野鳥の撮りかた17

ボケを上手に使いましょう

周囲を意図的にぼかすことで、主人公が引き立ちます。ぼかし方や色彩によっても、与える印象が大きく変わります。ボケを効果的に操る方法を覚えることで、写真の芸術性がぐっと上がります。

カワセミ

池の止まり木にいるカワセミ。この日は曇り空で今にも雨が降りそうな暗さ。よく見ると近くに数株のヒガンバナが咲いていた。匍匐前進で近づきカワセミの手前にヒガンバナの花を入れて赤い前ボケにして画面に入れてみた。この時はISOを1600まで上げて、ブレを防げる1/500秒で撮影をした。

絞り : F8
シャッタースピード : 1/500秒
ISO感度 : 1600
露出補正 : -0.3
焦点距離 : 700mm相当(500mmにx1.4テレコンバーターを使用)
一眼レフカメラ(APS-Cサイズ)

ボケは、望遠レンズを使うのが効果的

野鳥撮影では、基本的に望遠レンズを使うことになります。望遠レンズは被写体にかなりズームインするわけですから、画角が狭く、絵を切り取ることが特徴です。また、レンズの圧縮効果(近くのものと遠くのものの距離感を縮める効果)によりボケ味が美しくなることが知られています。

絞りは、絞り込むことで被写界深度が深くなる(ピントの合う範囲が広くなる)のですが、絞り込むことでシャッター速度が遅くなり、ブレやすくなるため、通常は絞りを開放寄りに(F値を小さく)することで、シャッター速度を高速にします。開放絞りにすることで、必然的に被写界深度が浅く(ピントの合う範囲が狭く)なり、たとえば、目にピントを合わせると尾羽にピントが来ないような写真になります。絞りを開放にすることで、結果的にボケが大きく、美しい作品に仕上がるということが、望遠レンズの特徴でもあり、人気にもつながっています。


絞り込みボタンでボケ具合を確認

絞りとボケの関係は理解できても、実際にどの程度ボケるのか、どうやって確認すればいいのでしょうか?撮影した画像をモニターでいちいちチェックするの?そんな質問もあるでしょう。その答えはレンズマウントの付近についている「絞り込みボタン」です。このボタンを押すことで実際の絞り込み具合(ボケ具合)を確認することができますよ。

プレビューボタン
※機種によってボタンの位置は違います。

前ボケ、後ボケの使い方、背景の選び方

ピントの合った被写体から、手前もしくは後ろ(奥)に距離が離れるほどボケ具合は大きくなります。主役の前後のボケを利用することで作品の雰囲気が大きく変わるでしょう。被写体が動かない場合には絞りをコントロールすることで、ピントの合う範囲が違う写真を撮ってみるのも良いかもしれません。


後ボケ

望遠レンズ、とりわけ明るい大口径レンズの醍醐味はやはり、きれいなボケ味だ。被写体と距離がある場合、ボケ具合は少なくなりこの素晴らしい効果も減ってしまうが、被写体と近い時にはこのボケ味が大きな効果を発揮してくれる。完全に背景をぼかし、一様な色の中に主役を浮き立たせる野鳥写真もいいのだが、自然なグラデーションできれいなボケ具合になった写真はたまらなく美しい。この時は開放絞りでゆっくりとカンムリワシに近づきバストアップのポートレートを撮ることができた。顔の後ろにある葉のボケ具合がとてもいい雰囲気を出してくれた。

絞り : F5.6
シャッタースピード : 1/640秒
ISO感度 : 400
露出補正:-1.3
焦点距離 : 400mm
一眼レフカメラ(APS-Cサイズ)

ファインダー内
カンムリワシ

前ボケ

池のほとりのアオサギが木の枝にとまっていた。何気なく通り過ぎようとした時、私とアオサギの間に桜の花が咲いていることに気が付き、慌てて移動を繰り返しアオサギの前に桜の花を入れて撮影することができた。この時は100-400mmのズームレンズだったので桜とアオサギをちょうど良い大きさ・配置にズーミングしてみた。絞り込んで桜の花とわかるのもいいが、この時はピンクのワンポイントを配置したかったので開放絞りで撮影した。

