審査員(敬称略)

エミリア・ヴァン・リンデン

Unseen アーティスティック・ディレクター

「写真新世紀」の受賞者を選出する審査員チームに加わることになり、大変嬉しく思っております。自身が見せたいストーリーやストーリーを伝えるための表現方法に挑む多くのアーティストを発掘できることを楽しみにしています。見る者を魅了し、審美的に興味深い作品を制作しているアーティストは、現代社会に関連した、社会を映し出すストーリーやテーマを紹介していると考えます。

プロフィール

現代写真の表現の場として注目されるUnseen(オランダ)のアーティスティック・ディレクター。写真界の最新のトレンドにフォーカスし、Unseenは新進気鋭の才能ある写真家に作品展示の機会を提供するとともに、著名なアーティストの最新作も展示している。Unseenでは年間を通して様々な展示を行っており、メインイベントのUnseen Amsterdamの第7回目は2018年9月に開催される。2014年創刊の年刊誌『Unseen Magazine』の編集長を務めるなど、芸術的才能の発掘と、若手アーティストの支援に力を入れている。

サンドラ・フィリップス

サンフランシスコMoMA 名誉キュレーター

キヤノンのコンテストの審査員を務めることになり、とても嬉しく思っています。皆さまには、是非、世界に目を向けて、私たち作品を見る者に挑戦する写真を撮影していただきたいです。最近は、写真を撮影するときに内面に目を向け、写真家の本質とは何か、またどんな気持ちか、自身をどのように見ているかを反映させる一つの潮流があります。けれども、このコンテストは、再び世界に目を向け、世界について考えられるよい機会ではないかと考えます。写真家ご自身のアイデア、ファンタジーの外側で何が起こっているのかを見る良い機会であると確信します。

プロフィール

サンフランシスコ近代美術館、写真部門名誉キュレーター。ニューヨーク市立大学で博士号、ブリンマー大学で文学修士号、バード大学で文学士号を取得。1987年よりサンフランシスコ近代美術館に勤務し、1999年にシニアキュレーター、2017年に名誉キュレーターに就任。近代・現代写真の展覧会を多数開催し、高く評価されている。展覧会:「露出-窃視・監視と1870年以降のカメラ(Exposed: Voyeurism, Surveillance and the Camera Since 1870)」、「Diane Arbus-リベレーションズ(Revelations)」、「Helen Levitt」、「Dorothea Lange-アメリカン・フォトグラフス(American Photographs)」、「Daido Moriyama-ストレイ・ドッグ(Stray Dog)」、「クロッシング・ザ・フロンティア-アメリカ西部風景の変容(Crossing the Frontier: Photographs of the Developing West)」、「警察写真-証拠としての写真(Police Pictures: The Photograph as Evidence)」、「Sebastião Salgado-不確かな恩寵(An Uncertain Grace: Sebastião Salgado)」。また、ニューヨーク州立大学ニューパルツ校、パーソンズ・スクール・オブ・デザイン、サンフランシスコ州立大学、サンフランシスコ・アート・インスティチュートなどの教育機関で教鞭を執っている。アメリカン・アカデミー・イン・ローマのレジデントを務めた経験があり、2000年に国際交流基金(ジャパンファウンデーション)の助成金を獲得している。

さわ ひらき

美術家

いまのデジタル一眼レフカメラ(むしろデジタルカメラと呼ばれるほとんどのモノ)には当然のようについている機能《動画》を、「写真新世紀」では、2015年から応募作品の対象として受け付けるようになりました。 私自身も2009年に発売されたキヤノンのEOS 7Dが、自分の作品制作の展開に一役買いました。手元のスイッチ一つで「写真⇔動画」の切り替えができる手軽さを提供する技術は、表現の消失と出現を同時に起こします。
《動画》の出現により、シャッターを押す、瞬間を捉える能力というのは、必ずしも必要とされなくなり、カメラを通した表現の本質は、作家として映像をどう取り扱うかということにつきるのかもしれません。
スティル、ムービー、紙焼き、フォトブック、物体的な形のない映像…さまざまな表現手法の境界が朧げなこの写真の新世紀に、わたしたちは新たな可能性を模索し続けています。
メディアや手法に捉われない、技術では比較できない、言葉では現しえない作品に出会えるのを楽しみにしています。

プロフィール

1977年石川県生まれ。2003年ロンドン大学スレード校美術学部彫刻家修士課程修了。2002年『dwelling』で若手作家の登竜門East International Award受賞。リヨン・ビエンナーレ(2003年、2013年)、横浜トリエンナーレ(2005年)、アジア・パシフィック・トリエンナーレ(2009年)、シドニー・ビエンナーレ(2010年)など国際的なグループ展に多数参加。主な個展に、「Lineament」(2012年、資生堂ギャラリー)、「Whril」(2012年、神奈川県民ホールギャラリー)、国内初となった大規模な個展「Under the Box, Beyond the Bounds」(2014年、東京オペラシティアートギャラリー)などがある。 2018年にはKAAT(神奈川芸術劇場)で個展ならびに、劇場パフォーマンスのコラボレーション作品を発表する予定。 生み出される映像作品と動画インスタレーションは、創造的空間を表し、鑑賞者を魅了する。ロンドン在住。

澤田 知子

アーティスト

写真をはじめてから写真新世紀で賞を頂くことは私の憧れでした。でも最初は落選、二度目の応募で賞を頂きました。賞を頂いたことはもちろんその後の制作への自信と勇気に繋がりましたが、作品を仕上げて応募するまでの全ての過程が良い経験にも勉強にもなりました。既視感のない作品、独創的な価値観や独自の世界を見る目線をシェアしてもらえることを期待しています。はりきって応募して下さい!

