PRESENTATION
内倉 真一郎
「Collection」
私は宮崎県延岡市で暮らしています。高千穂という昔神々が暮らしたといわれる町からほど近い写真館で働きながら作品制作をしています。
写真新世紀に応募した背景に、写真新世紀のキャッチコピー「写真で何ができるだろう? 写真でしかできないことは何だろう?」があります。これを「自分に何ができるだろう? 自分にしかできないことは何だろう?」と言い換えて、毎年夏の初めになると気持ちが盛り上がってきます。そんな気持ちで応募し続けて、今ここに立つことができています。
作品制作にあたり、大切にしていることが3つあります。
1つ目は、身近なところにこそ素晴らしいものがたくさん散らばっているということです。町に出たら、そこにはアートの素材がたくさん転がっています。それを見つけることが、僕にとって写真の目的の1つだと思っています。
2つ目は、そのような素材に巡り会えたとき、何も考えず即座に写真を撮ることです。この世の生き物の中でカメラは人間にしか扱えない、被写体を意識してシャッターを切ることができるのは人間だけであるということに感謝しています。それは僕がこの時代に人間として生まれて写真を撮っている理由でもあります。
3つ目は、1つのテーマにとらわれないことを大事にしています。これまでいろいろな写真を撮ってきました。最初は全裸のセルフポートレート、そして都会のストリートスナップ、そして実家の写真館で働くことになった10年前からはポートレートを撮りました。また、僕は岸田劉生の「麗子像」の絵が好きで、姪にメイクをして麗子像に似せて撮影したこともありました。また、鎖につながれた犬を撮って、彼らの生き生きとした姿を作品にしたこともありました。
僕はいつも、小学1年生の娘と、普段歩く道沿い、海、山、川で遊びます。写真館は土日が忙しいので、娘と遊べるのは定休日である水曜だけです。でも休みの日は写真も撮りたい。そこで今回の作品は、娘と近所の池などに探検に行き、そこで見つけるものを撮りました。例えばひび割れたボールを見つけると、娘も「これは誰かが遊んでいたの?」など、思うことがいろいろとあったようです。
コレクションシリーズでは、形あるものはすべて崩れる、命あるものには必ず死が訪れる、それらと出会ったときに感じたメッセージや輝きを写真によって残したいと思いました。いろいろなものたちの最期を僕が写真に残して披露してあげるから安心しなさい、そんな気持ちで作りました。だから僕にとってこの作品群は本当に大切なコレクションです。
娘は僕との旅を「冒険」だと言いました。僕は、写真に何ができるか、写真でしかできないことは何なのかを考えたときに、写真家とは冒険家だと思いました。発見することが大好きで、わくわくすることを原動力にして、僕は制作しています。
すべてが思い出深い作品ですが、展示スペースは限られているので、最も大きく羽ばたかせたかったフクロウをメインにしました。これは海沿いのスクラップ工場に捨てられていた剥製ですが、右の羽が少し上がっていて失敗作なので捨てられたようでした。でも、まだ捨てられたばかりで目にも潤いがありました。今回の作品はすべて太陽光下で撮っているのですが、フクロウを脚立の上から見たとき、とても神々しく光っていたのです。そこで、すべてを輝かせたいと思い展示プランを考えました。
審査員コメントと質疑応答
澤田 知子氏(選者)
何度も応募されていたということで、その粘り強さと、点数が多くそれだけの数を作る力があるということで、作家としての将来性を期待して選びました。
ちょっと厳しいことを言いますが、作品のプレゼンテーションなので、もう少し作品についてきちんと説明されたほうがいいと思いました。応募時のステートメントも、作品も、ポエムのような感じがします。ポエムにポエムを重ねられると、こちらとしては読み取りにくいし、意図されているところがわかりにくくなってしまいます。
今のお話でも、写真に対する愛情など気持ちの部分やアプローチの仕方は伝わってきますが、テーマとコンセプトをもっとはっきり伝えてもらえたらよかったと思います。とても情熱的な方だと思いますので、その視点を持ったまま客観的に見つめたり、客観的な説明をすることができるようになると、作家としての可能性が広がっていくのではないかと期待しています。
安村 崇氏
「コレクション」はなぜ写真でやらなければいけないのでしょうか? 現物をコレクションするのではいけませんか?
(内倉)現物は、太陽光下で撮った後、もといた場所に戻すことを大事にしています。表現方法としては絵という方法もありますが、できるだけ時間をかけずに、その姿をすぐに収めたいと思って写真にしました。
(安村)では、なぜ黒バックにしたのですか。
(内倉)黒は光を吸収します。白だと反射してしまいます。見せたいものに光を最大限集中させようと考えたら黒バックになりました。
(澤田)私はスタジオで撮っていると思っていました。そうではないことがわかって取り直しが不可能であることは理解できたのですが、ピントの甘さが気になりました。全体的にあまりシャープではない印象があったのですが。
(内倉)僕は、目の部分など、見せたいものにピントを合わせるようにしています。そのため被写体の一部分だけにピントが合っている場合もあります。