野鳥の撮りかた15
飛翔をピタリと捉えましょう
これまでの講座で見てきたように、「AIサーボAF」と「親指AF」を組み合わせることで、飛翔写真の成功率がグンと上がります。ここでは応用編として、野鳥の飛翔を撮影するコツについて説明していきます。
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マガン
伊豆沼周辺では、マガンは採餌場所を移動するために、よく群れで飛翔する。写真は、雪山を背景に飛翔する群れを狙った。ピントは「ゾーンAF+AIサーボAF」に任せ、群れの形、翼の位置などに集中して連写。一番良いカットを選んだ。
絞り : F5.6
シャッタースピード : 1/2500秒
ISO感度 : 400
露出補正 : 0
焦点距離 : 255mm
一眼レフカメラ(APS-Cサイズ)
飛翔する野鳥を撮るコツは「置きピン」
目の前に(近くに)飛んで来た野鳥にピントを合わせることは、とても難しいものです。特に超望遠レンズの場合、いくら性能の高いAFシステムでも不可能と言えるでしょう。しかし、一定の距離以上離れて飛翔する野鳥の姿を撮影することは、それほど難しくはありません。
コツは、「置きピン」で準備をしておくことです。事前に「置きピン」をしておくことにより、ファインダー内で鳥の姿を確認しやすくなり、その後、素早くピントを合わせることができます。
置きピンとは
野鳥が飛んでくる場所をおおよそ予測し、その近くの建物や木にあらかじめピントを合わせておく「置きピン」。置きピンした建物や木の近くに鳥がきたタイミングでファインダーを覗くと、鳥の姿がはっきりと、もしくは影のような感じに見えるはずです。そこであらためて被写体にピントを合わせ、自分の望む、ちょうどいい大きさ・構図になったところで連写しましょう。素敵な飛翔姿を捉えることができるはずです。
鳥の動きを予測して、近くの建物や木にピントを合わせる「置きピン」をしておきます
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鳥が飛んできたら、AFフレームに鳥をおさめて「AF-ONボタン」でピントを微調整し、シャッターを押します
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置きピンにおすすめのAF
この時、面でピントを合わせる「ゾーンAF」「ラージゾーンAF」「自動選択AF」のどれかに設定しておくと、面で被写体を捉えてくれるので失敗を減らせます。ただし背景が空でない場合、うまくピント合わせができない場合もあります。
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飛翔する野鳥が水平移動する場合
空中で止まっているように見えるノスリですが、ちゃんと飛行しています。横に水平移動している場合、まっすぐ飛んでいるので、ピント合わせが比較的簡単です。(ただし、何十カットも同じような写真を撮ってしまう可能性も。)
絞り : F8
シャッタースピード : 1/2500秒
ISO感度 : 800
露出補正:0
焦点距離 : 700mm
一眼レフカメラ(APS-Cサイズ)
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飛翔する野鳥が正面から近づいてくる場合
こちらに向かって来るオジロワシ。AFでピントが合わせやすいタイプの被写体です。三脚での撮影よりも、手持ちのほうがランダムに動く被写体を追いやすくなります。手持ちで撮影する場合は、手ブレが起きないようにできるだけ速いシャッタースピードに設定しておきましょう。1/2000秒以上をおすすめします。連写で追っていても、頭上を通過したあとの後姿(「ケツウチ」と呼称することもあります)になる前に、撮影を切り上げたほうが良いでしょう。
絞り : F11
シャッタースピード : 1/2000秒
ISO感度 : 800
露出補正:0
焦点距離 : 700mm
一眼レフカメラ(フルサイズ)
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戸塚先生コラム
チャレンジ!流し撮り
野鳥の飛翔写真は、「高速シャッター」で瞬間的な動きを写し止めることが一般的です。それとは反対に、背景が流れるように表現する撮影方法を「流し撮り」と言い、遅いシャッタースピードで撮影することで躍動感を表現することができます。
私は1/60秒を基本に、速い場合は1/125秒・1/250秒くらい、遅い場合は1/15秒・1/30秒くらいのシャッタースピードを使いわけています。コツは、被写体と並行してレンズを振ることです。鳥の飛翔時の動きとシャッタースピードの違いで印象が異なる写真になるため、とにかくたくさん撮影してみることをおすすめします。
流し撮りの場合は、Tv(シャッター優先AE)モードにしてシャッター速度を設定するとよいでしょう。露出は、適正値よりも1段ほどアンダーにすると色ノリが良くなります。ピントがバシッと合わなかったりもしますが、ピントやブレを気にするよりも躍動感を表現してみましょう。
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1/15秒でタンチョウを撮影。2羽が重なり翼の動きにシンクロ感が出たものを選んだ。流し撮りの場合はシャッタースピードを遅くするため絞り込む(F値を大きくする)ことが多く、被写界深度が深くなるので、運が良ければ目にピントが来た写真が撮れることもある。
絞り : F16
シャッタースピード : 1/15秒
ISO感度 : 100
露出補正:0
焦点距離 : 500mm
一眼レフカメラ(フルサイズ)
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被写界深度の浅い設定(絞りF9、シャッタースピード1/40秒)であったが、うまくマガンの1羽と動きがシンクロできたので、顔がはっきりとわかりながらも翼の躍動感も出すことができた。流し撮りの魅力は、背景の色の流れ具合はもちろんだが、唯一無二、二度と同じ写真が撮れないことだ。
絞り : F9
シャッタースピード : 1/40秒
ISO感度 : 200
露出補正:-1
焦点距離 : 1120mm相当
一眼レフカメラ(APS-Cサイズ)
実際に撮ってみました
河原で飛んでいるカモメを見つけました。近くに橋があったため、そこに置きピンをしてからファインダーを覗いたところ、簡単に鳥を確認することができました。あとは、カモメを追いながら「AF-ONボタン」でピントを微調整し、カモメが2羽並んだタイミングで撮影しました。
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撮影時の設定
AF動作:AIサーボAF
測距エリア:自動選択AF
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絞り : F10
シャッタースピード : 1/800秒
ISO感度 : 800
露出補正:+2
焦点距離 : 210mm
一眼レフカメラ(APS-Cサイズ)
戸塚先生のコメント
これはびっくりです。よくこんなシーンを撮ることができましたね! 置きピンしてあったことで、素早く1羽のカモメにピント合わせができたと思います。連写中、もう1羽が絡んだ瞬間を撮影できたとありますが、そんな素敵な瞬間が撮れると、もうやみつきになってしまうこと、まちがいなしですね。