写真新世紀 2019年度 [第42回公募]

審査員(敬称略)

サンドラ・フィリップスサンフランシスコMoMA 名誉キュレーター

キヤノンのコンテストの審査員を務めることになり、とても嬉しく思っています。皆さまには、是非、世界に目を向けて、私たち作品を見る者に挑戦する写真を撮影していただきたいです。最近は、写真を撮影するときに内面に目を向け、写真家の本質とは何か、またどんな気持ちか、自身をどのように見ているかを反映させる一つの潮流があります。けれども、このコンテストは、再び世界に目を向け、世界について考えられるよい機会ではないかと考えます。写真家ご自身のアイデア、ファンタジーの外側で何が起こっているのかを見る良い機会であると確信します。

プロフィール

サンフランシスコ近代美術館、写真部門名誉キュレーター。ニューヨーク市立大学で博士号、ブリンマー大学で文学修士号、バード大学で文学士号を取得。1987年よりサンフランシスコ近代美術館に勤務し、1999年にシニアキュレーター、2017年に名誉キュレーターに就任。近代・現代写真の展覧会を多数開催し、高く評価されている。展覧会:「露出-窃視・監視と1870年以降のカメラ(Exposed: Voyeurism, Surveillance and the Camera Since 1870)」、「Diane Arbus-リベレーションズ(Revelations)」、「Helen Levitt」、「Dorothea Lange-アメリカン・フォトグラフス(American Photographs)」、「Daido Moriyama-ストレイ・ドッグ(Stray Dog)」、「クロッシング・ザ・フロンティア-アメリカ西部風景の変容(Crossing the Frontier: Photographs of the Developing West)」、「警察写真-証拠としての写真(Police Pictures: The Photograph as Evidence)」、「Sebastião Salgado-不確かな恩寵(An Uncertain Grace: Sebastião Salgado)」。また、ニューヨーク州立大学ニューパルツ校、パーソンズ・スクール・オブ・デザイン、サンフランシスコ州立大学、サンフランシスコ・アート・インスティチュートなどの教育機関で教鞭を執っている。アメリカン・アカデミー・イン・ローマのレジデントを務めた経験があり、2000年に国際交流基金(ジャパンファウンデーション)の助成金を獲得している。

ポール・グラハム写真家

写真は美しい表現手段で、「見ること」「記憶」そして「光」でつくり上げるものです。自分の家でも、地球の裏側でも撮ることができて、自分自身も、家族も、赤の他人も被写体にできます。見たものを記録するというシンプルな作業ですので、かなり簡単なように思えます。その反面、上手に表現する――本当の意味で「見る」――のがとても難しい芸術的な作業でもあります。最近は内面的なものを撮る写真家が圧倒的に多く、外の世界ではなく内の世界の真実をとらえようとする傾向が強くなっています。時にはそれもいいでしょうが、外の世界をシャットアウトしてしまうのは残念なことです。外の世界と関わりを持とう。新しい手段で自分の生活を表現してみよう。自分が誰であるかを伝えよう。どんな出来事や人びとや場所が私たちの生活を形づくっているかを明らかにしよう。私は写真家みんなにそう望み、そうするようにアドバイスしてきました。この姿勢こそが、人間らしさに明確に貢献できるのではないでしょうか。すなわち、いろんな人の生活のとらえ方、人生の生き方、物事の感じ方を理解することにつながるのだと思います。

プロフィール

イギリスの写真家。ニューヨーク在住。氏の作品は35年以上にわたって世界中で展示されており、2009年のニューヨーク近代美術館での個展や、2010年のホワイトチャペル・ギャラリーでのキャリア中盤の作品を集めた回顧展は特に有名。また、第49回ヴェネツィア・ビエンナーレや、テート・ギャラリーが20世紀の写真家をテーマにして主催した「Cruel and Tender」などの著名なグループ展にも参加している。写真集も20冊以上出版しており、代表作に2008年出版でパリ写真賞の過去15年で最も価値ある写真集として選出された『a shimmer of possibility』がある。グッゲンハイム奨励金やドイチェ・ベルゼ写真賞のほか、写真界最高の栄誉とされるハッセルブラッド国際写真賞など、受賞歴も多数ある。

