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2016年度(第39回公募)グランプリ選出公開審査会報告

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PRESENTATION

櫻胃 園子
「フィフティーン ミニッツ オブ フェイム」

タイトルの直訳は「15分の名声」。アンディ・ウォーホルの言葉として有名です。人は誰でも15分間だけ有名になれる、逆に言うと、どんなに有名なものでも15分もあれば忘れられてしまうという意味も含んでいます。私がこの言葉の意味をとらえようとしたとき、一番しっくりきた言葉が「短い命」でした。

この作品は私が17歳の頃、初めて自分用のカメラを買ったときから撮りだめたものです。今年の頭に今まで撮ったものを見返してみたら、被写体に共通点があることに気づきました。造花のように生きていないもの、水槽の魚のように閉じ込められているもの、何かに捕らわれているものが多く写っていました。

当時を振り返ると、私は2つの「恐怖」に捕らわれていました。
1つは「女」という記号化されたものに翻弄されていたこと。
2つ目は、平凡な日常が一瞬にして死の世界に変わってしまうという体験をしたこと。
それから、悲しい気分のときに悲しい映画を見て涙を流す、その行為によって心が整理され、悲しい気持ちが浄化していく、そういうカタルシス効果が、自分が写真を撮る行為にもあるのではないかと気づきました。

自分と似たようなものに自分を重ね合わせることで、言語化できなかった死の恐怖や心の不安を写真によって視覚化し、自分を救い出そうとしていたのではないかと思います。

「そこにあったものがすでにないものになっている」という写真の話を聞いたことがあります。自分もまた、生かそうとして、救出しようとしてシャッターを切ったはずが、写真にしたとたんにまた箱の中に戻してしまっているのではないか。そのように感じました。だからこそ、どんどん写真を撮って更新していかなければならないのだと思い、街に出て写真を撮り続けました。

短い命の景色、刹那的な行為の中で起こる一瞬の生命力の連鎖にどんどんシャッターを切って更新していくことで、より大きな、ものすごく強い、鮮やかな生命力が現れるのではないかと思っています。

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審査員コメント

アンナ・ダネマン氏

あなたの作品に出会えたことをとてもうれしく思います。最初に作品を見たとき、そのイメージのカラフルさに目を奪われました。そして何度も主体を見ていくと、人為性というか、撮られたものに新たな意味合いが生まれてくるサイクルを感じました。その意味で新しいテクニックをうまく反映した良い作品だと思いました。繰り返し見たくなる作品、というのが私の印象です。
今のプレゼンテーションでは不確実性とか捕らわれた対象への思いが語られていましたが、私はもっと好奇心や、作品を通じて人為性を表してみようという意図があったのかなと思ったので驚きました。

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オサム・ジェームス・中川氏

あなたの作品には、ある種のスピードを感じます。じっくり見つめるのではなく、パッと見てサッと撮って、はい次、というようなスピードをすごく感じる。それと、無邪気な視線、とても純粋な視線を感じられるところがいいと思いました。プレゼンテーションにあったような「何かにtrap(トラップ)されている」ということも少しは感じたけれど、それよりもスピード感や好奇心を僕は感じました。

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PRESENTATION

  • 櫻胃 園子

    「フィフティーン ミニッツ オブ フェイム」

  • 松井 祐生

    「hidden space, just like」

  • 高島 空太

    「2016」

  • 河井 菜摘

    「sampling time」

  • 金 サジ

    「物語」

  • 松浦 拓也

    「音響写真」

  • 金 玄錫

    「私は毎日、顔を洗っています」

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