野鳥の撮りかた20

どアップポートレート

野鳥をアップで撮影したいと思っている方も多いはず。あなたにとってのアップとは、フレームいっぱいに収まるくらいでしょうか?それとも、フレームの1/2くらいでしょうか?どうせなら思い切って画面からあふれるくらいの「どアップ」を狙いましょう。

カンムリワシ

日本に生息する猛禽類の中で、最も近づいて撮影できるのはカンムリワシだろう。この時も電線にとまっていたので、撮影しながら近づいていく。青空がバックになるようにして、顔のアップを狙った。700㎜の超望遠なので2段絞り込み、羽毛の描写を表現できるように注意した。

絞り : F11
シャッタースピード : 1/1000秒
ISO感度 : 400
露出補正 : -0.3
焦点距離 : 700mm(500mmにx1.4テレコンバータを使用)
一眼レフカメラ(APS-Cサイズ)

貴重などアップ撮影のチャンスを有効に

アップでの撮影に適しているのは、大きな鳥たちです。なかなか鳥たちに近づくのは難しいので簡単にはいきませんが、場所によっては可能なこともあります。また望遠レンズで撮影中に向こうから近づいてきてフレームを割ってしまい、後ろに下がってしまった経験もあるかもしれません。そういう時は「しめた!」と思って、さらにテレコン(エクステンダー)も使い、ズームしてみましょう。
中途半端なアップはつまらないので、やる時は徹底してやりましょう!顔のポートレートや羽や足、くちばしなど、普段できないアップの撮影を試してみましょう。普通に撮影ができたら絞り込んで被写界深度の深い写真の撮影も忘れずに。普段できないのでこういうチャンスは有効に使いたいものです。
気を付けなければいけないのが、鳥の大きさです。小鳥の場合、あまり大きく撮影すると、A4・A3サイズなど大きくプリントしたときに、小鳥が大鳥になってしまいます。それがよくないわけではありませんが、やはり小鳥はかわいらしく思える大きさがいいですね。


顔のアップで魅せる

オジロワシ 北海道羅臼町

クルーズ船で流氷の浮かぶ海のワシを撮影するツアーがある。はじめのうちはワシたちもエサを獲るために忙しく動いているが、しばらくして空腹がおさまると流氷の上で休息する。そうなると船が近づいても飛ばない個体がいるので、1000㎜までズームにして、バストアップや顔のアップを狙うことができる。こういう撮影ができるのはここだけなので、必ず撮影をするようにしている。

絞り : F11
シャッタースピード : 1/2500秒
ISO感度 : 800
露出補正:-0.7
焦点距離 : 1000mm(500mmにx2テレコンバータを使用)
一眼レフカメラ(フルサイズ)

ファインダー内
オジロワシ

ズグロミゾゴイ 沖縄県石垣市

ズグロミゾゴイがよく出る場所へ行くと、すぐに見つけることができた。彼の進行方向に行き、木の陰で待っていると、私の存在に気づかずにどんどん近づいてくる。はじめはズームレンズの400㎜側で撮影していたが、だんだん近くなるので100㎜側にしたのだが、まだまだ近づいてくる。そこで今度は、逆に400㎜側に切り替えて、顔のどアップを撮った。

絞り : F8
シャッタースピード : 1/100秒
ISO感度 : 400
露出補正:-0.3
焦点距離 : 400mm
一眼レフカメラ(APS-Cサイズ)

ファインダー内
ズグロミゾゴイ

ライチョウ 富山県立山室堂

ライチョウは日本で生息する野鳥の中で、人を恐れない種ナンバー1だろう。これは、日本では過去に人から危害を加えられていなかった証拠だ。海外では、ライチョウは狩猟鳥なので、人をすごく恐れる。
ライチョウを移動の進行方向で待っていると、どんどん近づいてくる。特にじっとしていれば隠れる必要もない。4月下旬、まだ冬羽の純白のライチョウのポートレートを撮りたくて探すと、運よく白いオスが見つかった。進行方向を先回りして待っていると、いい具合に赤い肉冠を目立たせてくれた。

絞り : F5.6
シャッタースピード : 1/800秒
ISO感度 : 200
露出補正:0
焦点距離 : 400mm
一眼レフカメラ(APS-Cサイズ)

ファインダー内
ライチョウ

息づかいを切り取る

ライチョウ 富山県立山室堂

ライチョウのオスを撮影していると、突然もう1羽のオスが現れて喧嘩を始めた。ものすごい激しい喧嘩をすることもあるが、この時は小競り合いを繰り返してお互いに首を伸ばし「グァ~ァ、ゴ~グェ~」と威嚇の声を交わすような行動を始めたので、口を開けた瞬間を撮影した。

絞り : F5.6
シャッタースピード : 1/1250秒
ISO感度 : 400
露出補正:0
焦点距離 : 400mm
一眼レフカメラ(フルサイズ)

ファインダー内
ライチョウ

オナガガモ 宮城県内沼(伊豆沼)

カモのメスは、意外にも気が強い。時々オスを追いかけまわして怒っている姿を見る。そんな気の強いメス同士が仲良くするはずがない。けんかばかりをしているわけではないが、どうも相性があるようで、結構長時間、けんかしつづける。そういう時はこちらに気がつかないので、近づいて撮影ができる。胸を突き合わせているシーンをバストアップで切り取ることで、面白い絵を撮ることができた。

絞り : F4
シャッタースピード : 1/1000秒
ISO感度 : 400
露出補正:0
焦点距離 : 500mm
一眼レフカメラ(APS-Cサイズ)

ファインダー内
オナガガモ

美しいフォルム

オオハクチョウ 宮城県内沼(伊豆沼)

背中にくちばしを突っ込んで休息するオオハクチョウがいたので、ゆっくりと近づくが、私が餌を持っていないのを知っていて警戒している。撮影がしたかったのはくつろぐ顔のアップなので首を出されては困る。そこでしばらく動かずに待った。何度か首を動かしていると羽が飛び出し、くちばしにかかった。少し逆光気味になるようにして、くちばしにかかる羽が引き立つようにどアップで切り取った。

絞り : F5.6
シャッタースピード : 1/6400秒
ISO感度 : 400
露出補正:-0.3
焦点距離 : 400mm
一眼レフカメラ(APS-Cサイズ)

ファインダー内
オオハクチョウ

オオハクチョウ 北海道弟子屈町屈斜路湖

白い鳥は逆光側で撮影すると、影側になる部分がつぶれにくく、絵になりやすい。オオハクチョウのように自分の身体でレフ版の役目までしてくれると、なおのことだ。暗めのバックの中に白い身体が浮かび上がるので、首を曲げて羽繕いをする姿を、ドラマチックになるように狙ってみた。

絞り : F9
シャッタースピード : 1/800秒
ISO感度 : 100
露出補正:-1
焦点距離 : 300mm
一眼レフカメラ(APS-Cサイズ)

ファインダー内
オオハクチョウ

自然の造形美を写し出す

オナガガモ 滋賀県山東町

カモ類のメスは地味な羽根色だが、よく見るととても複雑な模様の羽をもち、「自然は芸術家」を実感できる。派手な色合いはないがオナガガモのオスもそれに匹敵する。その美しさはアップにするとより実感できるのでお腹と翼をアップで狙う。順光よりも斜光で撮影したことで、いい具合に影のグラデーションをつけることができた。

絞り : F5.6
シャッタースピード : 1/2500秒
ISO感度 : 400
露出補正 : 0
焦点距離 : 400mm
一眼レフカメラ(APS-Cサイズ)

ファインダー内
オナガガモ

野鳥の撮りかた