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そこに“ある”という体感を生み出すMRシステム そこに“ある”という体感を生み出すMRシステム

そこに“ある”という体感を生み出すMRシステム

現実空間に、開発中の新型車や建設予定の建物が、実際に目の前にあるかのように現れる。キヤノンが開発したMixed Reality(以下、MR:複合現実感)は、現実空間と仮想空間とを融合し、360度どんな視点からでも体感できる映像技術です。光学技術と映像技術を結集したMRシステムにより、幅広い分野にソリューションを提供しています。

2020/02/20技術紹介

#産業機器#イメージング技術#機械工学#物理学

臨場感あふれる実寸大の世界

次々に新たな視覚体験をもたらす映像技術の進化。視界を覆うように頭部に装着するヘッドマウントディスプレイ(以下、HMD)により、人々はそこにいながらにして、バーチャル(仮想)で世界中を旅したり、空を飛ぶなどといった未知の感覚を味わうことができるようになりました。

キヤノンが開発を進めるのは、「Mixed Reality」。コンピューターグラフィックスのみで表現されるVirtual Reality(VR)から一歩進んだ、複合現実の世界です。現実空間と仮想空間を融合させ、現実空間の映像に、実物さながらの3Dデータを可視化することを可能にしています。

キヤノンの最新HMD「MREAL DISPLAY MD-20」。装着者にストレスのない軽量・高画質設計を実現。

キヤノンの最新HMD「MREAL DISPLAY MD-20」。装着者にストレスのない軽量・高画質設計を実現。

仮想の3D CGモデルがあたかも現実の中にあるかのように、リアルサイズ、自由視点で表示します。

仮想の3D CGモデルがあたかも現実の中にあるかのように、リアルサイズ、自由視点で表示します。

ものづくりの進化を加速させるMR

今、MRの活用が広がっているのが、ものづくりの現場です。近年、3DCAD(コンピューターによる設計支援ツール)による設計が増え、試作品をつくらずに3Dモデルを活用することで、早い時点で問題点を洗い出す「フロントローディング開発」という開発手法が注目されています。開発のスピードアップとコストダウンが図れる手法で、MRはその一翼を担う存在となっています。MRでは、CADデータなどから生成した3Dモデルを、現実に見える空間と合成して、その場にあるように実寸大で表示できるため、モックアップ(デザインを確認するための試作品)をつくる手法に迫る、リアルな検証・確認が可能になるのです。

あたかも目の前に存在しているかのような視覚表現を実現

キヤノンが開発したMRシステム「MREAL」は、HMDをはじめとしたハードウエアと、MREALの基盤ソフトウエアである「Canon MREAL Platform」、3Dデータを表示するために「Canon MREAL Visualizer」をはじめとする「MREAL表示アプリケーション」で構成されます。HMDに取り付けたカメラで撮影する現実空間(撮像イメージ)と、仮想空間の3D CG映像をリアルタイムで合成したMRイメージを、HMDの表示パネルに投影するビデオシースルー方式を採用。ハーフミラーで合成する光学シースルー方式に比べ、精度やリアリティの面で多くのアドバンテージがあります。

MREALの基本構成 MREALの基本構成

MREALの基本構成

光学シースルー方式

光学シースルー方式

ゴーグルを通して見える現実空間と、ハーフミラーに映写したCG映像を同時に見る方式。CG像は半透明で現実感が弱い。(イメージ)

ビデオシースルー方式(MRが採用)

ビデオシースルー方式(MRが採用)

カメラで撮影した現実映像とCG映像を映像合成したうえで表示するため、CG像が透過することもなく、リアリティの高い表現が可能。

例えば、オブジェクトを手でもつしぐさをした場合、オブジェクトの裏側にまわる指は画像処理で消され、あたかも実際に手にもっているかのような視覚を実現できます。距離感や色をより正確に描画できるため、精度が重要になる設計や製造現場の要求に応えることが可能です。

現実空間の距離感と、CGの位置、サイズ、形状を踏まえて映像処理することで、CGオブジェクトに実際に触っているような視覚表現が可能。

キヤノンの光学技術と映像技術が結集したHMD

肉眼で見る光景と比べ、現実映像と仮想映像を違和感なく合成し、リアルな映像を実現するには、利用者の視点とカメラの光軸を一致させる必要があります。さらに、キヤノンは光軸の一致とHMDの小型・軽量化を両立させるため、「自由曲面プリズム」を採用しました。自由曲面プリズムは、MR映像を表示するスクリーンまでの光軸を、一直線ではなく折りたたむことでコンパクトにすると同時に、効果的な補正を行い、高画質を実現。表示パネル、撮影レンズなどの各パーツを、最適な位置に配置できるようになりました。自由曲面プリズムの製造は、非常に高い精度が求められます。長年に渡って培ってきたキヤノンの光学技術、加工技術によって、その実現が可能になりました。

また、HMDのカメラ部には、キヤノンのグローバルシャッター搭載のCMOSセンサーを採用。動きのある光景も、ゆがみなくとらえることも可能にしました。

HMDの光学系のしくみ

HMDの光学系のしくみ

空間特徴を把握して位置合わせを行う先端テクノロジー

MRでもう1つ重要なことが、合成する仮想空間の位置合わせです。例えば、車の3D CGモデルを表示させる場合、位置がずれたり、挙動が不安定ではMRでの観察に支障が出ます。かつては、マーカー(目印)や光学式センサーを必要としていましたが、キヤノンは「空間特徴位置合わせ技術」を開発。床の模様や机などの静止物をマーカー代わりにすることで、一定の環境下でHMD単体での位置合わせを可能にしました。準備の手間は大幅に減り、センサーの配置が難しい屋外などでもすぐに利用できるようになり、MRの活用の場が大きく広がっています。

従来

従来

マーカーやセンサーを設定した利用イメージ(車は3D CG)

MREAL DISPLAY MD-20利用時

MREAL DISPLAY MD-20利用時

空間特徴位置合わせ技術による利用イメージ(左側の車は実物、右側の車は3D CG)

空間特徴位置合わせでは、HMDで撮影された撮像イメージから特徴点を抽出し、ユーザーの位置と3DCGの位置を特定

空間特徴位置合わせでは、HMDで撮影された撮像イメージから特徴点を抽出し、ユーザーの位置と3DCGの位置を特定

MRで新たなリアルを創出

現実空間と仮想空間を高度に融合させるMRは、プロダクトデザインの検討や工場の製造工程の改善、建築物の設計シミュレーションなど、さまざまな分野での活用が始まっています。実物がなくても、リアルサイズで目の前に現れ、自由な視点で確認できる。MRが生み出すこの新たなリアルによって、開発や設計の手戻りを減らすだけでなく、ものづくりに新たな気づきをもたらします。

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