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2017年度(第40回公募)グランプリ選出公開審査会報告

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PRESENTATION

喰田 佳南子
「ほんの小さな 優しいこと」

私は幼い頃から頭の中でシャッターを切るような感覚が日に何度もありました。普段、見過ごしてしまうようなものも、じっと見つめていると、その中に数多くの生命力が潜んでいることに気づきます。例えば道端に咲く名前もわからない小さな花や、なんでもない窓の隙間に映る光と影のコントラストに、ドキドキします。私にとってそんな瞬間を作品にしました。

タイトル「ほんの小さな 優しいこと」は、丁寧にものを見る視点と、それによって見えてくる数多くの生命力を意味します。それは身の回りにある、スーパーに陳列された果物だったり、道ですれ違った小さな犬の人間のような穏やかな表情だったりします。
私が思わずカメラを向けてしまう瞬間は、そんな「小さなこと」が太陽の光に照らされて色鮮やかに光り輝く瞬間です。私の写真は、丁寧にものを見つめる行為の連続です。

写真を撮っているうちに、その時感じた自分の気持ちが写真に写っていることに気づきました。
私の写真には、女性や植物のような、強く生命力が現れるものだけでなく、蛇口、ホース、並べられた椅子といった静物もあります。臆病な私と静かなモチーフをどこかで重ね合わせているのかもしれません。
生きていると、人にジェラシーを感じてしまう自分がいます。また、たくさんの人と過ごしていると気疲れするのに、一人でいると孤独を感じてしまう。そういったことの反動もあって、私はこれからも明るい写真を残していきたいと思っています。

誰でも気軽に写真を撮れる現代で、私は何のために撮るのか、何を目指しているのか考えることがあります。その一つの答えが、自分自身の役割を砂時計のように捉えていることです。砂時計は、誰にもとどめることのできない「時間」を視覚的に表すことができるからです。サラサラと流れる砂はとどめることのできない時間と似ていて、その一粒一粒が瞬間であり、それを一つ一つ丁寧に形として残していく、その行為が今の私にとって写真を撮る意味になっているように思います。

誰の体にも、幼い頃に感じた、初めて出会ったものへの発見や喜びが記憶として埋め込まれていると思っていて、それを呼び覚ましてくれるモチーフは、身の回りにたくさんあります。私にとって見つめることは喜びです。これからもずっと見続けられる幸せな写真を目指して努力したいと思います。

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審査員コメントと質疑応答

上田 義彦氏

喰田さんの写真からは、暖かい光を感じます。それに色がとってもきれいだと思います。単に写真の技術の話ではなくて、幸せになりたい、幸せなものを見たいという欲求を感じます。これからは、どんなものを撮っていきたいですか。

(喰田)一つは、なんでもない周りのものたちをずっと撮り続けていきたいと思います。もう一つは、幸せな瞬間を共有したいと思う、見てほしいと思うのは人なので、大切な人や多くの人の幸せな瞬間を写真に残していきたいと思っています。

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澤田 知子氏

展示を拝見した段階では、正直、きれいすぎて表面的というか、あまり感想が出てこない感じがありました。「明るさ」や「幸せ」を意識して撮られているということでしたが、展示を見て心があまり反応しなかったのは、「明るく」「幸せに」と意識されていることで、毒が全然ない感じがしたからです。でも、これから生きていく上ではいろいろなことがあるので、幸せなものや人ばかりを撮れなくなったときにどういう写真が出てくるのかを見てみたいと思いました。

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PRESENTATION

  • 喰田 佳南子

    「ほんの小さな 優しいこと」

  • 214

    「The collection of encounters」

  • 溝渕 亜依

    「ID」

  • 澤田 華

    「Gesture of Rally #1705」

  • トロン・アンステン & ベンヤミン・ブライトコプフ

    「17 toner hvitt」

  • 山口 梓沙

    「じいちゃんとわたし」

  • ジャンカルロ・シバヤマ

    「I traveled on an island」

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