ユーリン・リーディレクター 台湾高雄市立美術館(KMFA)

「写真新世紀」の本年度の審査員を務めることになり、嬉しく思います。 現在は写真が大きな影響力を持つソーシャルメディアの時代で、写真の性質が急速に変化しつつあるように思われます。応募者の皆さまには、思い切って写真の限界を追求し、オリジナリティあふれる芸術的な表現を披露していただきたいと考えています。また、斬新なアイデアで現代社会を反映した作品に出会えることも期待しています。

プロフィール

2009年に台新銀行文化芸術基金会のアーティスティック・ディレクターに就任。2016年よりKMFAに勤務。台北市立美術館(TFAM)では、キュレーターとして勤務後、展示部門長に就任する。TFAMでは台湾と世界のアートシーンの橋渡し役として活躍。
キュレーターとして、1997年および1999年のヴェネツィア・ビエンナーレ、1999年の第3回アジア・パシフィック現代美術トリエンナーレ(オーストラリア・クイーンズランド州)、2013年の第2回金沢・世界工芸トリエンナーレ(金沢21世紀美術館)への台湾の参加に尽力する。2002年の第2回福岡アジア美術トリエンナーレには日本のキュレーターとして参加する。

リネケ・ダイクストラ写真家

本年度の「写真新世紀」の審査員を務めることになり、嬉しく思います。応募者の皆さまには、自分の心が刺激されたり魅了されたりする被写体やテーマを選んでいただきたいと考えています。自分につながりのあるもの、自分に関連性のあるものを被写体に選んでみてください。この被写体/このテーマと決めたら、一定期間それに集中しましょう。私は好奇心の力というものを心から信じでいます。世界を注意して見つめ、新しい可能性を切り開こうとすることで、アイデアというものは形となっていきます。新しいアイデアと、鋭い観察力と、構図と、そしてテクニック。それらが一体となって一瞬を切り取る。それが優れた写真を生み出す条件だと私は思います。

プロフィール

1990年代の初めから写真と動画を融合させた複雑な作品の制作に従事し、現代風に解釈したポートレートを多数発表している。主に若者、特に思春期の少年少女を被写体とした大判のカラー写真と動画を撮影。そこには、文脈的なディテールがごくわずかに、ごく小さく表現されており、撮影者と被写体の交流や見る側と見られる側の関係性に意識が集められる。1959年、オランダのシッタート生まれ。1981~86年までアムステルダムのヘリット・リートフェルト・アカデミーで学ぶ。1999年にシティバンク・プライベート・バンク写真賞を、2017年にハッセルブラッド国際写真賞とニーダーザクセン財団のスペクトル国際写真賞を受賞。近年はキャリア中盤の回顧展も多く、2012年にはサンフランシスコ近代美術館とソロモン・R・グッゲンハイム美術館(ニューヨーク)で、2017年にはルイジアナ近代美術館(デンマーク・フムレベック)で、2018年にはデ・ポン美術館(オランダ・ティルブルフ)で開催。
2013年には世界中に展示した動画作品の中から初の大規模回顧展をフランクフルト近代美術館(MMK)で開催した。

椹木 野衣美術評論家

写真が(日本語で言う)「写真」からこれほどかけ離れた時代はないのではないか。今ではもう「写真が変えようのない真実を写している」などとは誰も信じていない。むしろ写真はいま、日ごとになにか得体のしれないものになりつつある。その得体のしれなさを、いったい誰が他に先んじて捉えるのか。いや、そういう言い方自体が(ありもしなかったかもしれない)主体性に重きを置く過去の表現の言い回しにすぎないのかもしれない。捉えるのではない。誰が写真そのものになることができるか。どこまでが撮る者で、どこまでが被写体かがわからないような淵に立つ世界を呼び寄せることができるだろう。そういう生々しい危機感のようなものを、いま、写真に対して抱いている。

