に役立つほか、大型施設やイベント会場、災害時の適切な群衆誘導に利用が可能です。さらに、店舗での集客状況の把握や、デジタルサイネージの広告の効果検証にも活用できます。



人数カウントにディープラーニングを導入

ネットワークカメラ映像をニューラルネット(脳機能に見られるいくつかの特性に類似した数理的モデル)で解析し、群衆の人数を推定することができます。人の密集パターンを多数学習させたことで、人が重なり合うような複雑な混雑シーンでも人数の推定が可能になりました。

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シルエット化技術





プライバシーに配慮したモニタリングを実現

シルエット化技術は、映っている人のプライバシーに配慮したモニタリングをソフトウエアで実現します。ネットワークカメラの映像には、個人を特定できる情報が含まれることが多いため、シルエット表示によりプライバシーに配慮することで、映像活用のシーンが広がります。
たとえば、プライバシーに配慮しながら、ショッピングモールやレストランなどの混雑状況を把握することで利便性を高めたり、駅や公共施設での活用により安心・安全な社会を実現します。

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Briefcam

数時間の録画映像を数分で閲覧することを可能にする映像解析ソフトウエアです。録画映像から確認したい対象を自動的に抽出し、異なる時間に発生したイベントを同時に表示します。映像内のオブジェクトに対して、色、大きさ、速度、方向、軌道、停留などさまざまな分類、属性情報を付加し、確認したい対象やイベントを抽出することを可能にしました。映像分析の効率化に大きく貢献しています。



親水コーティング技術



雨天時や降雨後でもクリアな映像を実現

屋外で使用するネットワークカメラは、雨天時の水滴や、塵や埃などの汚れによる影響が避けられません。特に、レンズ前面部に付着した水滴や汚れは、映像に影響し、視認性が低下します。キヤノン独自の「親水コーティング 」*2 は、雨天時のネットワークカメラの水滴を速やかに取り除き、さらに汚れを雨とともに流し落とすことで、雨天時や降雨後の視認性低下を防ぎます。



光の乱反射を抑制

一般的なネットワークカメラでは、レンズ前面部に水滴が付着すると、その水滴に光が乱反射するため、視認性が低下します。親水コーティングを施すと、雨滴はレンズ前面部のコーティング面で均一な薄い膜となって広がるため、光の乱反射が抑えられ、視認性の低下を防ぐことができます。

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雨水を薄く広げて汚れを除去

親水コーティング面の雨水は、塵や埃など汚れの下ですみやかに薄く広がって汚れを浮かし、広がった雨滴と一緒に汚れを流れ落とします。

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  • *2「親水」とは、水との親和性が高く、水になじみやすいことを意味します。親水性が高いと、物の表面に水がついたときに、水玉状にならず、薄く広がるといった状態になります。


大口径望遠レンズ技術



遠方への監視でも高い低照度性能を発揮

キヤノンは、望遠側で撮影を行っても、驚異的な明るさといえるF2.4を実現する、ズーム性能と明るさにこだわった大口径レンズを開発しました。100m先の被写体でも、ノイズの少ない鮮明なカラー映像を映し出し、映像解析ソリューションと組み合わせると、大型駐車場の夜間警備などで大きな威力を発揮します。



UDレンズを活用

キヤノンの360°旋回モデルや、ドーム・ボックス型上位モデルのネットワークカメラでは、低屈折・低分散のUD(Ultra Low Dispersion)レンズを採用しています。大口径レンズになればなるほど現れやすい「収差」の増大を抑制し、高画質を実現します。

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コーティングで赤外光反射を低減

ネットワークカメラに、赤外光反射低減コートを施すことで、ゴーストを抑制します。近赤外光の透過率を向上させ、ナイトモード時に優れた低照度性能を発揮します。

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小型化技術



威圧感のない手のひらサイズのネットワークカメラを実現

キヤノンのネットワークカメラSシリーズは、店舗などに違和感なく溶け込む小型サイズでありながら、200万画素、3.5倍光学ズーム、オートフォーカス、優れた低照度性能、電動パン・チルト・ズームを実現しました。



レンズを小型化

高精度非球面レンズと高屈折率ガラスの採用により、レンズ枚数を削減し、超小型ドーム内に収容可能な小型なレンズサイズを可能にしています。





効果的な省スペース設計

回路基板に実装する電子部品は、背の高い電子部品をドーム側に、背の低い電子部品をケース側に配置することにより製品の高さを抑えています。また、パン(カメラの水平移動)駆動に伴うケーブルの回動の影響を受けないレンズユニットの側面に、チルト(カメラの垂直移動)駆動機構を集中して配置し、効率的な省スペース設計を実現しました。





広範囲動作温度を実現した技術



過酷な環境の耐久性を装備

ネットワークカメラは屋内、屋外問わずさまざまな場所に設置されるため、それぞれの環境に応じた耐久性能が求められます。たとえば、監視目的で屋外に設置されるネットワークカメラは、幅広い外気温度の環境下で、24時間365日、安定して連続稼働することが必要です。キヤノンの屋外型ネットワークカメラは、ー50℃から+55℃までの広範囲の温度環境に耐えられるように設計されています。



温度変化に対応するための二重構造

まず、温度変化に対応するため、サンシェードの内側はアルミダイカストとモールド(樹脂)の二重構造になっています。温度が高いときは、アルミダイカストとモールドの間に冷却ファンの風を通し、さらにサンシェードの通気口から放熱します。一方、温度が低いときは、ヒーターを使ってモールドの内部だけを温めて断熱する構造になっています。



結露でレンズが曇らないための空気循環

ネットワークカメラの内部では、常に空気を循環させ、ドーム部分にも空気を送るようにして結露を防いでいます。どれくらいの温風をヒーターで作るのか、ドームと内側のインナーカバーとの隙間にどう風を流すのかなど、さまざまな要素を試行錯誤して、ドーム全体が曇らない仕組みを実現しました。

レンズ部 ドーム全体が曇らないための空気循環のしくみ図


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