鳥のヒミツをときあかせ vol.1

鳥の羽根をさがしてみよう

自由研究にもおすすめ!
いろいろな羽根のヒミツ

夏になると、鳥の羽根がたくさん落ちているって、知ってる?
小さい羽根や大きい羽根、暗い色の羽根やカラフルな羽根、
へんな羽根もあるかもしれない。
みんなもいろんな羽根を見つけてみてね!

チャレンジ1

夏休みに羽根をさがしてみよう

夏は、ほかの季節きせつよりもたくさんの羽根が落ちています。地面を気にして歩いていると、校庭や公園、庭や道ばたで見つけることができます。羽根の色や形は、鳥の種類しゅるいや生えている場所によってさまざまです。外に出かけていって、いろいろな色や形の羽根を集めてみましょう。集めた羽根はビニールのフィルムに入れておくと便利べんりですよ。

いろいろな色や形の羽根を見つけよう
ビニールのフィルムに入れて整理するのがおすすめ

羽根をさがす時の注意

車や自転車に気をつけよう

さがしているうちに車道に出たり、人や自転車にぶつかったりしないように気をつけましょう。かだんやお庭など、入ってはいけないところには入らないようにしましょう。

夏の暑さに注意しよう

夏に外で活動するときは、日射病にっしゃびょう熱中症ねっちゅうしょうにならないよう、ぼうしをかぶり、こまめに水を飲みましょう。

羽根をさわった後は手をあらおう

羽根がとくによごれているというわけではありませんが、手にばいきんやウイルスなどがつくかもしれないので野外から帰ったら石けんで手をあら習慣しゅうかんをつけましょう。また、ひろった羽根も、しまう前によくあらったり消毒しょうどくしておくと安心です。

死んだ鳥にはさわらない

死んだ鳥には、ばいきんやウイルスなどがついていることが多いので、絶対に素手でさわったり羽根をいたりしないようにしましょう。

Q. なんで夏に羽根が落ちているの?

こたえは、鳥の羽根が生えかわる時期だから。
春にメスとオスで夫婦ふうふになった鳥たちは、をつくり、夏まで子育てをします。いそがしい子育てが終わると、秋にはあたたかい場所に行くために長い道のりをんで移動いどうする鳥が多く、移動いどうしない鳥も、寒い冬をこさなくてはなりません。重労働じゅうろうどうの子育てが終わるころには羽根がいたんだりきずついたりするので、移動いどうきびしい冬を前に、新しい羽根に生えかわらせる必要ひつようがあるのです。

ボロボロにきずついた羽根

Q. 鳥の羽根は何枚(まい)あるの?

実は、よくわかっていません。スズメとおなじくらいの大きさのオオルリは3,114まい、ハトの仲間なかまのアオバトは4,715まいが数えられたことがあります。アオバトより大きなカラスでは10,000まいくらいあるかもしれないですね。たくさんの羽根が一度にぬけたらべなくなってしまうし、体温をたもつこともできなくなるので、1~2か月ほどかけて少しずつに生えかわるといわれています。町でも山でも水辺みずべでも、夏の間にたくさんの鳥が数千まいもの羽根を落とすんですね。

鳥の大きさと羽根のまい

チャレンジ2

羽根をひろったら観察してみよう

羽根を見つけたら、手にとってよく見てみましょう。まんなかあたりに「羽軸うじく」とよばれるじくがあれば「正羽せいう」です。正羽せいうにも色々ありますが、大きくて長く、じくがしっかりしているのは、空をぶために使われる「風切羽かざきりばね」や「尾羽おばね」。反対に、小さくて短く、羽軸うじくがやわらかいものは、「体羽たいう」であることが多いです。体羽たいうぶためには使いませんが、頭やむねはらなどにたくさん生えていて、体を守るはたらきをしています。一方、羽軸うじくがなく、細い糸がもやもや集まったように見える羽根もあります。これは上着や布団ふとん利用りようされる「ダウン」。ダウンは、鳥の体では正羽せいう内側うちがわに生えていて、体を温かくたもちます。日本語では「綿羽めんう」とよばれています。

