鳥のヒミツをときあかせ vol.2
鳥はなぜ飛(と)べるの?
もっと知りたい!羽根のはたらきと飛び方のヒミツ
鳥のように空を飛べたらいいな、と思ったことはない?
人類は、そんなあこがれを元に飛行機をつくった。飛べる虫もいるけれど、鳥にはかなわない。季節によって住むところを変えるために、1万キロメートル以上も渡りをする鳥、いっきに数千キロメートルを飛び続ける鳥、ひなを育てる時以外はほとんど飛びながら暮らしている鳥もいるんだ。
チャレンジ1
鳥のつばさのヒミツを見てみよう
鳥のつばさには、飛ぶための羽根である「風切羽」がついています。風切羽をいきおいよくおろすことで、空を飛ぶ力を生み出しているのです。風切羽は、つばさを持ち上げるときには縦になって空気を逃がし、おろすときは横になって空気を押し返すしくみになっています。
Q. つばさを上げたりおろしたりすると、どうして前に進むの?
鳥のつばさには、前に進むための「初列風切」という羽根がついています。初列風切は「羽軸」の左と右ではばがちがい、はばの狭い方が前、広い方が後ろになるようについています。はばたいてつばさをおろすと、はばの広い方、つまり後ろに向かって風が生まれるので、前に進むことができるのです。
初列風切を見つけたら、友達や家族といっしょに実験してみましょう。ふたりで向かい合って、ひとりは自分の両方の手のひらを向かい合わせにします。もうひとりは初列風切を水平に持ち、うちわをあおぐように、相手の手のひらの間で真下にふりおろしてみましょう。相手は初列風切のはばの広い方から風を感じるはずです。大きな初列風切ほどわかりやすいですよ。(羽根をさわった後は石けんで手を洗おうね!)
Q. どうやって羽根をお手入れするの?
鳥は、天敵からにげたり、えものをつかまえたりするために、いつでも飛べるように準備しています。羽根についたダニやシラミバエなどを落とすためにも、お手入れは欠かせません。
よく見られるのは「水浴び」です。多くの鳥は、水たまりのような浅い水辺で、ごく短い時間だけバシャバシャと水浴びします。(すぐにお風呂から出てしまうことを「カラスの行水」と言うように、短時間のことが多いようです。)ツバメは飛びながら、ヒヨドリやカワセミは水面に飛びこむように水を浴びます。水浴びをしている鳥を見つけたら、水から出た後にブルブルッと水をふるいおとし、くちばしで「羽繕い」するところまで観察してみましょう。
ヒバリやニワトリなどは、水浴びではなく「すな浴び」をします。つばさや尾羽を広げる「日光浴」や、熱い地面などにへばりつく「熱浴び」をする鳥もいます。カラスなどでは、アリをくわえてつばさにこすりつける「アリ浴び」や、飛びながらえんとつのけむりを浴びる「けむり浴び」も観察されています。スズメは水浴びの後にすな浴びをすることも多いようです。
Q. 飛んでいるときのブレーキや方向転換(てんかん)はどうするの?
空中でブレーキをかけるときや方向を変えるときには、尾羽を使います。尾羽はだいたい12枚あって、次列風切に似た形をしていることが多いようです。ちがいは、羽軸がまっすぐな羽根が多いこと。風切羽の羽軸は、進む方向・浮かぶ方向に、少しだけカーブしています。
チャレンジ3
鳥の体のヒミツもみてみよう
もしみんなが空を飛びたいと思って、風切羽を身につけたとしても、残念ながら飛ぶことはできません。鳥が飛べるヒミツは、羽根だけではなく、体にもあるからです。
まずは、筋肉。鳥がつばさをおろすために必要な胸の筋肉はとても発達しています。胸の筋肉だけで、鳥の体重の1/4以上になる鳥もいるほどです。(人間では1/100ほどと言われています。)
また、体は軽くできていて、スズメより小さいメジロでは10グラムほど(はがき数枚くらい)しかありません。鳥の骨の中は、トンネルみたいに空っぽになっていますし、腸は短く、食べたものはなるべく早く消化してフンをします。おしっこをためるぼうこうがないので、水分もフンといっしょにすぐに出ていきます。重いあごや歯はなく、軽いくちばしを使って食べます。つばさを広げると大きく見える鳥でも、見た目よりずっと軽いのです。
体全体のうちの胸の筋肉と骨の重さの割合(例)
Q. 鳥はどうして同じ向きでとまるの?
海辺のカモメや、公園のハトなどを見てみると、鳥は風が強いときほど風上(風がふいてくる方向)を向いてとまっていることがわかります。
理由は、鳥の羽根がすべて同じ方向に生えているから。鳥の羽根は「流線形」の体にそって、くちばしからしっぽに向かってきれいに並んでいます。もし風下(風がふいていく方向)を向いたら、羽根がすべて逆立って、ボサボサになってしまうかもしれませんね。
流線形は新幹線の車両などにも使われている形で、前からくる風を上手に受け流すことができます。ふつうは速く進むほど、風を強く感じて進みにくくなりますが、流線形だと、風をそれほど感じることなく、スムーズに進めるのです。
チャレンジ4
いろいろな飛び方をさがしてみよう
鳥たちは、つばさを上下に動かし、はばたくことで、進み、浮かび、飛んでいることがわかりましたね。飛んでいる鳥を見ると、はばたき方、飛び方にもいろいろあることに気づくはずです。
ハトは、はばたきながらまっすぐ飛びますが、ヒヨドリやセキレイのように、はばたいたり、休んだりをくり返しながら、波をえがくように飛ぶ鳥もいます。
チョウゲンボウがえものをねらうときなど、前にも上にも進まず、空中にとどまる飛び方をします。これは「ホバリング」とよばれます。ヘリコプターが空中でとまっているときの飛び方もホバリングといいますね。
少しはばたいたあと、つばさを広げたまま、まっすぐ飛んでいく「滑空」という飛び方もあります。身近な鳥では、ツバメやトビなどで観察できます。
また、つばさを広げた滑空の姿勢のまま、上に向かう空気の流れにのって上空へあがっていく飛び方は「はん翔」とよばれます。
まとめ
鳥が空を飛べるヒミツがわかったかな?
自由に空を飛ぶために、鳥の体にはいろいろな工夫がつまっているんだね。
身近な鳥をよく観察すると、飛び方のちがいに気づいたり、つばさをお手入れする様子を見たりすることができるよ。みんなもワークシートをもって鳥をさがしに行こう!
解説者紹介
日本野鳥の会 参与(元主席研究員)
安西 英明Hideaki Anzai
1956年東京都生まれ。
1981年日本野鳥の会が日本で初めてバードサンクチュアリに指定した「ウトナイ湖サンクチュアリ」(北海道)にチーフレンジャーとして赴任する。
現在は同会の参与として、野鳥や自然観察、環境教育などをテーマに講演、ツアー講師などで全国や世界各地を巡る。解説を担当した野鳥図鑑は45万部以上発行。