プロフィール

1977年神戸市生まれ。成安造形大学写真クラス研究生を修了。学生の頃よりセルフポートレートの手法を使い作品を通して内面と外見の関係性をテーマに作品を展開している。デビュー作『ID400』が2000年度キヤノン写真新世紀特別賞、2004年に木村伊兵衛写真賞、NY国際写真センターThe Twentieth Annual ICP Infinity Award for Young Photographerなど受賞多数。世界中で展覧会を開催。出版物は、写真集の他に絵本などもある。

椹木 野衣

美術評論家

写真が(日本語で言う)「写真」からこれほどかけ離れた時代はないのではないか。今ではもう「写真が変えようのない真実を写している」などとは誰も信じていない。むしろ写真はいま、日ごとになにか得体のしれないものになりつつある。その得体のしれなさを、いったい誰が他に先んじて捉えるのか。いや、そういう言い方自体が(ありもしなかったかもしれない)主体性に重きを置く過去の表現の言い回しにすぎないのかもしれない。捉えるのではない。誰が写真そのものになることができるか。どこまでが撮る者で、どこまでが被写体かがわからないような淵に立つ世界を呼び寄せることができるだろう。そういう生々しい危機感のようなものを、いま、写真に対して抱いている。

プロフィール

1962年秩父市生まれ。美術批評家。91年に出した最初の評論集『シミュレーショニズム――ハウス・ミュージックと盗用芸術』(洋泉社)は「サンプリング/カットアップ/リミックス」を核に据え、美術、写真、音楽ほか後に続く多くのアーティスト、クリエイターに大きな影響を与えた。ほかに多くの議論を呼んだ「悪い場所」を唱えた『日本・現代・美術』(新潮社、1998年)、第25回吉田秀和賞を受賞した『後美術論』、平成29年度芸術選奨文部科学大臣賞(評論等部門)を受賞した『震美術論』(いずれも美術出版社)など多数。現在、多摩美術大学美術学部教授、芸術人類学研究所所員。

杉浦 邦恵

写真家

ジャーナリズムは真と偽、記録と捏造が簡単に出来るメディアとして、以前の信用を失くし、検証や調査の対象となってきています。
新聞、雑誌からラジオ、テレビのストリームを求めれば24時間途切れなく情報が得られ、スマートフォン、パソコンを通じて、人々を撹乱し、依存症にさせています。 個人のツイッターから、国ごと関わったハッキング戦略まで、無視したり、逃れることは可能なのでしょうか。
こういう現実に、アーテイストはどう反応して来ているのでしょう。美術、特に写真家やヴィデオアーティストは、同じメディアを操作して作品を制作しているのです。 また反動としてより無垢な願望や、幻想への逃避を使ったアートが結晶し始めています。
今回、写真新世紀というプロジェクトに構成されて、一同の会場に集まり、何か、予期しない、共同体としての時代像のようなものが見えたら素晴らしいと思います。

プロフィール

名古屋生まれ。1967年シカゴ美術学校写真科 学士課程修了。 卒業後、クラスメートと二人でニューヨークへ移り住む。写真のプロセスやコンセプトを軸にして、絵や彫刻と同じく重要な視覚言語として機能するような写真を半世紀にわたって試みている。現在、ニューヨークを拠点に活動中。 1969年「Vision and Expression」ジョージ・イーストマン・ハウス、1972年「Annual Exhibition of Painting 」ホイットニー美術館、1994年「Visualization at the End of the 20th Century」埼玉県立近代美術館、1997年「New Photography 13」ニューヨーク近代美術館、2011年「Morphology of Emptiness」東京国立近代美術館、2015年「来るべき世界の為に:1968 – 1979年における日本美術 写真における実験」ヒューストン美術館;グレイアートギャラリーなど。 個展:1998 年「Dark Matter and light affairs」愛知県美術館;2000年Frances Lehman Loeb Art Center;ヴァッサー大学(ニューヨーク)、2008年「Time Emit」ビジュアルアートセンター(ニュージャージー)など。

安村 崇

写真家

かつての応募者として印象に残っているのは、期限内に作品を仕上げることの難しさです。ひとまずの完成を求められるこのような公募の場において、何をもって完成とするのかという、作品に対するけじめのようなものに不慣れだったのでしょう。応募作に対し心残りがあればもう少し時間をかけて取り組むことも選択肢の一つです。また、完成などないという考えもあるでしょう。しかし応募するということは、たとえ一旦であれ自身とその作品にとどめ刺すことだと思います。そのような思いでご自身の作品と向き合われた時、新たにみえてくるものもあるのではないでしょうか。まだ知らない写真の喜びに出会えることを楽しみにしています。

プロフィール

1972年滋賀県生まれ。95年日本大学芸術学部写真学科卒業。99年に「第8回写真新世紀」年間グランプリ受賞。2005年に写真集『日常らしさ/Domestic Scandals』を発表。同年、パルコミュージアムで「安村崇写真展」を開催。2006年にはマドリードでグループ展「Photo Espana」参加。2017年に写真集『1/1』を発表。

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