羽軸うじくがある「正羽せいう」と羽軸うじくがない「綿羽めんう(ダウン)」
羽根の見分けかた

羽根の長さから、鳥の大きさを予想することもできます。風切羽かざきりばねの長さをはかってみて、10~30cmだとカラスくらい、7〜15cmならハトくらい、数cmならスズメくらい。羽軸うじくの中はトンネルみたいにからっぽで、持ってみると大きな羽根でも重さを感じないくらい軽いことがわかるでしょう。軽くても頑丈がんじょうにできていますが、先に行くほどしなやかです。

風切羽かざきりばねの大きさのちがい
羽軸うじくは先に行くほど細くてしなやか

Q. ほぐれた羽根がすぐに戻(もど)るのはなぜ?

細かいフックがたくさんあって、がっちり固定こていされるから。
正羽せいうは、羽軸うじくから左右に細い「羽枝うし」がたくさんのびています。羽枝うしからは、さらに細い「小羽枝しょううし」がたてにのびています。小羽枝しょううしにはフックがあって、向かいの小羽枝しょううしにひっかかって固定こていするので、全体では平らな面のように見えるのです。双眼鏡そうがんきょうさかさにのぞいたり、虫眼鏡むしめがねで見てみると、図のような様子が見られますよ。
羽根をほぐして面がバラバラになっても、鳥がくちばしでなぞると元にもどるのは、このフック同士どうしがもう一度ひっかかるから。ちなみに、一まいの羽根に羽枝うし小羽枝しょううしが何本あるのか、これまでにきちんと数えた人はいません。けれど、ハトの風切羽かざきりばねでフックを数えると数百万はあると言われています。

ほぐれた羽枝うしは整えるとすぐに元にもどる
小羽枝しょううしのフックを見てみよう

Q. 寒くても生きていけるの?

ふかふかの羽根で体温をたもっているから、少しくらい寒くてもだいじょうぶ。
動物には、恒温こうおん動物と変温へんおん動物がいます。変温へんおん動物は気温によって体温が上がったり下がったりしますが、鳥類ちょうるいとほ乳類にゅうるいは、体温をいつも同じくらいにたも恒温こうおん動物。鳥の体温は人間よりも高く、40度より高いのが普通ふつうです。羽根は水をはじき、体を守るだけでなく、体温をたもつはたらきもしているのです。体重が10gより軽い小鳥が、気温がマイナス35度になっても生きていられたという記録きろくもあるほどです。

恒温こうおん動物と変温へんおん動物
恒温こうおん動物と変温へんおん動物の特徴とくちょう

Q. 鳥の羽根は毛と同じ?

鳥には羽根がありますが、ヒトなどのほ乳類にゅうるいには毛があり、ヘビなどのは虫るいにはうろこがあります。実は羽根(羽毛)も、毛も、うろこも、同じケラチンというたんぱくしつからできていることがわかっています。また、どちらも生えかわるので、ほ乳類にゅうるいの毛や、は虫るいのうろこにあたるものが鳥の羽根だと考えられています。鳥も、ほ乳類にゅうるいも、大昔はうろこを持つ同じ祖先そせんから進化してきたといわれていますが、体に生えていたうろこを羽根に進化させたのが鳥、毛に進化させたのがほ乳類にゅうるい、といえるかもしれませんね。

動物の進化の図

まとめ

羽根がもっているすごいチカラを感じることができたかな?
じっくり観察するだけで、どんなはたらきをする羽根なのか、どんな鳥の羽根なのか、いろいろなことがわかってくるね。
いろんな羽根を集めて、羽根の特徴とくちょうや感じたことをまとめてみよう!

解説者紹介

日本野鳥の会 参与(元主席研究員)

安西 英明

1956年東京都生まれ。
1981年日本野鳥の会が日本で初めてバードサンクチュアリに指定した「ウトナイ湖サンクチュアリ」(北海道)にチーフレンジャーとして赴任する。
現在は同会の参与として、野鳥や自然観察、環境教育などをテーマに講演、ツアー講師などで全国や世界各地を巡る。解説を担当した野鳥図鑑は45万部以上発行。

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