プロフィール

1962年秩父市生まれ。美術批評家。91年に出した最初の評論集『シミュレーショニズム――ハウス・ミュージックと盗用芸術』(洋泉社)は「サンプリング/カットアップ/リミックス」を核に据え、美術、写真、音楽ほか後に続く多くのアーティスト、クリエイターに大きな影響を与えた。ほかに多くの議論を呼んだ「悪い場所」を唱えた『日本・現代・美術』(新潮社、1998年)、第25回吉田秀和賞を受賞した『後美術論』、平成29年度芸術選奨文部科学大臣賞(評論等部門)を受賞した『震美術論』(いずれも美術出版社)など多数。現在、多摩美術大学美術学部教授、芸術人類学研究所所員。

瀧本 幹也写真家

「写真新世紀」の審査員を務めることになり、とても嬉しく思っています。新世紀という名前の通りここから新しい写真表現が生まれてきました。これまでの受賞者の方々を拝見すると、その後の活躍が目覚ましく、まさに写真の登竜門と言える賞だと思います。昨今の写真を取り巻く流れとして、誰が新しいことを最初にやったかということや、誰かに似た表層的な写真が取り上げられたりしています。そうではなくて、もっと自身の写真表現と言えるもの、自身と向き合って滲み出てくる大きなうねりのある写真に期待したいです。新しく出会える作品に心から楽しみにしています。

プロフィール

1974年愛知県生まれ。94年より藤井保氏に師事。98年に写真家として独立し、瀧本幹也写真事務所を設立。広告写真をはじめ、グラフィック、エディトリアル、自身の作品制作活動、コマーシャルフィルム、映画など幅広い分野の撮影を手がける。主な作品集に『CROSSOVER』(18) 『LAND SPACE』(13) 『SIGHTSEEING』(07) 『BAUHAUS DESSAU ∴ MIKIYA TAKIMOTO』(05) などがある。18年にはCANON GALLERY Sにて個展 『FLAME / SURFACE』 を開催。
また12年からは映画の撮影にも取り組む。自身初となる『そして父になる』(是枝裕和監督作品)では第66回カンヌ国際映画祭コンペティション部門審査員賞を受賞。15年には『海街diary』で第39回日本アカデミー賞最優秀撮影賞を受賞。17年『三度目の殺人』第74回ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門。東京ADC賞、ニューヨーク ADC賞、カンヌライオンズ国際広告祭、ACC グランプリ、ニューヨーク CLIO AWARDSなど、国内外での受賞歴多数。

安村 崇写真家

かつての応募者として印象に残っているのは、期限内に作品を仕上げることの難しさです。ひとまずの完成を求められるこのような公募の場において、何をもって完成とするのかという、作品に対するけじめのようなものに不慣れだったのでしょう。応募作に対し心残りがあればもう少し時間をかけて取り組むことも選択肢の一つです。また、完成などないという考えもあるでしょう。しかし応募するということは、たとえ一旦であれ自身とその作品にとどめ刺すことだと思います。そのような思いでご自身の作品と向き合われた時、新たにみえてくるものもあるのではないでしょうか。まだ知らない写真の喜びに出会えることを楽しみにしています。

プロフィール

1972年滋賀県生まれ。95年日本大学芸術学部写真学科卒業。99年に「第8回写真新世紀」年間グランプリ受賞。2005年に写真集『日常らしさ/Domestic Scandals』を発表。同年、パルコミュージアムで「安村崇写真展」を開催。2006年にはマドリードでグループ展「Photo Espana」参加。2017年に写真集『1/1』を発表。

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