ニュースリリース

2008年3月21日
財団法人 京都国際文化交流財団
キヤノン株式会社

日本の貴重な文化財をデジタル技術で後世に継承する
「文化財未来継承プロジェクト」(つづりプロジェクト)の第1期5作品が完成
~海外へ流出した作品を含む初年度成果作品を、オリジナル作品を保有していた所蔵元へ寄贈~

財団法人 京都国際文化交流財団(以下 京都国際文化交流財団)ならびにキヤノン株式会社(以下 キヤノン)が3ヵ年計画で進めている「文化財未来継承プロジェクト」(愛称:つづりプロジェクト)の第1期の成果として、このほど5作品が完成しました。これらの作品は、オリジナルの文化財をかつて所有していた所蔵元へ寄贈されます。

「文化財未来継承プロジェクト」は、京都国際文化交流財団が主体となって推進する文化財保存活動の一環として発足したもので、キヤノンがその趣旨に賛同して昨年3月から開始したプロジェクトです。屏風や襖絵など、古くから日本に伝わる貴重な文化財をデジタル化して記録するとともに、そのデータをもとに、デジタル技術を応用して高精細な複製品を制作*します。これらの作品を活用することで、オリジナルの文化財はより良い環境のもとで劣化を防ぎながら保存することが可能となるため、貴重な文化財の未来への継承がより確実に行えるようになります。本プロジェクトは2010年2月末までの3年間で15作品以上の複製を予定しています。

  • *大型スキャナーまたは、キヤノンのデジタル一眼レフカメラでオリジナル作品の高精細なデジタル画像データを作成し、大判プリンターで高精細に原寸大で印刷します。さらに伝統工芸士や専門の職人が金箔や表装を施すことにより、作品が完成します。入力から出力まで、キヤノンの最先端のデジタル技術と伝統工芸を融合することにより、複製作品をオリジナルに最大限に近づけることが可能となりました。

このたび、東京国立博物館に所蔵されている国宝の「松林図屏風」(長谷川等伯筆)や、メトロポリタン美術館に所蔵されている「八橋図屏風」(尾形光琳筆)など、第1期5作品が完成し、オリジナルの文化財を所有していた社寺や博物館へ寄贈することになりました。この中には、海外に流出してしまったために、日本国内では目にすることが困難な「里帰り」作品も3点含まれています。

寄贈された社寺や博物館では、今後、作品を広く一般に公開することにより、日本の優れた文化や芸術に身近に接する機会を、世界中のできるだけ多くの方に提供する予定です。

文化財の保存活動に長年の経験と蓄積を持つ京都国際文化交流財団と、高精細で高画質な作品の制作を可能にするデジタル技術を持つキヤノンとが協力して、本プロジェクトを引き続き推進することにより、両者は、今後も芸術を通じた社会や文化の発展に貢献していきたいと考えています。

文化財未来継承プロジェクト(綴プロジェクト)作品
国宝「上杉本 洛中洛外図屏風」 六曲一双 桃山時代 狩野永徳筆
原本:米沢市上杉博物館所蔵

【 概 要 】

名称 文化財未来継承プロジェクト(つづりプロジェクト)
主催 財団法人 京都国際文化交流財団
協賛 キヤノン株式会社
期間 2007年3月1日 ~ 2010年2月28日まで 3年間
対象 国内外にある日本の文化財(屏風・襖絵など)
テーマ 1.「海外へ流出した作品の里帰り」
2.「日本を代表する水墨画作品」
3.「歴史をひもとく文化財」

【 初年度対象文化財 】

作品名 員数 作者名 時代 テーマ 現所蔵元 寄贈先(旧所蔵者)
松林図屏風しょうりんずびょうぶ 六曲一双 長谷川等伯はせがわとうはく 桃山時代 2 東京国立博物館 東京国立博物館
八橋図屏風やつはしずびょうぶ 六曲一双 尾形光琳おがたこうりん 江戸時代 1 メトロポリタン美術館 京都市
(尾形光琳の故郷)
老梅図襖ろうばいずふすま 襖絵四面 狩野山雪かのうさんせつ 江戸時代 1 メトロポリタン美術館 妙心寺天祥院
琴棋書画図襖きんきしょがずふすま 襖絵四面 狩野孝信かのうたかのぶ 桃山時代 1 シアトル美術館 花園大学
(京都市)
洛中洛外図屏風らくちゅうらくがいずびょうぶ
(上杉本)
六曲一双 狩野永徳かのうえいとく 桃山時代 3 米沢市上杉博物館 米沢市

【 2008年度以降対象文化財(予定) 】

2008年度以降の対象作品は、テーマ2.「日本を代表する水墨画作品」からは、 雪舟せっしゅう海北友松かいほうゆうしょう雪村せっそん曽我蕭白そがしょうはく、 など、日本を代表する水墨画絵師らの代表作品を選定し、制作を予定しています。また、テーマ3.「歴史をひもとく文化財」では、日本の歴史上、特に重要な作品を厳選して制作することを計画中です。