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自動組立技術 自動組立技術

これまで実現できなかった領域を見据える自動組立

自動組立技術

かつて単純な組立のみを担っていた自動組立は、熟練技が必要な繊細で複雑な組立工程にまで発展しています。しかしそれは人を機械に置き換える技術ではありません。高精度の組立を誤差なく、素早く安定して行い、品質の向上にも貢献。多くの事業で自動組立と製品設計が連携し、未踏の領域へと踏みだしています。

2023/10/16

熟練の技術を要する難工程の自動化

魅力ある製品を世に送りだすためには、その基盤として極めて繊細で高精度な組立技術がなくてはなりません。キヤノンでは、カメラ用のレンズも、自動組立による生産を開始しています。精密で複雑な構造のなかにあるわずかな隙間への部品組付けや、電気基板に実装されているコネクターへの部品の挿入などの難工程と呼ばれるような生産工程の自動化にも成功しています。常時稼働し、安定的に高品質の製品を生産するシステムを現実のものとし、合理化を超えた、これまでの組立では到達できなかった領域へと踏みだしています。

わずかなすき間への部品組付け工程(細かい金属ピンを細い穴に差し込む工程)

わずかなすき間への部品組付け工程
(細かい金属ピンを細い穴に差し込む工程)

コネクターへの部品挿入工程

コネクターへの部品挿入工程

こうした難工程の自動化を実現できたのは、異なる部門が互いに技術を磨き、新しい価値を生みだすキヤノンのDNAによるものです。コア技術を内製した上で、製品の企画、設計から生産技術にいたるまで、一体となって問題解決を図ります。
たとえば自動組立に必要不可欠なロボットアームは、既存の製品を購入するのではなく自社で開発する道を選択してきました。精密で複雑な機器を製造するために、複数のロボットアームを同期させながら、複雑な組立を行うためのシミュレーションソフトウエアも自社開発。生産現場と製品開発を結び、多様な製品に柔軟に応用できるようにしています。

自動組立のコアとなるさまざまな技術を自社開発

難工程を、自動生産ロボットを用いて自動化するために、キヤノンでは積極的に新しいアイデアを取り入れ、独自の技術を発展させてきました。
たとえば、高精細な小型カメラを応用したビジュアルサーボは、ロボットアームに取りつけたカメラからの映像情報を分析することで、部品の精密な位置合わせを行う技術です。わずかなズレも、人間の目よりも高い解像度で確認しながら確実に工程をこなします。

ロボットの先端のカメラで位置合わせ

ビジュアルサーボで穴位置を検出し挿入可能な位置まで移動

精密な位置合わせを行うビジュアルサーボ

また、トルク制御アームは、力のかけ具合をコンピューターで制御する技術です。繊細な圧力をセンサーで読み取りながら、組立工程ごとに指定された力のかけ具合を完璧に再現し、素早く組み立てることを可能にします。

さらに、ロボットの動作をサイバー空間上で再現するシミュレーションソフトウエアも自社開発しています。
独自のシミュレーションソフトウエアには、社内のあらゆる事業からのノウハウの蓄積があるため、ロボットの動作を、わずか数十分ほどでつくりだすことができます。これにより、これまで現実での作業では何日もかけていたロボットの生産への適用準備期間を、大幅に短縮しています。さらに、ロボットに搭載された高精度なセンサーにより、シミュレーションで設定された繊細な動きを実現しています。

サイバーとフィジカルの連携によるものづくり

サイバーとフィジカルの連携によるものづくり

その総合力の高さを示す技術の1つが多能工自動機と呼ばれる自動生産ロボットです。
複数のロボットアームを同時に動かし、バラバラに積み上げられた部品から、さまざまな形状、性質の部品を正確につかみ取りながら、複雑な部品組立工程をこなしていきます。どれほど工程数が増えたとしても、繊細な作業であったとしても、素早く、確実に、安定して作業を続ける多能工自動機は、さまざまな自動生産技術を内製しているからこそ生まれた自動生産ロボットといえます。
さらに、与えるプロセスデータと部品トレイを切り替えれば、異なる製品を異なるプロセスで組み立てることができるため、多品種生産を効率的に、これまでにない高い精度でつくり上げることが可能です。

さまざまな形状、性質の部品を見分ける多能工ロボット

さまざまな形状、性質の部品を見分ける多能工ロボット

生産技術の基本があるからこそ最先端の製品を生みだしていく

もともとは、カートリッジなどの消耗品生産のために始まったキヤノンの自動化技術は迅速な供給や品質の安定といったお客さまの価値ももたらしてきました。現在、キヤノンの生産技術は、製品競争力を高める源泉としてだけでなく、さらに一歩、二歩先を進み、より優れた製品を生みだすための生産技術へと進化しています。
たとえば、これまで不可能だった組立精度のバラつきを、自動組立生産によって、極めて小さくすることができ、その分これまで諦めていた複雑な設計も盛り込めるようになります。
このような進化は、カートリッジなどの消耗品だけでなく、カメラや、複合機などのオフィス機器、さらには半導体製造装置や医療機器など、あらゆる事業領域において、製品開発部門と生産技術部門が協力し、より高い付加価値の製品を生みだしているのです。
今後も、生産技術によって製品の新しい価値までも創造し、お客さまに届けられるよう技術の開発に取り組み、新しい未来を開き続けます。

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