絞り : F5.6
シャッタースピード : 1/1250秒
ISO感度 : 400
露出補正:-1.7
焦点距離 : 312mm
一眼レフカメラ(APS-Cサイズ)

ファインダー内
アオサギ

前ボケと後ボケを併用

茂った青葉の中で佇むコノハズク。昼間のフクロウ類は寝ていることが多く、静かにしながらいろいろなパターンで撮影することができた。アップ・ロングに加え、身体がすべて見えているカットなどを撮影したあと、あちこち移動しながら葉陰から胸より上が出ている場所を見つけて撮影することに。狙いは、コノハズクの前後にある緑の葉が、一番手前から徐々に異なるボケ具合で重なる写真を撮ること。この時も最大限にボケ味が活きるように絞りは開放で撮影。

絞り : F4
シャッタースピード : 1/50秒
ISO感度 : 800
露出補正 : +2
焦点距離 : 500mm
一眼レフカメラ(APS-Cサイズ)

ファインダー内
コノハズク

カリッとシャープに

声を頼りに探すと谷の対岸にとまるアカショウビンを見つけた。夏の森は暗く、ブレやすい。それを防ぐために、ISO感度を上げて撮影をするのがポイントだ。アカショウビンは落ち着いていると基本的には動かないので、手前に遮るものがなく、被写体とバックに少し距離がある場所に移動してみた。ISO感度を3200まで上げ、さらに、ピントがカリッときた写真を撮りたいので、絞りを開放値のF5.6からF7.1にして、シャッタースピードを1/25秒に設定。シャッタースピードを遅めに設定したため、手ブレを防ぐために2秒のセルフタイマーを使用した。思った通り、カリッとしたシャープな写真が撮れた。

絞り : F7.1
シャッタースピード : 1/25秒
ISO感度 : 3200
露出補正 : 0
焦点距離 : 700mm相当(500mmにx1.4テレコンバーターを使用)
一眼レフカメラ(APS-Cサイズ)

ファインダー内
アカショウビン

セルフタイマーでカメラブレを防ぐ

シャッタースピードが遅い場合には、三脚を使っても、シャッターボタンを押した衝撃によってカメラブレが生じることがあります。ケーブルレリーズやリモコンといった付属品を使用する方法が一般的ですが、他にもセルフタイマーを使ってカメラブレを防ぐ方法もあります。
セルフタイマーには、集合写真などで活躍する10秒のほか、2秒があるのを知っていますか。この2秒のセルフタイマーでシャッターのタイミングを遅らせることで、ある程度カメラブレを防ぐことができます。動かない鳥を撮影するときには、活用してみましょう。

2秒セルフタイマーを設定する場合は、DRIVEボタンを押してダイヤルを操作し、2秒セルフタイマーモードを選択してからもう一度DRIVEボタンを押す

実際に撮ってみました

木陰の中を歩くムクドリを撮影しました。被写体手前にボケを入れるため、カメラを地面に近づけシャッターを切りました。よく動いていたので、ピント合わせが難しかったです。ボケを入れることで、いつもとは違った雰囲気の写真を撮ることができました。

ファインダー内
ムクドリ(生徒撮影)

絞り : F5.6
シャッタースピード : 1/200秒
ISO感度 : 800
露出補正 : 0
焦点距離 : 400mm
一眼レフカメラ(APS-Cサイズ)

戸塚先生のコメント

とても不思議な写真です。手前と奥のボケが木の枝なのか?それとも地面なのか?一瞬木の枝の隙間から撮ったのかと思えました。また、頭の左上の花のボケが面白いのです。ちょっと残念なのは、手前の草が目にかかっていること。これがなければ、本当にいい写真でした。

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