キヤノン株式会社(以下キヤノン)が開発した、チップサイズが202×205mmと世界最大面積*1の超高感度CMOS(相補性金属酸化膜半導体)センサーを、東京大学大学院理学系研究科附属天文学教育研究センター木曽観測所(以下木曽観測所)(長野県木曽郡)のシュミット望遠鏡に搭載することによって、視野角3.3°×3.3°の広視野で10等級*2相当の流星の動画撮像に成功しました。
木曽観測所の観測ドーム
(0.1~0.3ルクス程度の環境で、世界最大面積の超高感度CMOSセンサーで撮像)
昨年キヤノンが開発に成功した、チップサイズが202x205mmと世界最大面積の超高感度CMOSセンサーは、直径約300mm(12インチ)ウエハーから製造できる最大級*1のCMOSセンサーです。 キヤノンが製品化している最大のCMOSセンサー*3と比較すると約40倍の大きさで、わずか0.3ルクス*4の暗い環境でも動画撮像が可能です。 今年1月、この世界最大面積の超高感度CMOSセンサーを、木曽観測所にある口径105cmのシュミット望遠鏡の焦点面に搭載し、約60コマ/秒の動画を撮像しました。 その結果、視野角3.3°×3.3°の広い領域で、10等級相当の暗い流星を動画で撮像することに成功しました。
左:世界最大面積の超高感度CMOSセンサー
右:35mmフルサイズCMOSセンサー
従来の観測技術では、7等級より暗い流星の検出は困難であり、10等級相当の流星の観測事例は年間わずか10個程度でした。 しかし、世界最大面積の超高感度CMOSセンサーを、広視野観測を特徴とするシュミット望遠鏡と組み合わせて動画を撮像したことにより、1分間の撮像記録の中から、従来の年間観測個数を超える数の10等級相当の流星を検出することができました。
今後、この動画データの統計的な解析が進めば、流星が地球と生命の進化に及ぼしてきた影響について理解が進むことが期待できます。
また、上空を高速に移動する物体を高い効率で探査することが可能なため、流星以外にもスペースデブリ*5や太陽系内移動天体などの検出数が大幅に増大し、それらの位置と速度の測定精度も向上することが期待できます。
キヤノンは、今後も特徴のあるCMOSセンサーの開発を進め、静止画や動画における新しい映像表現の世界を開拓していきます。
なお、今回の観測結果については、2011年9月19日(月)から9月22日(木)に鹿児島大学で開催される、「日本天文学会2011年秋季年会」で発表されます。